2015 Fiscal Year Research-status Report
複素多様体の一意化、双曲性、およびネヴァンリンナ理論の研究
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24540069
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山ノ井 克俊 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40335295)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高次元値分布論 / 小林擬距離 / ブロッホ原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究実績の概要は以下のとおりである。アーベル多様体の部分多様体が一般型であるとき、その部分多様体の特殊集合とよばれる小さな除外集合の外では、その部分多様体の小林擬距離が真の距離を与える、という昨年度から引き続く研究に関する論文を完成して、専門雑誌への投稿を行った。この論文では、さらに強く、アーベル多様体の部分多様体が一般型であるとき、単位円板からその部分多様体への正則写像の任意の列が、その部分多様体の特殊集合にいくらでも近づいていくことがなければ、正規族をなしていることを証明した。また、その応用として、不正則数が次元より大きなケーラー多様体に関しては、小林擬距離が0になる、という同値関係による同値類は、必ず代数的に退化することを証明した。これらの結果は、1970年代から1980年代の初頭にかけて得られた、整正則曲線に関する定理を、円板上の正則曲線の族に精密化するものである。これは「無限で起こることは有限でも起こっているはずである」という、いわゆるブロッホ原理の実例を与える。ブロッホ原理は、一変数関数論においては、様々な研究が行われているものの、高次元値分布論においては、1920年代のブロッホ、カルタンの研究以外は、あまり研究が進展していない。その、一つの理由は、整正則曲線に比べて、単位円板上の正則写像の族の研究は、はるかに難しくなるからである。本研究課題は、まさしくブロッホ原理を、ビッグな線形表現をもつ射影多様体に関して研究することを目指しているので、その意味では平成27年度の研究成果は、本研究課題において重要な位置をしめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において考察の対象としているのは、ビッグな線形表現をもつ射影多様体に関するブロッホ原理である。ビッグな線形表現をもつ射影多様体を調べる上では、まずアルバネーゼ次元最大の射影多様体を調べることになるが、そのためにはアーベル多様体の部分多様体は重要なステップである。平成27年度は、アーベル多様体の部分多様体に関するブロッホ原理を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、アーベル多様体から豊富因子を除いた空間の小林双曲性の証明を目指す。その中で、その定量化としてアーベル多様体への単位円板からの第二主要定理を打ち切りレベル1で証明することができれば、少なくても可換でビッグな線形表現をもつ射影多様体に関するブロッホ原理を確立することが出来ると期待できる。
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Causes of Carryover |
平成27年度から、所属が東京工業大学から大阪大学に変更となった。新しい環境でのスタートアップとなったため、国内出張の回数が当初予定していたよりも若干少なくなり、それにともなって次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、平成27年度に生じた次年度使用額をあわせて、ノートパソコンを購入する予定である。
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Research Products
(3 results)