2012 Fiscal Year Research-status Report
3次元多様体の例外的手術を用いた特殊な4次元多様体の構成
Project/Area Number |
24540070
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
山田 裕一 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (30303019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 耕平 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (00175655)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 3次元多様体 / 4次元多様体 / デーン手術 / レンズ空間 / 枠付き絡み目 / Kirby計算 / divide knot / 特異点論 |
Research Abstract |
デーン手術によって双曲的な結び目からでも“例外的に”双曲的でない3次元多様体が生じる現象は「例外的手術」と呼ばれ、低次元多様体論の一分野である。筆者はこの現象を利用して特殊な4次元多様体を構成することを研究目標としている。採択初年度の反省として、準備不足などのため海外の研究集会に参加できなかったことが挙げられる。ただし第9回東アジア Knot School(1月東大数理)の現地世話人を務めたことで研究分野への国際的な貢献を果たせたとは感じている。国内での研究成果報告と情報収集には力を入れ、講演3件、論文の投稿1件、掲載1件(共著)、掲載内定1件(共著)となった。具体的には:1.レンズ空間手術の中で最も稀少な族の divide knot 表示を考察した。これについて論文を執筆・投稿し、秋の数学会(九州大)と東北結び目セミナーで講演した。2.丹下氏(筑波大)との共著論文が学術誌に掲載された。その続編の紹介も含めて研究集会「4次元トポロジー」(広島大学)で講演した。標準的な多様体へのレンズ空間の埋め込み、という視点からも展開が期待できる。3.門上氏(華東師範大学(中国))との共著論文(2成分のレンズ空間手術への Torsion 理論の適用)が掲載内定となった。投稿後の海外からの問合せなどを反映した最終版を議論している。 研究分担者の山口氏は、実射影空間から実(あるいは複素)射影空間への連続写像全体のなす写像空間を(ホモトピー型の意味で)多項式で表現される代数的写像のなす有限次元空間でどれくらい近似できるか(Atiyah=Jones予想)関連の研究とその応用を研究した。筆者は無限次元空間の扱いには疎かったがゲージ理論以降の低次元多様体論では必要性があり大いに励まされた。今後の発展に期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調と自己評価できる。ただし、申請時の計画と実績を比較すると、初年度(H24年度)とH25年度が交代になった感がある。初年度は広範囲な情報収集に、2年目は論文執筆に力点をおく計画であったが、初年度の海外出張は実現せず研究費の一部を繰り越した。一方、国内では多くの研究集会に参加して、講演3件、論文投稿を1件、掲載(共著)が1件、掲載内定(共著)1件となった。成果公表の観点からはじゅうぶんに活躍できた。海外の研究集会に参加できなかった理由は 1.準備不足 と 2.必要性が下がったこと(と 3.国際情勢)である。 1.筆者の所属大学はH22年度に改組があり、慣れない雑事に追われたため採択される自信がなかった。4月時点で、どんな研究集会がいつどこで開催予定かの情報を少ししか知らなかった。 2.門上晃久氏(華東師範大学(中国))との共著論文は意外に早く完成して年度内に掲載内定となった。また、2010年9月のフランスの研究集会での O.Couture 氏との議論をもとに筆者は「(曲線の)Couture変形」という概念を定義したが、この用語について mail による相談だけで本人に快く賛成していただけてすぐに投稿することができた。海外出張はできなかったが、2013年1月に東大数理で開催された東アジア Knot School の現地世話人を務めたことで研究分野への国際的な貢献は多少なり果たせたと感じている。この集会に中国勢が不参加であったことが残念である。 H25年度は、MaxPlank 研究所のテーマが低次元多様体だと知らせを受けて6月の研究集会に早速参加表明した。8月のミネソタでの集会にも参加できるかも知れない。新年度の研究活動を楽しみにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究がおおむね順調だったので、基本的に初年度の研究姿勢を継続する。初年度に海外の研究集会に参加できなかったことを反省し、今年度は早めに準備して MaxPlank 研究所で開催される6月の研究集会に参加表明した。8月のミネソタでの集会にも参加できるかも知れない。 筆者の所属大学はH22年度に改組があり、改組後も慣れない雑事が続いた。その間にも辛うじて研究活動を継続できたのは共著者の応援と激励があったからである。実際、筆者は単著より共著論文の執筆を優先するよう努力してきた。現在は改組から3年を経て学内の雰囲気も落ち着き始め、研究に集中しやすい環境が整って来たと考えている。今後は、限られた時間での共著論文執筆の経験も活かしながらも、独自のアイデア・視点を大切にして単著論文を執筆したいと考えている。テーマとしては、例外的手術を生じる結び目の divide knot 表示とその応用を研究したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
例外的手術を利用して特殊な4次元多様体を構成する研究を継続する。初年度に達成できなかった情報収集に力点を置きたい。既に MaxPlank 研究所(ドイツ)で開催される6月の研究集会に参加登録した。8月のミネソタでの集会にも参加を検討中である。国内の集会では、毎年恒例の集会 (a) ILDT(京大数理研)(b) 4次元多様体のトポロジー、(c) 特異点論の集会 などに参加したい。海外出張の都合で、いくつかの恒例の国内集会(夏のトポロジーシンポジウム(阪市大)など)への参加が難しくなるかも知れないが、なるべく調整したい。 研究内容としては、丹下氏(筑波大)との共著論文の続編にあたる研究、つまり同じレンズ空間を生じる異なる結び目の組から4次元多様体を構成する研究を継続する。出版済の共著論文では、トーラス結び目に対象を限って研究の基礎を広くまとめたが、この研究では双曲結び目に対象を広げた場合が核心である。標準的な多様体へのレンズ空間の埋め込み族の構成という視点からも展開が期待でき、笹平氏(名古屋大)との研究を再開する可能性もある。 研究設備・図書について:昨年度から延期されたプリンタの購入を検討する。申請者の研究では幾何学的アイデアが多く登場する。その図を正確に美しく描くことは、成果発表において読者や聴衆の理解を多いに助ける。また、特殊な目的のための専門的なプログラムを理想的な環境で利用するために、現在使用中のもの(Mac)と機種の異なる(Windowsの)計算機の購入を考えている。参考になる図書(主に幾何学)は常に早めに取り寄せて参考にしたい。
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Research Products
(6 results)