2013 Fiscal Year Research-status Report
3次元多様体の例外的手術を用いた特殊な4次元多様体の構成
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24540070
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
山田 裕一 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (30303019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 耕平 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (00175655)
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Keywords | 3次元多様体 / 4次元多様体 / デーン手術 / レンズ空間 / 枠付き絡み目 / Kirby計算 / divide knot / 特異点論 |
Research Abstract |
デーン手術によって双曲的な結び目からでも“例外的に”双曲的でない3次元多様体が生じる現象は「例外的手術」と呼ばれ、低次元多様体論の一分野である。筆者はこの現象を利用して特殊な4次元多様体を構成することを研究目標としている。採択2年度目の大きな反省点は、公式な口頭発表ができなかったことである。ただし、共同研究を進めている丹下基生氏(筑波大学)が中心になって立ち上げた「ハンドルセミナー」にほぼ毎回参加して、非公式な解説講演を3回行った。海外の研究集会に参加して貴重な情報交換をすることもできた。年度内の論文掲載は1件(共著)だった。 以下、具体的に研究活動実績を述べる:1.門上氏(華東師範大学(中国))との共著論文(S1×S2からのレンズ空間手術にTorsion理論を適用)が学術誌に掲載された。年度内に2回、最終的な見直しの機会が与えられた。2.国際研究集会"Geometry and topology of smooth 4-manifolds"(ドイツ Max Planck Institute)に参加して貴重な情報交換を行った。J.Greene氏との意思疎通は特に刺激的だった。3.12月には丹下氏(筑波大)との共著論文が掲載誌の Top20 アクセスに挙った。その続編にあたる研究を少しずつ続けている。 研究分担者の山口氏は、X が compact toric smooth toric variety のときに無限次元の写像空間 Map(RPm,X) を代数的写像のなす有限次元空間Alg(RPm,X)でどの程度までホモトピー型が近似できるかを A.Kozlowski氏(ワルシャワ大学)、大野氏(電通大)と共同研究で行った。特に、この場合にAtiyah-Jones型の結果が成立することを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調と自己評価できる。年度内の論文掲載が1件(共著)あった。ただし、初年度に比べて2年度目に成果発表の観点で遅れがあったことは否めない。理由は把握しており、その事由は既に終了しているので問題はない。 6月早々に海外出張が実現した。ドイツ Max Planck Institute で開催された研究集会に参加して貴重な情報交換を行った。C.Manolescu の単体分割予想に関する講演を聞くことができた。個人的には、レンズ空間手術の分野で良い成果を発表している J.Greene氏との意思疎通が刺激的だった:彼の成果により、レンズ空間手術に残された課題は「同じレンズ空間を生じる結び目の組がどのくらい多いか」となる。筆者は丹下氏との共著論文で基本的なものどうしの組が5種類の族に限られることを証明した。現在は一方が基本的で他方が双曲的である組の族を調べている。複雑な図が多い研究なので、執筆にはまとまった時間が欲しいと考えている。H25年度には筆者の研究に関わる研究者の来日も多く、良い意思疎通ができた:K.Baker 氏と「divide knot の中でも非ピンポン型と呼んでいる knot が(予想に反して)L空間ではない例外的手術を持つ」ことを確かめることができた。年度末には divide knot の創始者である A'Campo氏が来日し、divide knot に沿うデーン手術とその周辺課題について報告することもできた。 H26年度の夏には韓国で国際数学者会議が開催される。本集会か、あるいは(専門性の高い)サテライト集会に参加予定である。上述の論文執筆を進めたいが、他にも進めたい研究課題がたくさんあるのでバランスをとって活動したい。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度(H24)の研究はおおむね順調であったことに比べて、2年度目は成果発表の観点で遅れがあったことは否めないが、その理由は把握できている:(1) 秋に自分で日程を決められない予定があり、出張計画が立てられず各種の打合せができなかった。(2) 4月に同僚1名が異動したため人事を含んだ苦手な雑用が増えた。(3) 筆者の所属大学はH22年度に改組があり、H25年度に全学年が新課程となったことで事務体制(会計やネットワーク)が更新され、それに伴う雑用が多かった。これらの事情はいずれも年度内に終了しており新年度には残らない。そこで研究活動は基本的に申請時の通りとして変更の必要はないと考えている。もちろん研究テーマに変更はない:例外的手術を生じる結び目の divide knot 表示とその4次元多様体論への応用を研究する。 本年度(H26)夏には韓国で国際数学者会議が開催される。本集会かサテライト集会に参加し、できれば丹下氏との共同研究を一段落して講演に応募したい。長年「日韓 Knot School」および「東アジア Knot School」に参加し、世話人を務めたこともある貢献が今回も活かされることを期待している。 研究の推進策として労力配分のバランスに気をつけることを心がけたい。(a) 研究を先に進めるか論文執筆か、(b) 執筆の優先は単著か共著か、(c) 研究室で集中するかセミナーや出張などで情報収集するか、(d) 研究分野の仲間や若手・後輩への貢献をどの程度にするのか等々、取捨選択を迫られる場面が多くなっている。所属大学の改組以来、大学運営の任務などが増えており、そのようなバランス感覚が特に必要になったと考えている。
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Research Products
(6 results)