2014 Fiscal Year Research-status Report
3次元多様体の例外的手術を用いた特殊な4次元多様体の構成
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24540070
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
山田 裕一 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (30303019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 耕平 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (00175655)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 3次元多様体 / 4次元多様体 / デーン手術 / レンズ空間 / 枠付き絡み目 / Kirby計算 / divide knot / 特異点論 |
Outline of Annual Research Achievements |
デーン手術によって双曲的な結び目から“例外的に”双曲的でない3次元多様体が生じる現象は「例外的手術」と呼ばれ、低次元多様体論の1つの課題である。筆者はこの現象を用いて特殊な4次元多様体を構成したり分析したりすることを研究目標としている。採択3年目の当該年度は、講演活動の観点からは充分活躍できた。論文も完成目前である。研究内容としては、異なる族のレンズ空間手術で同じレンズ空間を生じる組についての丹下基生氏(筑波大学)との共同研究と、11月のKen.Baker氏の来日をきっかけにMazur linkとその拡張族に沿うレンズ空間手術の族を考察したこと、の2つが挙げられる。以下具体的に述べる:1.丹下氏との共同研究の成果を、海外(釜山)と国内の研究集会「4次元のトポロジー」(大阪市大)で講演した。2.Mazur linkとAkbulut-Yasui linkに沿うレンズ空間手術について、研究集会「多様体のトポロジーの展望」(東大)と「微分トポロジー15」(京大)で講演した。後者ではその手術に対応するAlexander Polynomialの合同式の確認についても触れた。3.丹下氏と安部氏が運営している「ハンドルセミナー」(東工大)にほぼ毎回参加し、講演を3回行った。 研究分担者の山口氏は、実代数的多様体M,Nに対して、多項式で表現されるMからNへの代数的写像(正則写像)のなす空間 Alg(M,N)が、対応する連続写像全体のなす無限次元空間Map(M,N)をどの程度の次元までそのホモトピー型を近似するかの問題(Atiyah-Jones-Segal 型予想)を研究した。特に、Mがm次元実射影空間 (m>1)でNが非特異コンパクトトーリック多様体の場合に、この近似次元を具体的に評価することに成功した。今後の関連研究に期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調と自己評価できる。特に、H26年度内に海外を含む4回の研究成果の講演を行なったことに満足している。ただし、執筆中の論文が未完成であることは反省している。そうなってしまった理由はわかっており、その事由は既に終了しているので今年度には期待できる。また、H26年度中にプリンタが数ヶ月間不調になったほか、海外出張前日の講演用PCが故障したことは痛恨で、計算機環境の整備不足を深く反省した。これについては情報収集などが必要になるかも知れない。 海外出張は国際数学者会議のサテライト集会(釜山)で、講演内容は丹下氏(筑波大)との共同研究:異なる族のレンズ空間手術で同じレンズ空間を生じる組に関する研究である。招待講演者でもあり司会を務めていただいた知り合いの米国人教授から受けた質問「興味の焦点はどちら?レンズ空間の埋込みかそれともCP2の連結和の構造?」は、この研究から予見できる2つの可能性を伝えることができたことを表しているように思われる。質問された2つの選択はどちらも可能である。単独の研究にも新しい発見があった:2成分の絡み目Mazur linkとその拡張であるAkubulut-Yasui linkからレンズ空間が生じる現象である。この話題は既に国内で2回講演しており、発見であるだけに停めないで自分で研究を先に進めたい。当面は多項式不変量による分析を試みたいが、いろいろな視点から考察するに価する興味深い対象と考えている。 H27年度は予算の額を他の年より少なくしてあるので出張等は少なめにする。本研究計画の最終年度であるため、先に進めたい研究課題もあるが、論文執筆を優先したい。この体制によって、ほぼ計画当初の期待に沿った研究と成果発表を達成できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究はおおむね順調、2年目は成果発表の観点で遅れが少々あったことに対し、3年目である当該年度は成果発表の点では充分に活躍できた。論文執筆が完成に至っていないことのみ残念である。その理由は把握できている:(1)初経験の仕事(採用人事など)で想像した以上に時間を取られた。(2)新しい研究成果に本質的に幾何でアイデアの説明を必要とするものがあり、講演資料の作図などに時間がかかった。所属大学で研究以外の慣れない任務は増えるかもしれないが、少なくとも上記の事情の影響はなくなるかあるいは薄まるものと考えられ、研究活動は基本的に申請時の通り変更の必要がないと考えている。 昨年度は海外1回を含む4回の講演を行った。それには新しい発見の報告も含まれており、手応えが比較的良い。そこで、以前から執筆中の論文だけでなく新しい成果もなるべく早く論文にまとめたいと考えている。 今年度は最終年度のため論文執筆を少し優先するが、昨年度の方針を継続しつつ、方針の細部においては以下に挙げる2つの観点で活動のバランスに気をつけながら研究を推進したい・執筆の優先は単著か共著か、・研究分野の仲間や後輩への貢献をどの程度にするのか。最近は大学教員としての仕事も増えてそのようなバランス感覚が特に必要になったと考えている。 研究テーマ自体には変更はない:例外的手術を生じる結び目のdivide knot表示とその4次元多様体論への応用を研究する。可能な範囲で、divide linkとは限らない2成分絡み目の例外的手術を考察し4次元多様体論への応用を考えたい。
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Causes of Carryover |
例年3月に開催されていた恒例の研究集会(名城大)が、当該年度には主催者の都合で翌年度4月に延期された。そのことを知るのが遅かったことが大きな理由の1つである。H26年度の年度末3月25日からの3日間に共同研究者と京都大学で研究集会を企画し開催したことの影響もある。結果的にはこの集会のための本科研費の支出は自分自身の旅費のみであるが、この結論に至るにまでには紆余曲折があった。年内は極力控えめに活動し、年明けから申請期限までに残額を正確に計算しながら自分自身以外の参加者の旅費の手続きを一気に進めた。学外の研究者への旅費の手配は筆者にとって初めての経験であった。残額に気がついたとき、年度内に慌てて使途を考えるより翌年度に繰り越したほうが有効に使えると確信するに至った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
秋に講演を依頼されている研究集会の企画が1つあるのでその旅費にあてることとしたい。恒例の研究集会ではない単発の集会で、近隣分野の研究集会なので貴重な情報交換が見込めるものと期待できる。3年半前の本研究の計画時点では、最終年度には論文執筆に力を入れて、恒例の研究集会に幾つか参加しながらその先の計画を立てたいと考えて、予算を少なめ(他の年のおよそ8割)に計画してあった。前年度末から4月に延期にされた恒例の研究集会(名城大)への参加も考えてはいるが、日程の都合上、参加できるとは限らない。講演を依頼された集会のほうが重要であると考えている。
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Remarks |
2015年1月にサイトを移転
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Research Products
(6 results)