2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540072
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
加須栄 篤 金沢大学, 数物科学系, 教授 (40152657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 多恵 石川工業高等専門学校, 一般教育科, 講師 (40569365)
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Keywords | 無限ネットワーク / 有効抵抗 / 容量 / 倉持コンパクト化 |
Research Abstract |
双曲空間を近似するネット(無限グラフ)において、幾何的無限境界に着目し、その次数 p の有効抵抗とグラフ距離の関係する評価式を示した。これを用いて、双曲空間に埋め込み実現できる有限グラフの等周定数やラプラシアンのすべての固有値の上からの評価を与えた。これによって双曲空間に埋め込み実現可能な有限グラフにおいては どの次数においてもスペクトルギャップが生じないことを明らかにした。これはネットの幾何と次数p有効抵抗評価の有効性を示す初めての結果である。 無限グラフにおいて、各辺に抵抗関数を与えると、抵抗ネットワークが得られる。通常、抵抗が線形に作用する線形ネットワーク、すなわち抵抗関数が1次関数のネットワーク(オームの法則に従うネットワーク)を考える。したがってこの場合次数2の有効抵抗を調べることが重要である。しかし(多項式)次数(p-1)の抵抗関数の場合はp-ネットワークと呼ばれ、その研究は近年重要性をより増している。その証のひとつとして、前段で述べた研究成果が含まれる。本研究では、より一般の抵抗関数を備えたネットワーク、モュラー列空間を枠組みとするネットワーク、について初めて体系的な研究を行った。このネットワークが提案されたのは1990年代はじめであるが、初期の研究のまま進められなった。本研究では、抵抗関数の凸性に限定して着目することによって、抵抗関数の一般性からくる困難を克服し、ポテンシャル論展開に成功した。実際p-ネットワークでのポテンシャル論をすべて含む形で纏めることができた。このネットワークは次数が辺毎に変化する多項式的抵抗関数も例として含み、そのコンパクト化が重要な課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
線形ネットワークの倉持境界理論は昨年度の研究により大きく進展したと考える。しかし非コンパクトリーマン多様体の倉持境界理論への貢献はできていない。克服すべき点の明確化が不十分であると思われる。ネットワーク(離散空間)とは異なり、関数空間が非常に大きくなることが主な困難さの理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
ネットワークのコンパクト化について、上記研究実績に述べたように双曲空間の幾何的コンパクト化が重要である。しかしたとえばツリーの場合、この幾何的コンパクト化と倉持コンパクト化は実はいつでも位相的には一致している。したがって倉持境界の研究はこの幾何境界の研究と重なり合う。位相空間としては、カントール集合である。カントール集合上の幾何解析および非線形ポテンシャル論は、長く研究され、特に最近年にも重要な研究成果が現れている。この研究成果に注目した研究を行うことが重要であると考える。非線形ネットワークにおいてヘルムホルツ分解を表現すると考えられる倉持境界理論をより具体的内容を持って構築すること次年度の課題である。 非コンパクトリーマン多様体において、ヘルムホルツ分解を表現すると考えられる倉持境界理論の構築の目論みは、離散の場合の進展を待って挑戦する予定である。
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