2014 Fiscal Year Research-status Report
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24540072
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
加須栄 篤 金沢大学, 数物科学系, 教授 (40152657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 多恵 石川工業高等専門学校, 一般教育科, 講師 (40569365)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 無限ネットワーク / 有効抵抗 / 容量 / 倉持コンパクト化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ルート付有限グラフの列とその極限に現れる無限グラフの構造について研究である。ここで収束は測地距離に関する幾何的収束ではなく、有効抵抗に関する収束である。このとき、極限グラフには、有限グラフの有効抵抗の極限を有効抵抗とするエネルギー形式が一意的に定まる。この極限に現れるエネルギー形式は、一般には無限グラフの標準的なものとは限らず、収束の状況を表すと考えられる重要な研究対象である。本研究では、収束するグラフのスペクトルと、極限に現れるエネルギーが有限である調和関数のなす空間には関係があることを初めて明らかにした。具体的には、収束グラフ列のスペクトルにおいて、有限位数の退化が起こるとき、極限に現れるエネルギーが有限である調和関数のなす空間の次元は、この有限位数と無限グラフのエンドの数の小さいほうの数を超えないことを証明した。具体的例から、この評価は最適なものであることがわかる。この場合、極限グラフは従順グラフとはならない。逆に見れば、極限グラフの極限に現れるエネルギーが有限である調和関数のなす空間が無限次元であれば、収束グラフ列のスペクトルにおいては必ず無限位数の退化が起こることになる。一般に極限グラフが従順な場合には収束する有限グラフのスペクトルに関する収束の研究は多くある。しかし本研究のように従順ではない場合を扱う研究はないといっても過言ではない。エネルギー有限な調和関数の空間と結び付けたところに新しさのある結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績で述べた結果の背後には、無限グラフのエネルギー形式に関する倉持境界の理論がある。これは本研究の主テーマであり、現在研究が進行中のものである。 一方、非コンパクトリーマン多様体の倉持境界理論構築に関しては、離散の場合と比べて関数解析的により精密な議論構成が必要であるが、アイディア的には本質的に同じであることを確認できる状況にある。この場合、ユークリッド空間の中の有界領域も重要な研究対象であり、自然境界、マルチン境界との比較の問題が眼前に現れた段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
ネットワークの倉持境界理論の展開において、重要な例の構築、あるいは深く関わった現象を見つけることが急務である。たとえばフラクタル集合をマルチン境界に持つネットワークの構成の研究がある。倉持境界の理論の視点からも興味深いところである。どの様な理由でマルチン境界と倉持境界が同じであるといえるのか、あるいは、異なるといえるのか、研究を進める予定である。これはまた有限な領域の極限として倉持境界、あるいはマルチン境界を見ることにつながる。フラクタル集合の構成と分析を考えればわかるように、この視点は倉持理論の新しい研究の段階にあることを示唆する。
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