2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540074
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川村 友美 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (40348462)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 結び目と絡み目 / ラスムッセン不変量 / オジュバットとサボーの結び目不変量 / ベネカン型不等式 / プレッツェル結び目 / 絡み目のコボルディズム |
Research Abstract |
実3次球面内または実3次空間内の結び目や絡み目の不変量のうち,4次元トポロジーが深く関わるコンコルダンス不変量と呼ばれるものに注目し,結び目解消数やスライスオイラー数といった古典的な不変量と結び目フレアーホモロジー理論やコバノフホモロジー理論との関係について分析した. その過程でとくに,コバノフホモロジー理論で定義されたラスムッセン不変量,およびそれに類似した結び目不変量で結び目フレアーホモロジー理論で定義されたオジュバットとサボーの不変量について,あるプレッツェル結び目についての値を定めた.この計算例には,ジョーンズ多項式が一致するプレッツェル結び目の可算無限個のペアとして原と山本によって挙げられているものも含まれる.興味深いことに,このペアは本研究で求めた不変量は一致しなかった.なおラスムッセン不変量とジョーンズ多項式は,どちらもコバノフホモロジーの情報の一部を圧縮したものとして解釈できることが知られている. この不変量決定の研究では主に,研究代表者による先行研究でもある精密化されたベネカン型不等式を直接適用し,結び目について成立する上記不変量の鏡像歪対称性を利用する方法をとった.しかしそれだけでは決定できない例については不変量の結び目コボルディズムに関する性質を利用して検証した結果,精密化されたベネカン型不等式の等号を満たさないプレッツェル結び目の存在が明らかになった.この例外によって一般のプレッツェル結び目についての不変量評価の困難さが浮き彫りになり,次年度以降への新たな課題の一つとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プレッツェル結び目についてのラスムッセン不変量およびオジュバットとサボーの不変量の決定および評価は,これらの不変量についての精密化されたベネカン型不等式の誤差の幾何学的意味を分析の一つとして実施した.検証開始時に予想した性質の反例が得られたことで研究が想定外に高難度であることが明らかになり,まず導こうとしていたプレッツェル結び目についての不変量決定公式が得られず,反例を含む特殊な条件下に於いても明確な規則性を見出すには至らなかった.したがって24年度中に口頭発表やプレプリントで公表することは見合わせた. またこの作業に主軸をおいて研究を遂行したために,交付申請書作成時には24年度中に予定していた大枠の研究,すなわち,絡み目ホモロジー理論の全般,および特異点論,接触幾何,ゲージ理論などとの関連についての検証が滞ってしまった. 以上の点から,交付申請書に記載した目的の達成度については低いと判定せざるを得ない.しかし,具体的な不変量決定のサンプルがいくつか得られたことは,今後研究を継続する上で重要な手がかりとなるはずである.そういう意味では実りある研究が遂行できたといっても差支えないであろう.
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Strategy for Future Research Activity |
当面はプレッツェル結び目についてのコンコルダンス不変量についての検証を継続する.それと並行して,絡み目ホモロジー理論の全般,および特異点論,接触幾何,ゲージ理論などとの関連についての研究も予定通り継続して遂行する. 現時点での達成度が高くないことへの対策に関しては,結び目と絡み目の各不変量の新たな性質を導き出すための容易でないが解決すべき数学的な問題が発生していることが要因であると考えられるため,当面はとくに大幅な予定変更は行わない.ただし,24年度は予定より研究打ち合わせと資料収集がやや少なかったことも多少影響していると考えられるため,今後はより積極的に実施していく. すなわち今後も当初予定通り,単独研究として遂行し,研究資料収集および研究打ち合わせを精力的に実施し,それにより研究の妥当性を検証しながら本研究を継続する.得られた成果は途中経過も含めて口頭またはプレプリントなどにて発表し,国内外の多くの研究者による客観的な講評を請うことで,さらに発展させていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現時点までに得られたプレッツェル結び目についてのラスムッセン不変量およびオジュバットとサボーの不変量の決定について,24年度中の公表は見合わせたものの,途中経過の公表は重要である.よって可能な限り早期に,ここまでの成果について口頭発表や論文での公表を実施する.その過程で,関連する研究者たちの意見を伺うことでこの成果の研究での位置づけおよび今後の方針の確認をする.そのための旅費や研究資料収集のための経費として次年度持越し分の研究費を使用する計画である.これが生じた原因は成果公表を見合わせたことにあるからである. 25年度以降請求分は当初予定通り,関連研究資料収集およびその管理のための経費,研究打ち合わせおよび研究成果発表のための旅費として使用する.
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