2013 Fiscal Year Research-status Report
高分子のトポロジーへの応用を目指す結び目の局所変形の研究
Project/Area Number |
24540089
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
金信 泰造 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00152819)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河内 明夫 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (00112524)
田山 育男 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 数学研究所員 (00382036)
森内 博正 近畿大学, 医学部, 特任講師 (20453128)
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Keywords | 結び目 / DNA結び目 / バンド手術 / 整合的バンド距離 / H(2)移動 / ジョーンズ多項式 / 交差交換 / SH(3)移動 |
Research Abstract |
本研究の目的は,DNA結び目に作用する酵素の特徴付けを調べる分子生物学の研究への応用を目指しつつ,結び目,絡み目の局所変形の研究を進めることである.DNA分子は,複製,転写,組み換えという遺伝現象の核心をなす過程において,その位相(トポロジー)が変化するが,それはトポイソメラーゼとよばれる酵素の働きによるものである.DNA結び目の局所変形を引き起こすトポイソメラーゼの作用を解析することを念頭におきつつ,次の3種類の結び目,絡み目の局所変形について研究をおこなった.1.整合的バンド手術(coherent band surgery).2.結び目の非整合的バンド手術であるH(2)移動.3.交差交換. それぞれの局所変形により与えられた2つの結び目や絡み目は移り合うが,そのための局所変形の最小回数を,結び目,絡み目間の距離ととらえて,小さい交点数の結び目,絡み目間の距離を求めることが具体的な問題となる.これらの距離について表が発表されている. 2013年度は,前年度から継続していた以下の研究をまとめた.すなわち,与えられた2つの結び目や絡み目が上記の局所移動で移り合うためのジョーンズ多項式,Q多項式,HOMPLYPT多項式の特殊値を使った条件をいくつか与え,それらの方法が有効であることを具体例により示した.この方法を発展させて距離が3となることを示す新しい方法も発見した.これにより,7交点までの結び目の間の交差交換距離の表を改良した. さらに,村上,中西が与えた,2つの結び目が交差交換で移り合うための条件を利用することで,2つの結び目,絡み目が整合的,非整合的の両方についてバンド手術で移り合うための行列式の条件を得た.これは多項式不変量以外の条件である.これらの方法により7交点までの結び目の間のSH(3)距離(整合的バンド距離の2分の1にあたる)の表とH(2)距離の表を改良した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究の目的は,DNA結び目の局所変形を引き起こすトポイソメラーゼの作用を解析することを念頭におきつつ,次の3種類の結び目,絡み目の局所変形について研究をおこなうことである.1.整合的バンド手術(coherent band surgery).2.結び目の非整合的バンド手術であるH(2)移動.3.交差交換. 具体的には,7交点までの結び目,絡み目の間の整合的バンド距離の表を作成することであり,2013年度は結び目の間のSH(3)距離の表は完成したので,順調に研究を達成しているといえる. 実際,昨年度提出の実施状況報告書の今後の推進方策において,(ア)7交点までの結び目の間の整合的バンド距離の表の作成(イ)7交点までの結び目と2成分絡み目の間の整合的バンド距離の表の作成(ウ)Darcy-Sumnersの交差交換距離の表の改良,の3点をあげているが,(ア),(ウ)について研究実績の概要で述べたように着実に成果をあげている.また,(イ)については2013年度は未達成となったが,代わりに7交点までの結び目の間の非整合バンド手術であるH(2)ゴルディアン距離の表を改良した.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,(ア)7交点までの結び目,絡み目の間の整合的バンド距離の表を作成することを目標とする.2013年度は7交点までの結び目の間の整合的バンド距離の表,および,7交点までの結び目と2成分絡み目の間の整合的バンド距離の表の作成を目標に掲げていた.前者はSH(3)距離の表として完成させたが,後者は,未完成に終わった.今年度は,この部分と,さらに,絡み目同士の間の整合的バンド距離の表の作成を第一の目標としてあげた.実際には,向きを込めて絡み目を考えると数が多くなり作業量が数倍になる.距離の下からの評価として,当研究において発見した2種類の方法 (1) ジョーンズ多項式,HOMFLYPT多項式,Q多項式の特殊値を使う方法,および,(2)村上,中西の交差交換からの行列式の条件,を用いることにより精密な表が得られることが期待される.それとともに上から評価するためには,結び目,絡み目の図式を変形する作業が必要になってくる.しかしながら,多くの結び目や絡み目をあつかうためには,直感に頼るだけでなくアルゴリズム的に作業を行う必要があり,この面から図式の研究も押し進める必要がある. 次に,(イ)Darcy-Sumnersの交差交換距離の表(10交点までの2本橋結び目をすべて含む)で未確定のものについて,(1) 多項式不変量を利用する方法により改良を試みる.また,(2) 上記でもあげた中西の最近の研究成果である無限巡回被覆を使った結び目の距離の評価方法も適用する. 石原とBuckの表の考察からあらたな整合的バンド距離の評価方法を発見したように,整合的バンド距離, H(2)距離,交差交換距離を調べる結び目や絡み目の範囲を広げることで,あらたな評価方法の発見を期待して研究を押し進めていきたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
5月22日~24日『ILDT(Intelligence of Low Dimensional Topology)』(京都大学数理解析研究所)へ出席予定であったが,直前に足を骨折したために参加を取りやめた.また,計画していた秋季,冬期の研究集会『東北結び目セミナー』(仙台市),『4次元トポロジー』(広島大学),『結び目の数学VI』(日本大学)については,本務の都合により出席不可能となったために出張旅費が不要となった.また,年度末の研究集会「Topology mini workshop」については予定外で主催者からの援助を得ることができたので出張旅費が不要となった. 研究推進のために,研究代表者,研究分担者,研究協力者は,以下の開催予定の研究集会,および,数学会に出席し,研究発表を行なう予定である.(1)5月22日~24日『ILDT』(京都大学数理解析研究所).(2)7月21~25日『第6回KOOK-TAPU合同Seminar, 第8回院生ワークショップ』(韓国国立慶北大学).(3)7月26~29日『トポロジーシンポジウム』(東北大学).(4)8月22~26日『結び目理論サテライト国際会議』(韓国釜山大学).(5)10月17~19日『東北結び目セミナー』(秋田市).(6)11月21~23日『4次元トポロジー』(大阪市立大学).(7)12月下旬『結び目の数学VII』(東京女子大学).(8)1月下旬 『結び目に関する東アジアスクール』(中国上海).
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Research Products
(8 results)