Project/Area Number |
24540094
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
新國 亮 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (00401878)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 空間グラフ / 結び目内在 / 近傍同値 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 / アメリカ / 韓国 |
Research Abstract |
1. グラフのあるサイクル集合は, そのグラフの3次元球面への任意の埋め込みの像が必ずそのサイクル集合の元の像として非自明結び目を含むとき, (結び目に関して)非自明であるといい, 更にその任意の真部分集合が非自明でないなら極小非自明であるという. 例えば7頂点完全グラフの頂点数7のサイクル全ての集合(=Hamiltonサイクル全体)は極小非自明である(Conway-Gordon). 今回, 7頂点完全グラフの2次元トーラスへの埋め込みの像の双対グラフとして得られるHeawoodグラフについて, 頂点数14もしくは12のサイクル全体の集合は極小非自明であることを示した. 即ち, Heawoodグラフの3次元球面への埋め込みで, 特に頂点数14の非自明結び目をその像に含まないものが存在するが, この事実はこれまで知られていなかった. 2. 水澤 篤彦氏(早稲田大学)との共同研究により次を示した. いま, グラフの3次元球面への2つの埋め込みは, その正則近傍がアンビエント・イソトピックであるとき近傍同値であるといい, その分類は3次元球面内のハンドル体のアンビエント・イソトピー分類と同等である. 水澤氏により, 一般の2成分の空間グラフについて, その各成分の整係数1次元ホモロジー群の基から定まる絡み行列の単因子による「絡み数」が定義されたが, 今回, この「絡み数」が2成分空間グラフのホモトピー近傍同値における完全分類を与えることを示した. ここでホモトピー近傍同値とは, 近傍同値に加えて同一成分上の交差交換を許した同値関係であり, 特に有向絡み目の場合はMilnorによる絡み目ホモトピーと一致する. 2成分有向絡み目の絡み目ホモトピー類が通常の絡み数によって与えられることは良く知られており, 我々の結果は, その近傍同値の観点からの2成分空間グラフへの一般化である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3次元球面内のハンドル体のアンビエント・イソトピー分類と等価である, 空間グラフの近傍同値分類を, 主に代数的トポロジーに根ざした不変量により研究することが本研究の1つの目的であるが, 特に2成分空間グラフにおいて, 各成分の整係数1次元ホモロジー群から素朴に決まる代数的不変量によるある種のホモトピー分類定理を与えることができた. これは今後の近傍同値分類の研究において基本的な意味を持つと思われる. また, 今年度終盤より, グラフの2点配置空間のある種の同変コホモロジー類として定義される空間グラフのWu不変量と呼ばれる特性類的な不変量について, その無限巡回群への添加写像による被約化, 及びその空間グラフの各種対称性への応用研究に着手しつつあり, 研究は順調に進展している. 一方, グラフの内在性の研究に関し, 結び目内在グラフとして認識されつつもあまり深く追求されてこなかったHeawoodグラフが持つ諸性質を明らかにすることができた. また, その過程で, グラフの結び目内在性を, グラフのサイクル集合の(結び目に関する)非自明性という観点から捉え直すことにより, 研究の新たな方向性及び指針を与えつつある. 例えば8頂点以上の完全グラフについて, その極小非自明なサイクル集合の存在はこれまで指摘されてこなかったことであり, その具体例はまだ知られていない. この方向からの研究は, 今後の結び目内在性の研究において新たな意味を持つと思われる. 得られた成果は迅速に国内外における研究集会やセミナーで公表しており, 特に韓国及び米国における研究成果発表及び研究交流を, 当初の予定通りに実行することができた. 論文及び報告は, arXivなどインターネット上で随時アクセス可能である.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り, 空間グラフの代数的不変量の研究を推進する. 2成分空間グラフのホモトピー近傍同値分類の一般成分数への拡張を試みることは勿論, 当初の目的の1つである, 空間グラフの補空間の基本群が持つ情報を通した理解, 特に(ねじれ)Alexander不変量との関係についての研究を行なう. また, (被約化)Wu不変量による空間グラフの内在的非鏡像対称性への応用研究も進める. 空間グラフのWu不変量は, Conway-Gordonの定理の精密化の理論を通してグラフの結び目内在性とも深く関わっており, グラフの各種内在性に関わる特性類的不変量として, その性質を更に明らかにしていく必要がある. アメリカ及び韓国の研究者を始めとする, 海外の空間グラフ理論研究者たちとの共同研究及び研究交流を, 次年度以降も続けて行なう. 主に研究代表者が海外に渡航するほか, 場合によっては海外の研究者を日本に招聘する. 並行して, 2013年6月に米国・ロサンゼルスで開催される空間グラフ理論カンファレンスに参加するとともに, 最新の研究成果の発表を行なう. また, 同年8月に日本・東京において開催される第3回空間グラフ理論国際ワークショップ「International Workshop on Spatial Graphs 2013」では, 最新の研究成果の発表を行なうほか, 組織委員も務める. 国内外の研究者が集う上記2つの研究集会を柱に, 研究交流を深め, 当該の研究の推進に繋げる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外の空間グラフ理論研究者, 特にアメリカ及び韓国の研究者との共同研究実施のため, 研究代表者の海外出張, 及び海外研究者の受け入れに研究経費を使用する. また, 研究成果の公表や研究交流及び技術供与, 情報交換を目的とした, 国内外における研究集会及びセミナー等への研究代表者及び研究協力者の参加のため, その出張旅費に研究経費を使用する. 特に研究代表者の所属する東京女子大学トポロジーセミナーでは, 定期的に気鋭の研究者を招き, 最新の研究成果を中心とした講演をお願いしており, その招聘にも研究経費を使用する. また, 2013年8月に日本・東京で開催される第3回空間グラフ理論国際ワークショップ「International Workshop on Spatial Graphs 2013」において, 海外の研究者の参加にかかる旅費の補助を当該研究経費によって行なう. これに関しては, 当初の予定よりも補助費の負担が増すことが本年度中に見込まれたため, 本年度に配分された直接経費において240,000円あまりを未使用とし, 次年度の研究費と合わせて使用することとした. 更に, 当該研究の進捗状況に合わせた研究環境の整備(パーソナルコンピュータ環境整備, 書籍等購入, 消耗品等購入)にも研究経費を使用する.
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