2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小野 肇 東京理科大学, 理工学部, 講師 (70467033)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | チャウ安定性 / 偏極トーリック多様体 |
Research Abstract |
本研究の1つの目的は、ケーラー錐の幾何および佐々木多様体の幾何の観点に立った研究により、ケーラー幾何における主要問題の1つであるYau-Tian-Donaldson予想の解決を目指すことである。 平成24年度は次の結果を得た:Yau-Tian-Donaldson予想を扱う上で一つの大事な概念として、幾何学的不変式論の意味での安定性をあげることができる。Yau-Tian-Donaldson予想においてはK-安定性が最も重要な安定性概念であるが、それに関連して漸近的チャウ安定性も重要である。一般に、安定であるかどうかを判定することは難しい問題であるが、偏極トーリック多様体に関して、チャウ半安定であるかどうかを判定する条件を、対応する整Delzant多面体上の凸PL関数を用いて明確に表現した。これは、研究代表者の先行結果や二木、佐野両氏との共同研究の結果をより深化させたものである。 この結果、幾つかの応用も得た:①トーリック退化に関するテスト配位の概念を用いることなく、自然な形で偏極トーリック多様体のDoanldson-二木不変量を導出出来ることが分かる。②この結果を偏極トーリック曲面に適用することで、満渕、二木両氏による、漸近的チャウ半安定となるための障害は消えるが、漸近的チャウ不安定になる偏極トーリック曲面の例を構成した。③漸近的チャウ安定性はK-安定性を導くが一般に逆は成り立たない(このことは、佐野、四ツ谷両氏との共同研究の結果からわかる。)しかし、トーラス作用に関する不動点の個数が6以下の偏極トーリック曲面の場合、K-安定であることと漸近的チャウ安定であることは同値であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、本年度はコンパクト佐々木多様体における適切な安定性概念を定めるための前段階として、対応するHilbert級数の微分幾何的特徴付けについて研究し、基本的な性質を解明する予定であった。 その全てを解明するには至らなかったが、偏極トーリック多様体(佐々木多様体の観点から見ると、regularなトーリック佐々木多様体)という特別なケースにおいては、Hilbert級数が安定性概念とどのように関連するかを、組み合わせ論的に明確に捉える事ができ、また、興味深い例なども具体的に考察することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究をもとに、平成25年度以降は佐々木多様体に付随した「無理数次数付き」環と微分幾何的な量との関連について研究する。その考察をもとに、佐々木多様体に関する適切な安定性概念を提案し、標準的な佐々木計量の存在問題との関連について調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、当初予定より出張回数が少なく当該研究費が生じた。 次年度は、研究集会出席に使用する旅費に加え、共同研究者との研究打ち合わせを多く予定しており、その旅費として支出を予定している。
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Research Products
(3 results)