2014 Fiscal Year Research-status Report
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24540098
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小野 肇 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70467033)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トーリック多様体 / ラグランジュ部分多様体 / ハミルトン体積最小性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の1つの目的は、ケーラー錐の幾何および佐々木多様体の幾何の観点に立った研究により、ケーラー幾何における主要問題の1つであるYau-Tian-Donaldson予想の解決を目指すことである。
しかしながら、この予想はケーラー・アインシュタイン多様体の場合に、Tian, Chen-Donaldson-Sunらによって解決された。一般の偏極多様体の場合には未解決であり、その解決に向けて、多くの研究が進んでいるが、佐々木多様体の幾何の観点は、ケーラー・アインシュタインではない一般のケースでは、その独自性を発揮するには、現段階では、多少難点がある。
そのため、平成25年度からは、Yau-Tian-Donaldson予想の類似問題として、ケーラー・アインシュタイン多様体上の幾何、特にラグランジュ部分多様体のハミルトン極小性やハミルトン体積最小性と、ラグランジュ部分多様体の「幾何学的不変式論の意味での安定性」 との関係を定式化し、解決することを目的とした研究を行っている。平成26年度には次の結果を証明した(茨城大学の入江博氏との共同研究):複素射影空間の正則なトーラス軌道はハミルトン極小かつハミルトン安定な平坦ラグランジュトーラスであり、複素1時元の場合には、等周不等式により、それらは全てハミルトン体積最小である。そのため、高次元の場合にも、正則なトーラス軌道はハミルトン体積最小であると予想されていたが、複素次元が3以上の場合、ほとんど全ての正則なトーラス軌道はハミルトン体積最小ではない。また、一般の複素次元が3以上のトーリックケーラー多様体においても、ハミルトン体積最小ではない正則なトーラス軌道が常に存在する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、PaulによるK-安定性とK-balanced計量の存在の間の関係をもとに、PaulによるK-安定性の概念を佐々木多様体に拡張する計画であった。しかし、Yau-Tian-Donaldson予想の解決により、Fano多様体に関するK-安定性の概念は確定したと思われる。 そのため、ラグランジュ部分多様体のハミルトン体積最小性に関する問題に取り組み始め、今までハミルトン体積最小であると予想された例がそうではないことを証明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ケーラー・アインシュタイン多様体における、ラグランジュ部分多様体のハミルトン安定性やハミルトン体積最小性については未解決な問題が多い。また、それらに対して、Yau-Tian-Donaldson予想の類似が存在すると予想される。そこで、ケーラー・アインシュタイン計量の存在問題を調べる際に用いられるアイデアをもとに、ハミルトン体積最小なラグランジュ部分多様体の存在問題を考察する。それ以外にも、ハミルトン体積最小なラグランジュ部分多様体の具体例の発見に努める。
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Causes of Carryover |
今年度は、当初予定より出張回数が少なく当該研究費が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、研究集会出席に使用する旅費に加え、共同研究者との研究打ち合わせを予定しており、その旅費として支出を予定している。
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Research Products
(5 results)