2012 Fiscal Year Research-status Report
Coarse幾何学における埋蔵問題と関連するasymptotic次元の問題
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24540099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小山 晃 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40116158)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(ポーランド) / 国際情報交換(ポーランド) |
Research Abstract |
9月に早稲田大学へPiotr Nowak(the Institute of Mathematics, Polish Academy of Sciences)を招聘し、Property A や coarse embeddingsの話題を中心にcoarse geometryに関する11回連続講義を行った。この期間を利用し、矢ヶ崎達彦(京都工芸繊維大学)、松崎克彦(早稲田大学)らによる講義を受け、研究準備を進展することができた。また、3月には第3回早稲田幾何的トポロジー研究集会を開き、Property A の位相空間論的アプローチ、無限次元複体や一様ANRの幾何学的群論への応用を中心に議論を進めることができた。無限次元複体に関する総合的な講義は通年にわたり嶺幸太郎(東大研究員)に依頼して行った。長年のsmall scale geometryの研究を進め、S. Spiez, J. Krasinkiewicz (the Institute of Mathematics, Polish Academy of Sciences) との共同研究により、次の結果が得て,現在共同論文を準備している. Theorem. Let M be a closed 2-manifold in a product Y1 × Y2 of two curves. Then the following implications hold: (i) r(M) = 3 ⇒ both prj(M) are circles. Consequently, M = pr1(M) × pr2(M) is a torus. (ii) r(M) = 4 ⇒ both prj(M) are θ-curves. Consequently, M = T2♯T2, where r(M) is the rank of H1(M).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的の第一である「Novikov 予想の解決」とその採るべき手法に挙げたcoarse 埋蔵に関して、上記研究業績概要にあるように当初の計画通りPiotr Nowak氏による11回の連続講義を行うことができ、研究準備を進めることができた。特にproperty Aに関して、論文や著書だけでは知ることのできない発案者 (G. You) 愛弟子としての視点を知ることができ有意義であった。 proper距離空間のasymptotic次元とそのHigson coronaの次元との関連づけでは無限次元複体、一様ANR空間の考えからを利用したいが、これまでは「有限次元の場合や従来の理論と同様」と一言でくくられていた。しかし実際には必ずしも同様ではないことがわかってきた。そのためこれらを正しく理解することが必要となったが、嶺幸太郎(東大研究員)の講義により準備を進めることができた。 一方、私が長年続けているsmall scale geometry、特に曲面の2つのグラフの積空間への埋め込み問題について S. Spiez, J. Krasinkiewicz (the Institute of Mathematics, Polish Academy of Sciences) との共同研究を進めることができ、上述の通り現在共同論文を準備する段階まで到達することができた。 また若手を中心とするワークショップも第3回早稲田幾何的トポロジー研究集会として開くことができ、新たな視点も導入することができた。さらにシェイプ理論の応用としての幾何学的群論もあり得ると考え、渡邉正(山口大学名誉教授)、深石博夫(香川大学名誉教授)らとの共同研究を行った。これらを総合的に判断して、計画は「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度のワークショッフの成果に基づき, 2大問題(「(1) Novikov 予想」と「(2) Eilengerg-Ganeaの問題」)を解決するという目標のための共同研究を積極的に行う。特に次年度は島根大学で開催される国際集会に関連する分野の研究者が多く参加するので、彼らの最新の成果と知見及び今後の共同研究への足がかりを得るために早稲田大学でワークショップを行う。また次元論を基盤とする幾何学的群論を広くアピールするために私を含め優れた業績を持つ者による講演活動を支援する。本年度の準備から新たに取り入れるへき課題があるなと必要が生じた場合は、短期集中的なワークショッフを開く。現在の見通しでは、初年度の課題に加え以下のような課題に取り組む必要性を予想している。 (3) 病理的なコンパクト距離空間を理想境界にもつ CAT(0) 群の構成。 (4) 群のasymptotic タイプのコホモロジー次元と理想境界の位相次元との関わり。 である。これらの課題は「そのHigson coronaが有限次元である無限次元proper距離空間の存在」を示すためのステップと考えているが、さらに課題 (2) に結びつていくことが期待されている。病理的な空間は私が考えている反例作りではキーポイントになると考えているが、この分野では江田勝哉(連携研究者)との共同研究を推し進める。群の幾何学的構造の解明は保坂哲也、知念直嗣(連携研究者)との共同研究を主体に行う。 課題 (1) はsmall scale geometryの埋蔵問題とも深く関わるので、この研究も並行して行う。コンパクト距離空間についてはS. Spiez、J. Krasinkiewizとの共同研究を、一方、proper距離空間の埋蔵問題については多様体のend理論の造詣が深い矢ヶ崎達彦(連携研究者)との共同研究を主体に行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は島根大学で幾何学トポロジーに関連する大規模な国際集会 (International Conference on Topology and Geometry 2013) があり、私自身組織委員なので、今回の研究テーマに直結する研究者が多く来日する。この機会を捉え、早稲田大学で集中的にホットな話題を議論するワークショップを開催する。現在予定している参加者は、J. Dydak(アメリカ)、P. Nowak(ポーランド)、S. Spiez(ポーランド)、V. Matijevic(クロアチア)、E. Tymchatyn(カナダ)、V. Valov(カナダ)、M. A. Moron(スペイン)、J. M. R. Sanjurjo(スペイン)、S. Antonyan(メキシコ)、R. Jimenez(メキシコ)、A. Bykov(メキシコ)らである。また関連する話題を広く知ってもらうためにS. Antonyan(基調講演者)に国内旅費の一部支援を行う。 また次年度は上記の課題(3)、(4) を取り組む準備に当てたい。これらの課題は「そのHigson coronaが有限次元である無限次元proper距離空間の存在」を示すためのステップと考えているが、私の予想しているステップで構成できるならば、適切な病理的空間を選ぶことでその病理的空間の構造、次元論的性質が「Eilengerg-Ganeaの問題」の否定的解決に結びつくとの見通しの下で研究計画を進めている。病理的空間の位相的性質についてH. Fishser (アメリカ)による講義を予定している。 さらに本年度行った無限次元複体、一様ANR空間の基礎理論を発展させる研究を嶺幸太郎(東大研究員)とともに行う予定である。
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