Research Abstract |
Sp, SOをそれぞれ無限シンプレクティック群, 無限特殊直交群, ΩSp, Ω_0(SO)をそれぞれSp, SO上の基点付きループ空間(Ω_0は単位ループを含む連結成分)とする. また, MU(-)を複素コボルディズム理論, (L, F)を普遍形式群とする(Lはラザール環, Fは普遍形式群演算). 平成24年度までの研究では, リー群上のループ空間のホモロジーに関するClarke, Kono-Kozima等の研究に示唆を得て, シューアP, Q-関数のなすホップ代数のL係数への拡張版であるホップ代数とその双対を定義し, それらとΩSp, Ω_0(SO)のMU-(コ)ホモロジーのなすホップ代数との間の自然な同一視を与えた. また, シューアP, Q-関数のL係数への拡張版である「普遍シューアP, Q-関数」(および多重パラメーターを付けたもの)を構成し, さらに, コーシー型の再生核を利用して「双対普遍シューアP, Q-関数」も構成した. 平成25年度は, 上記の多重パラメーター付き普遍シューアP, Q-関数の分解性, 消失性, 基底定理, 双対普遍シューアP, Q-関数の基底定理など基本性質の証明といった技術的な面での整備を行い, 論文「Generalized (co)homology of the loop spaces of classical groups and the universal factorial Schur P- and Q-functions」(arXiv:1310.8008)として発表した. さらには, 普遍形式群を乗法的形式群に特殊化することにより, シューアP, Q-関数のK-ホモロジーへの拡張版が得られる. これに関しても考察し, 「逆平面分割」を利用した組合せ論的表示や対称関数同士の積規則を与えるピエリの公式(の一部)を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度までの研究では, ΩSpよびΩ_0(SO)のMU-(コ)ホモロジーのなすホップ代数を, L係数の対称関数環とその双対の部分ホップ代数として実現し, その基底となるシューアP, Q-関数の拡張版を構成した. これらは, 無限変数の多項式環であるラザール環Lを係数とする形式的冪級数であるため, 通常のシューア P, Q-関数と全く同様に扱えるわけではない. 平成25年度は, これら拡張された対称関数が持つべき基本的性質(分解性, 消失性, 基底定理など)の証明といった技術的な部分の整備に多くの時間を費やしてしまった. 以上の研究は対称関数の構成に関する代数的な側面である. 一方で, 我々の研究動機の一つである, 様々な「旗多様体」(完全旗多様体, 複素グラスマン多様体, ラグランジアン・グラスマン多様体, カッツ・ムーディ群の旗多様体, アフィン・グラスマン多様体など)の「トーラス同変な一般(コ)ホモロジー理論」の「シューベルト類」を記述する, という幾何的な側面については, そもそも無限次元の旗多様体に対するトーラス同変な一般(コ)ホモロジー理論の定義そのものがきちんと整備されておらず, ましてやシューベルト類の定義そのものが満足のいく形でなされているとは言い難い. こうした, 理論の基礎的部分の整備にはさらに多くの時間を要するものと思われる. これまで通りトーラス同変コホモロジー理論における局所化を利用してシューベルト類を構成するという方針を踏襲しつつ, 幾何的な側面からやや離れ, 旗多様体のトーラス同変コホモロジー環を記述するためにKostant-Kumarが導入した「ニル-ヘッケ代数」を複素コボルディズム理論へ拡張したもの(これは2012年頃にZainoullineたちにより構成された)を考え, 代数的に処理することが適当ではないかと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
シューア P, Q-関数の, L係数への拡張版である「普遍シューア P, Q-関数」(多重パラメーター付きのものも含む)とその双対である「双対普遍シューア P, Q-関数」の構成という代数的な部分の整備がようやく一段落した. 今後は, 次の2点を中心に研究を進めていく予定である: 1. C, D型の旗多様体(ラグランジアン・グラスマン多様体, 直交グラスマン多様体)やC, D型のアフィン・グラスマン多様体(これらは基点付きループ空間ΩSp(n)およびΩ_0(SO(n))とホモトピー同値)のトーラス同変な一般(コ)ホモロジー理論(とりわけ複素コボルディズム理論)の, シューベルト類を用いた記述を行う. これについては, 「現在までの達成度」の項で述べたように, 「ニル-ヘッケ環」のL係数への拡張版を利用して, 代数的に処理する方向で研究を進めていく. 2. 普遍形式群を乗法的形式群に特殊化することにより, 新たな対称関数の族である「K-ホモロジー シューア P, Q-関数」が得られる. これらは, その構成の仕方より, 池田-成瀬による「K理論的シューア P, Q-関数」の双対である. これらについては「逆平面分割」を用いた組合せ論的表示や積規則を与えるピエリの公式の一部などの断片的な成果しか得られていない. 今年度は, ピエリの公式の全容解明, 任意のK-ホモロジー シューア P, Q-関数を, 分割「一行」に対応するものの多項式で記述する, いわゆるジャンベリの公式の追究などに焦点を当てて研究を進めたい. また, 「K-ホモロジー Schur P, Q-関数」とLam-Pylyavskyyが構成した「双対安定グロタンディーク多項式」との関係は, 通常のシューア P, Q-関数とシューア関数との関係の類似と捉えることができ, この観点からも考察を進めたい.
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