2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24540106
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坂井 哲 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50506996)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スピン系臨界現象 / φ4乗モデル / イジング模型(オランダ,台湾) / レース展開(台湾) / イジング1-arm指数(オランダ) |
Outline of Annual Research Achievements |
スピン系数理モデルの代表格に,(強磁性)イジング模型やφ4乗モデルがある.これらのモデルは,温度をパラメターとして相転移や臨界現象を示すことが知られている.例えば,2次元正方格子上の最近接イジング模型の厳密解がOnsagerによって発見されたのは1944年,その厳密解から分かる臨界現象にSmirnovが確率幾何学的な新しい解釈を与えることに成功し,フィールズ賞を受賞したのは最近のことである. 坂井は,1970年代に初めて考案され,1980年代にその有用性が開花した「ランダムカレント表示」という確率幾何学的な手法を用い,イジング模型に対するレース展開を開発(2007年)した.これによって,従来不可避だった「鏡映正値性」などの仮定を必要としない,強力な平均場臨界現象の数学的に厳密な証明に成功した. このアイデアをさらに発展し,φ4乗モデルに対してレース展開が適用できることを示した.これにより,「繰り込み群」に寄らない新しい方法で,4次元より高次元における臨界2点関数の漸近評価を証明することに成功した.同じ評価は繰り込み群を駆使しても得られるはずだが,技術的には圧倒的に簡単になった.この結果はCommunications in Mathematical Physicsに掲載された. また,モデルを定義するスピン間の直接相互作用係数がスピン間距離の冪で減衰する場合についての解析手法を確立.その冪指数を d+a (dは次元,a>0)とすると,a>2のとき,d>4で臨界2点関数はNewton核と同様の漸近挙動を示し,a<2のとき,d>2aで臨界2点関数はRiesz核と同様の漸近挙動を示すことを証明した.次元の下限(4や2a)は上部臨界次元である.結果はAnnals of Probabilityに掲載された.
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