2013 Fiscal Year Research-status Report
1次元2階微分作用素のスペクトル漸近定理とその拡散過程への応用
Project/Area Number |
24540110
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
笠原 勇二 筑波大学, 数理物質系, 教授 (60108975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梁 松 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (60324399)
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Keywords | ベッセル過程 / スペクトル関数 / 拡散過程 / タウバー型定理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1次元2階微分作用素について、スペクトル関数の漸近挙動を調べることである。この作用素は拡散過程に対応するので、拡散過程へ応用することができる。 1次元拡散過程でもっとも基本的な確率過程はブラウン運動であるが、これに次いでベッセル過程も非常に重要な確率過程である。なぜなら、種々の極限定理の極限過程として現れるのは自己相似過程であることはよく知られているが、自己相似な拡散過程はベッセル過程であるからである。よって本研究は、いわば「ベッセル過程の吸引域」を求めることに相当している。すなわち、ベッセル過程についてはスペクトル関数や推移確率密度等、さまざまな量が具体的に詳しく計算されているので、これを拡張して、漸近的にベッセル過程に近い拡散過程を研究するのが目標である。 得られた主な結果は次のとおりである。ラプラシアン(ブラウン運動)にドリフト項がついた形の2階微分作用素の場合、フェラーの標準測度が正則変動する(すなわち、ベッセル過程の吸引域に属する)ためのドリフト項に関する必要十分条件を求めることに成功した。これは、推移確率やスペクトル関数の正則変動のための必要十分条件と言っても同じことである。この結果の主要部分は24年度に得られたが、細部を詰めて論文にまとめ上げ、投稿する作業は25年度になった。 また、研究の続きとして、半直線上での議論を、全直線上の話に持ち込むための研究も行った。これは2つのHerglotz関数の調和平均に関するタウバー型の定理に帰着され、現在論文にまとめる段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
拡散過程の生成作用素の表現方法にはコルモゴロフ型の古典的な形とフェラーの標準形などがあり、フェラーの標準形における標準測度が正則変動になるための必要十分条件をコルモゴロフ式の作用素におけるドリフト係数の言葉で表すことが研究目標のひとつの柱であるが、24年度に主要な計算が済み、25年度に論文にまとめ上げることが出来た。特に、逆問題についてもほぼ完全な答えが得られたことは大きな成果である。 また、片側拡散過程についての結果を両側の拡散過程に適用するための重要な結果についても目処がついたのも大きな成果といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上で述べたとおり、片側拡散過程についての結果を両側の拡散過程に適用するための基本定理が得られたが、まだファーストドラフトレベルであるので、細部のチェックと論文としてのブラシアップが必要であるので、引き続き、投稿出来るレベルの論文に仕上げる予定である。 また、すでに得られた結果において、パラメータの許される範囲に若干の穴が残されているので、これらを埋める努力をしたい。 さらに、離散モデルの場合についても考えてみたい。すなわち、出生死滅過程やランダムウォークは拡散過程の離散モデルといえるが、これらの場合についての古典的結果を、今回得られた成果の立場から見直すことをしてみたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末の春休みを利用して、関西の研究協力者と共同研究を行う予定であったが、日程の調整がうまくいかず延期となり、その旅費相当分が次年度繰越となった。 本年度に日程の再調整をして、共同研究を行うので、その旅費として使用する。
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Research Products
(3 results)