2012 Fiscal Year Research-status Report
組合せ論的マルチメディア指紋符号とその不正者追跡アルゴリズムの研究
Project/Area Number |
24540111
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
繆 いん 筑波大学, システム情報系, 教授 (10302382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 良叔 筑波大学, システム情報系, 教授 (30165443)
神保 雅一 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (50103049)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マルチメディア指紋 / 分離可能符号 / 追跡アルゴリズム / 組合せデザイン理論 / グラフ理論 / 有限幾何 / 拡張分離可能符号 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 |
Research Abstract |
本研究では、デジタルコンテンツの不正な流通を防ぐために、不正ユーザの結託攻撃に耐性を持つ指紋符号を構成し、その符号の符号語をコンテンツに埋込み、海賊版で検知された情報から不正者を追跡するアルゴリズムの開発を行っている。 Cheng・Ji・繆(2012)は、指紋符号の一種である分離可能符号の符号語数の上界の導出や最適な分離可能符号の構成を行った。平成24年度では、その上界を改善し、新しい上界に達する最適な分離可能符号の無限系列を構成した。その結果を論文「Cheng・Fu・Jiang・Lo・Miao, New bounds on 2-separable codes of length 2」として投稿した。 分離可能符号に基づいた追跡アルゴリズムは、ユーザ総数が分離可能符号の符号語数の上界を超えない、かつ不正者数がある定められた定数を超えない場合では、不正者全員を捕まえることができるが、その限界を超えると、不正者を追跡することができなくなる。この問題を解決するために、我々は組合せ論的アプローチと確率的アプローチの考案を進めている。 組合せ論的アプローチとして、Cheng・Fu・Jiang・Lo・繆は拡張分離可能符号とそれに基づいた追跡アルゴリズムを提案した。拡張分離可能符号を利用することで、ユーザ数が分離可能符号の符号語数の上界を超えても、少なくとも一人の不正者を確実に捕まえることができるようになった。関連結果は論文「Cheng・Fu・Jiang・Lo・Miao, Expanded separable codes」としてまとめている最中である。 確率的アプローチとして、Cheng・繆・Wuはマルコフ連鎖モンテカルロ法により追跡アルゴリズムを提案した。シミュレーション結果より、不正者数が上記の限界を超えても、少なくとも一人の不正者を効率よく捕まえることができることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画は、(1)分離可能符号の符号数上界の改善とその上界に達する最適な分離符号の無限系列の構成、(2)完全ハッシュ関数族の構成、(3)確率的不正ユーザ追跡アルゴリズムの開発、を行うこととした。 現段階では、研究計画(1)と(3)は予定通り順調に進展しているが、(2)に関する研究はやや遅れている。その主な理由としては、計画外の拡張分離可能符号の研究に多く時間を費やした。その結果、研究計画(2)はやや遅れているが、計画外の最適な拡張分離可能符号の構成やその符号に基づいた追跡アルゴリズムの開発に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は前年度に引き続き、組合せ論的アプローチと確率的アプローチによるデジタルコンテンツ(特にマルチメディアコンテンツ)の不正な流通を防ぐためのデジタル指紋理論の数理的研究を行う。 拡張分離符号の導入により、ユーザ総数が分離可能符号の符号語数の上界を超えても、少なくとも一人の不正ユーザを確実に捕まえることができる。しかし、現在使っている拡張分離可能符号に基づいた追跡アルゴリズムの効率については良くない。そのため、特殊な拡張分離可能符号に基づいた追跡アルゴリズムの提案を試みる。それと同時に、分離可能符号や拡張分離可能符号の更なる性質に関しても調べる。 平成24年度に提案されたマルコフ連鎖モンテカルロ法に基づいた確率的不正ユーザ追跡アルゴリズムの性能を評価するために、コンピュータでシミュレーションを続けて行う。年度内に理論的な分析とシミューレション結果をまとめ、ジャーナルへ投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を進めるにあたって、関連分野の専門家と深く議論し、研究集会で情報発信と収集を行う。次年度は、神保雅一教授(名古屋大学)やH.-L. Fu教授(台湾交通大学)及びFu教授の弟子、G. Ge教授(中国浙江大学)、A. Barg教授とM. Wu教授(アメリカメリーランド大学)、D. Wu教授とM. Cheng教授(中国広西師範大学)、Y. M. Chee教授(シンガポール南洋理工大学)などとデジタル指紋(特にマルチメディア指紋)に関する議論を更に進め、必要であれば、いずれかの大学を訪問する予定である。平成25年7月にドイツで開催される有限体及びその応用に関する研究集会や、平成26年3月に台湾で開催される台湾・日本組合せ論に関する研究集会で論文を発表し、情報を収集する計画である。そのほか、高速演算用計算機(iMac、拡張HD)や関係図書などを購入する計画である。
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