2013 Fiscal Year Research-status Report
分枝マルコフ過程及び確率方程式の数理医学への応用の新展開
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24540114
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
道工 勇 埼玉大学, 教育学部, 教授 (60207686)
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Keywords | 分枝マルコフ過程 / 超過程 / 確率方程式 / 数理医学 / 免疫応答 / 腫瘍免疫 / ガン血管新生 / 数理モデル |
Research Abstract |
第一目的である「ガン細胞の免疫応答の確率モデル」に関する研究については、前年度に引き続き対象となる確率モデルの定性的性質について調べた。ここでの大きな目標として確率系の消滅性の理論的証明を目指している。これは申請内容でも述べたように、モデルが局所消滅性をもてば、モデル論的にはガン細胞が免疫反応により局所的に駆逐された状況に対応すると考えられるので応用上極めて重要である。そこでモデルの有効性を理論的に示すため、消滅性の再現は重要で、その目的の最初のステップとして確率モデルの「再帰性・過渡性」を調べるのである。まずピンスキー=エングランダーらの研究グループの手法を試た。次にイスコエらの対応する微分方程式に関連した関数解析的手法も試みた。第二目的である「ガンの血管新生を記述する確率微分方程式」に関する研究では、新生血管の先端部の速度過程を定式化し、対象過程がみたすべき確率方程式の導出を行った。次に前年度に導出した脈管先端部の生成過程とそれを記述する確率方程式との考え、上記との連立確率方程式をシステマテイックに解いて解過程の存在・一意性定理を証明した。さらにその確率系をさらに一般化した数学モデルを考察の対象として、その生物確率系の平均原理の確立を数学的に立証した。さらに平均原理導出時に自然に定まるある係数に基づいて、導入パラメータに対する自然なスケーリング・オーダーがわかるので、そのスケール則に基づいて系のゆらぎ量(フラクチュエーション)を定義し、そのゆらぎ量が満たすべき確率微分方程式を導出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の概要で書いた第一目的に関して、確率モデルの消滅性証明を目指して上記2つの方法を試みたが、実際にはこれと言った顕著な結果を得られずに終わってしまった。一番目の方法は相互作用のない例の場合のもので、この手法を自分の確率モデルに適用しようとする際には相互作用項の反映をうまく制御しながら評価を行う必要があるが、その評価方法がうまくいかなかった。また二番目の方法はそれ自体の応用例(合致する文献)が少なく、モデルに対応する方程式を導出することができなかった。そのため十分な結果を出せないで終わっている。しかし、第二目的に関しては、順調かそれより良い進度で進展があった。まず単純な確率モデルの導出に成功し、その解析を終え、平均原理の導出、ゆらぎ解析を終えた。さらにより一般のモデルの構築と同様な解析(平均原理導出、ゆらぎかいせき)も終了できた。したがって総じて「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れがでている第一目的に全力を注いで少しでも進展が望めるように努力する方策をとるつもりである。相互作用をどうとらえるのかについて、根本から少し見方・視点をかえたアプローチをとることを考える。微分系ではなく積分系に変換して相互作用を記述できる非線形項を含む積分方程式を考察する。我々の提案している確率モデルは基本的には分枝粒子系の発想に基づいているので、ランダムに枝分かれして育様相を方程式的に定式化して、その性質の特徴付けを図る方針でトライすることにする。そうするとこで生物確率系の本質や数理メカニズムが見えてきて、解明につながると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末の3月19日から3月20日に1泊2日の日程で京都大学数理解析研究所に出張したおり、年度末の会計処理の関係で2月終わり頃、概算出張の見積もりを事務会計係にお願い して予算執行を計ったところ、後に¥42,900-のところが実際には¥42,700-で差額¥200が生じた旨、報告を受けたため。 消耗品(文房具類)に使用予定である。
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Research Products
(14 results)