2013 Fiscal Year Research-status Report
微分方程式に対する精度保証付き計算の総合ライブラリの構築
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24540115
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
山本 野人 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (30210545)
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Keywords | 精度保証法 / 偏微分方程式 / 力学系 / 多倍長演算 |
Research Abstract |
(1)偏微分方程式の精度保証付き数値計算に関しては、佐世保高専校長の中尾充宏教授らの研究グループと打ち合わせを頻繁に行い、現在の研究状況の把握に努めた。 (2)力学系の精度保証法に関しては、山本の指導のもとにある大学院生および統計数理研究所の松江要研究員と共同研究を行い、数回の国内/国際研究集会で発表した。大学院生(修士)との共同研究では、リャプノフトレーシングと呼ばれる新手法の開発に従事し、その適用範囲を見極める研究を行った。同時に、松江氏の協力のもとで、ふたつの異なる不動点を結ぶ解軌道であるヘテロクリニック軌道の精度保証法の研究を進め、実際にその存在を証明する精度保証例を構築した。大学院(博士)との共同研究では、閉軌道の存在証明を行うための精度保証法(前年度までに開発した樋脇・山本の方法)の改良を進め、非常に簡潔な形で記述・実装を行うことができるようになった。この研究では東京大学・松尾教授らの助言を受けている。得られた成果は、年度末に早稲田大学で行われた国際研究集会で発表した。また、同じ簡素化の手法によって、漸近安定な閉軌道の吸引集合を同定するための精度保証法の開発・改良に務め、実用に耐える方法が実装できるようになった。これらに関しては、現在論文執筆中である。なお、前年度に研究に着手した区間演算と位相幾何学をつなげる理論開発については、やや進展が遅れた状態となっている。 (3)多倍長ライブラリに関しては、大学院生(博士)とともに進めている。実装を行った後に、実際の使用を通して検証した。その過程で、多倍長数の10進表記の問題などが明らかになり、これを改善した。特に、常微分方程式の代表的は精度保証法であるLohner法について、その多倍長プログラムを自動生成できるようになったことは大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
力学系の研究について、基礎的な部分はおおむね順調に進んでいるが,位相幾何学との連携に関しては共同研究者の異動もあって研究態勢が十全でなく、あまり進めることができなかった。 多倍長精度保証のプログラム開発は概ね完了し、まとめの論文執筆にはいっている。 偏微分方程式の研究に関しては、先行している中尾グループとの研究連絡は密にしているものの、こちら側からの具体的な貢献をなすことができないでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であるので、得られた成果については論文のかたちでまとめていくことが優先される。遅れている部分である位相幾何学との連携に関して、共同研究態勢の立て直しを行い、出来る限りの成果を出して行く。 偏微分方程式の研究については、中尾グループと定期的な研究打ち合わせを行うだけでなく、常微分方程式の精度保証法で得られている手法を適用し、共同であたる事ができる研究目標を捕らえ直す。具体的には、周期性をもつ偏微分方程式の解の精度保証を考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計算機環境整備を計画していたが、大学運営業務(学科長および専攻長)が予想以上に多忙となったため、計算機の新型への置換作業が遅れた。 2013年度に行う事ができなかった計算機環境の整備を急ぎ、同時に国際学会への参加費として使用する。特に大学院生の帯同をともなうので、その費用にも充てる。
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