2012 Fiscal Year Research-status Report
非周期環境における界面ダイナミクスの数理的研究とその応用
Project/Area Number |
24540119
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中村 健一 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (40293120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢崎 成俊 明治大学, 理工学部, 准教授 (00323874)
石渡 哲哉 芝浦工業大学, システム工学部, 准教授 (50334917)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 界面ダイナミクス / 進行波 / 移動境界問題 |
Research Abstract |
非周期的環境が界面ダイナミクスに与える影響を解明するために,研究分担者・連携研究者とともに数理解析・数値解析の両面からの研究を行い,以下のような成果を得た。 (1)非周期的な境界形状を持つシリンダー領域を進行する界面について,界面の挙動を精密に評価する比較関数を構成することに成功し,それを利用して進行界面の伝播速度をある程度精密に評価することができた。これにより,2重周期的な環境の空間構造を細かくするという均質化極限においては、進行界面の平均伝播速度がその均質化極限に収束する最適なオーダーを少なくとも形式的には得ることができた。 (2)結晶成長などに見られるスパイラル状の界面運動に対し,それを近似する反応拡散方程式を含むより一般の準線形放物型方程式について考察し,順序保存力学系における非有界な解軌道の挙動に関する一般論を展開することでスパイラル状の解の一意存在や大域的漸近安定性を示した。また,界面をクリスタライン曲率流で近似し,その結果得られるスパイラル状の多角形曲線の端点が与えられた曲線上を運動する場合について考察し,一様環境の場合には解曲線が自己交差せずに時間大域的に存在することを明らかにした。 (3)曲率流方程式に代表される移動境界問題に対する安定かつ効率的な数値スキームの確立に向けて研究を行った。特に,面積不変性や曲線長短縮性などの変分構造を持つ移動境界問題に対し,その変分構造を離散化後も保つような数値スキームを提案し,特に一様環境の場合には,移動境界問題特有の幾何学的形状に起因する数値的不安定性を取り除くことに成功した。また、数値シミュレーションによる性能評価を行い,提案したスキームを用いると既存のスキームよりも複雑な界面運動が安定的に計算できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非周期的な境界形状を持つシリンダー領域を進行する界面の伝播速度については,空間構造を細かくする均質化極限における収束オーダーが形式計算により求められており,厳密な証明に向けての足掛かりを得ることができた。 スパイラル状の界面運動については,クリスタライン曲率による多角形近似を行い,一様な場合ではあるが,解が自己交差を生じずに時間的に存在することを示し,非一様な場合への拡張につながる結果を得た。 曲率流方程式を含む移動境界問題に対する数値計算手法の開発については,取りかかりとして一様環境の場合に変分構造を保存する数値スキームを導出し,幾何学的形状に起因する数値的不安定性を取り除くことに成功した。この方向で非一様環境の場合の数値的に安定なスキームも提案できることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
非周期的な境界形状を持つシリンダー領域を進行する界面の伝播速度については,すでに得られた2重周期環境の場合の形式的な結果を数学的に厳密に証明するとともに,より一般の準周期的な環境における問題の解析に着手する。そのためには,円周上の無理数回転を一般化した高次元クロネッカー列の分布に関する性質が必要になることが予想されるので,その分野の専門家とも情報交換しつつ計画を遂行する。 非一様環境におけるスパイラル状,あるいはV字形界面の挙動については,クリスタライン曲率近似による解析を行い,スパイラル波や進行波の存在・安定性や伝播速度と空間構造との関係を明らかにする。 移動境界問題に対する数値計算手法の開発については,これまでに得られた一様環境の場合の成果を発展させて,問題の持つ変分構造に着目しつつ,数値的に安定かつ高性能な数値スキームの提案を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は,研究代表者と研究分担者のスケジュール調整がうまくいかない時期があり,研究グループ内の打ち合わせ回数が当初の予定よりも少なくなってしまったため,研究分担者に配分した分担金の繰り越しが生じてしまったが,次年度は研究計画の遂行のためにできるだけ早い時期にグループ内の打ち合わせを行うとともに,次年度の研究費と合わせて関連分野の研究者との意見交換のために海外渡航および招聘を行う。
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