2013 Fiscal Year Research-status Report
非周期環境における界面ダイナミクスの数理的研究とその応用
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24540119
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中村 健一 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (40293120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢崎 成俊 明治大学, 理工学部, 准教授 (00323874)
石渡 哲哉 芝浦工業大学, システム工学部, 准教授 (50334917)
中村 俊子 (荻原 俊子) 城西大学, 理学部, 准教授 (70316678)
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Keywords | 界面ダイナミクス / 進行波 / 移動境界問題 / 順序保存力学系 |
Research Abstract |
異なる物質間,あるいは同一の物質であっても異なる状態であれば,それらを隔てる界面が存在する.その時々刻々と変化する界面の運動を解明することは,理学的にも工学的にも重要な課題となっている.本研究においては,空間的に非一様な環境が界面ダイナミクスに与える影響を明らかにするために,研究分担者,連携研究者,研究協力者と協同して数理解析・数値解析の両面から研究を行い,以下に挙げる成果を得た. (1)異種のポリマー鎖を化学結合でつなげたブロックポリマーのミクロ相分離を記述する,非局所項を持つ4階の非線形放物型方程式に対し,質量保存性・エネルギー散逸性という元の方程式が有する構造を保存する離散変分法に基づく数値スキームを構築し,その安定性および収束性を証明した. (2)非等方的な結晶成長を記述する駆動力つきクリスタライン曲率流方程式の解として現れるスパイラル状の多角形曲線の時間変化を調べ,解曲線が自己交差しないこと,および解曲線の辺が有限時間で縮退することなく時間大域的に存在することを示した.さらに,方程式を非線形に拡張した場合にも同様の結果が得られることを証明した. (3)非等方的曲率に依存した界面運動を記述する平面多角形の発展方程式に対する精度のよい数値スキームの開発を行った.特に,何らかの変分構造を持つ移動境界問題に対し,その構造を保存するスキームを構築し,非常によい精度で界面を追跡できることを確認した. (4)保存量を持つ2種競争系などの比較定理と保存則が成り立つ反応拡散方程式系に対し,安定な平衡解(あるいは時間周期解)の存在と一意性,および任意の初期値から出発した解の時間大域的な挙動を,順序保存力学系の一般論を構築することにより明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
移動する界面を精度よく追跡する数値スキームについては,反応拡散方程式系の場合も平面曲線(平面多角形)の発展方程式の場合も,元の問題が持つ性質や構造を保存する数値スキームの構築に成功している.特に,反応拡散系に対する数値スキームの導出のために考案した,行列の分数べきを利用して離散変分法を定式化する方法は,他の方程式系への適用が見込まれる. 非等方的な結晶成長を記述するクリスタライン曲率流方程式に対する研究は,方程式が非線形な場合にも展開され,解が有限時間で特異性を持つことなく時間大域的に存在することが示されており,解のより詳しい挙動を調べるための基礎を築くことができた. 比較定理と保存則が成り立つ反応拡散系に現れる界面運動に関する研究は,順序保存力学系の一般論を構築することに成功しており,より広いクラスの問題に適用できることが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
非常に微細な非周期的境界構造を持つ領域を進行する界面については,界面の平均伝播速度がその均質化極限に収束する最適なオーダーを適切な比較関数の構成により厳密に証明する. 非等方的な結晶成長を記述する界面方程式の解として現れるスパイラル状曲線,多角形曲線の挙動については,極限形状や縮退速度と空間構造との関係を明らかにする. 移動する界面を追跡する数値スキームについては,これまでに得られた手法を一般化・精密化することで,より広いクラスの移動境界問題に対する数値的に安定でかつ高精度な数値スキームの構築を目指す. 上記の計画を推進するためには,研究代表者・研究分担者・連携研究者・研究協力者の間の迅速な情報共有と綿密な研究打ち合わせが必要となるので,その機会を逃すことなく積極的に活用する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者が本務の都合で国外の研究集会への参加を取りやめたこと,および研究代表者と研究分担者とのスケジュール調整がうまくいかず,研究グループの打ち合わせ回数が当初の予定を下回ったことが,次年度使用額が生じた理由である. 次年度は研究計画の最終年度であるので,計画の着実な遂行のために年度の早いうちに研究グループの打ち合わせを行うとともに,次年度の研究費と合わせることで,研究成果の発表のために積極的に国内外の学会等に参加する予定である.
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