2012 Fiscal Year Research-status Report
超関数の近似に関する新しい理論の構築と数値計算への応用
Project/Area Number |
24540122
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大浦 拓哉 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (50324710)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超関数 / 数値積分 / 近似計算 |
Research Abstract |
平成24年度は,超関数が間接的に影響する計算困難な積分に着目し,計算法の解析や超関数の近似に関する研究を進めた.この研究に用いた積分の種類は,複雑な多次元振動積分,Goursatの無限区間積分の2種類である. 1) 複雑な多次元振動積分 緩やかに増加する関数のFourier変換に連続Euler変換を施したときの近似誤差について詳しく調べた.この誤差解析は,近似された超関数の線形写像としての近似誤差を意味するものであり,この誤差はある種の複雑な多次元振動積分の計算で現れるものである.その誤差解析を進めることで超関数近似に特化した連続Euler変換があること,実用的な数値計算には多倍長計算が必須になること,連続Euler変換には近似以外の数学的意味があることなどを解明した.この研究の打ち合わせや成果の一部については,龍谷大学瀬田キャンパスでの応用数学合同研究集会で行った. 2) Goursatの無限区間積分 この積分は,周期的にピークを持ち,そのピークが高く尖っていく非有界関数の1次元積分である.そのため,この積分値を具体的に計算することは困難であるとされてきた.この計算困難なGoursat積分を容易に計算する算法を提案した.それは,Hilbert変換を用いて特異性を除去するというものである.この成果はJournal of Computational and Applied Mathematicsで公開予定である.また,このHilbert変換を用いる特異性の除去は,Hilbert変換が解析的に計算できるような様々な積分の計算に応用可能で,汎用性が高いものと思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は,計画に従って連続Euler変換に着目した算法の解析を行った.そして計算機を用いて,連続Euler変換を用いた超関数の近似の具体的な検証を行った. また,新たな超関数の近似計算法の模索過程で,Goursatの無限区間積分に関する効果的な算法を発見することができた.これはある種の超関数を含む積分計算に応用可能なため,本研究の発展に寄与するものと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は平成24年度の結果を踏まえ,ある種の計算困難な多次元振動積分に対する効果的な算法を提案する.そして,応用範囲を多次元振動積分から更に広げていく予定である.具体的には, 1)計算困難な数値計算の種類を調査:超関数が関与する計算困難な数値計算の例は,勝手に創造できるものを加えれば無数に存在すると思われるが,その中で特に応用上重要なものを選ぶ必要がある.そのためには,理工学系の数値計算の分野の様々な問題について知る必要があり,国内や国外の数値計算や応用数学の研究集会・学会に出席し,最新の動向にも理解を深める.また,様々な研究者とのコミュニケーションをとる. 2)計算困難性と超関数との関係を調査:1.で明らかにした計算困難な例に関して,計算困難性と超関数の関係について,様々なアプローチから詳しく調べる. 3)超関数を意識した新しい算法の構築:平成24年度で解析した連続Euler変換による算法を基本にし,2.で調査した結果を考慮した上で,超関数を扱う方法による新しい算法を構築する.これは,より広い問題の解決方法を探ることになる. 4)新しい算法の計算量の比較:3.で提案した算法と従来の算法との計算量の比較を行う.まず,計算精度,計算サイズ,次元数等に対する理論的な計算量のオーダーを見積もる.次に,具体的な計算機上で数値実験を行い,実行時間や計算精度の検証をし,有効性の判断を行う.この数値実験は,基本的に計算困難な問題を扱うので非常に大規模なものになると予想され,高速高性能の計算機が不可欠である.そこで,平成24年度に購入した計算機や計算機使用料を用いてこの数値実験を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の購入時に想定した容量より更に大きい計算を新たに予定するため,サーバーのハードディスク増設に用いる.
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Research Products
(4 results)