2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540129
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
瀬野 裕美 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (50221338)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 数理生物学 / 数理モデル / モデル化 / 応用数学 / 生態学 / 差分方程式 / 微分方程式 |
Research Abstract |
生物個体群ダイナミクス(生物の個体群サイズ[総個体数や密度など]の時間変動の様相)に関して,数理生態学の歴史においてほとんどが独立に構築され,理論的研究に用いられてきた非線形差分方程式系による離散時間モデルと非線形微分方程式系による連続時間モデルの間の連関性を数学的に検討し,離散時間モデルや連続時間モデルの構造(関数形 etc.)の合理性[生物現象の構造との論理的な整合性]について数理的な考察を体系的に行うことを目指した研究課題を掲げている。 平成24年度においては,連続時間モデルにおいてしばしば用いられる典型的な非線形相互作用項の一つであるHolling型(あるいはMichaelis-Menten型)相互作用に対する合理的な数理モデリングにより,対応する非線形相互作用因子を有する離散時間型の新しい生物個体群ダイナミクスモデルを構成し,その数理的な性質を調べ,対置される常微分方程式系による連続時間モデルとの相違を明らかにする研究を進めた。従来の典型的な数理モデリングによるHolling型相互作用項の構築で得られた離散時間モデルと,その離散時間モデルの時間ステップ長ゼロ極限で得られる常微分方程式系による連続時間モデルについての力学系としての特性の対比を行った結果,平衡点の存在性については一致するものの,安定性については,全く拮抗する場合が起こりうることが見いだされた。これは,数理モデリングにおける合理性に問題があるためであると考えられ,この問題を数理的に検討することによって,新たに合理的な数理モデリングの理論を得られることは間違いなく,目下,その問題についての検討を研究課題として進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予期していなかった研究上の問題点を見いだすことになったが,この問題点を解決することを目的とした研究は,本課題の研究の目的に合致するもの以外ではなく,むしろ,本課題の研究の目的を達成する大きな手がかりが得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度において見いだされた,Holling型相互作用項の構築で得られた離散時間モデルと,その離散時間モデルの時間ステップ長ゼロ極限で得られる常微分方程式系による連続時間モデルについての力学系としての特性の拮抗の問題を数理的に検討することによって,新たに合理的な数理モデリングの理論を得ることを目指す。 また,その成果も活用して,さらにより一般的な 2種以上の相互作用する個体群ダイナミクスに関する非線形微分方程式系による数理モデルに「対応する」離散時間モデルについての検討を発展させる。Nicholson-Bailey型宿主-寄生者モデルは,特に有名な離散時間モデルであるが,やはり,対応する連続時間モデルとの数理的構造や特性の連関性が検討された研究についての情報はない。単一種個体群ダイナミクスに対する数理モデルについては,比較的多くの離散時間モデルが用いられてきたのに対し,複数種個体群ダイナミクスについては,離散時間モデルの研究は,相当に未開拓である。この課題は,本研究課題全体にわたって予定されていた研究段階に沿ったものとなっている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
勤務先の異動に伴って,時間的な余裕に欠くこととなり,当初予定していた国際的学術交流のための機会を逸し,また,研究環境の変化後の整備にかかる費用も本研究費から予定していた支出に依ることが不要であったため,結果として,次年度に使用する予定の研究費が生じた。 翌年度以降については,この「次年度に使用する予定の研究費」分を,当面,最終年度(3年目)に配分させるような使用計画となっている。これは,本研究課題に関わる研究集会の開催に係る費用へ本研究費からの支出を行う計画を立てようとしているためである。ただし,同研究集会の日程については,目下,検討中であり,やむを得ず次年度(2年目)に開催する場合には,最終年度からの予算の前倒しによる支出も選択肢に入れている。 本研究課題は,数理モデルによる現象研究に係る重要な学際的課題であり,本研究課題に焦点をおいた研究集会を開催すること自体は希有であるばかりでなく,昨今の,数学や数理の理論の現象への応用や連携を模索する流れを考えると,研究の発展にとって有益であることは疑うべくもない。
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Research Products
(5 results)