2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540129
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
瀬野 裕美 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (50221338)
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Keywords | 数理生物学 / 数理モデル / モデル化 / 応用数学 / 生態学 / 疫学 / 差分方程式 / 微分方程式 |
Research Abstract |
生物個体群ダイナミクス(生物の個体群サイズ[総個体数や密度など]の時間変動の様相)に関して,数理生態学の歴史においてほとんどが独立に構築され,理論的研究に用いられてきた非線形差分方程式系による離散時間モデルと非線形微分方程式系による連続時間モデルの間の連関性を数学的に検討し,離散時間モデルや連続時間モデルの構造(関数形 etc.)の合理性[生物現象の構造との論理的な整合性]について数理的な考察を体系的に行うことを目指した研究課題を掲げている。 今年度は,継年的な研究テーマとして取り組んできた,感染症の伝染ダイナミクスについての連続時間モデルから新たに構築される離散時間モデルについての新しい知見を得ることができた。特に,ある地方都市(山口県岩国市)のインフルエンザ,感染性胃腸炎の疫学データに当該の離散時間モデルのフィッティングを試みることにより,当該モデルのデータへのフィッティング性が高いことが例示され,今後,その有用性についてさらに検討を進める予定である。 また,平成24年度の研究によって現れた課題として,連続時間モデルにおいてしばしば用いられる典型的な非線形相互作用項の一つであるHolling型(あるいはMichaelis-Menten型)相互作用に対する合理的な数理モデリングにより構成された,対応する非線形相互作用因子を有する離散時間型の新しい生物個体群ダイナミクスモデルについての数理的な性質を調べた結果,連続時間モデルと離散時間モデルの間で,平衡点の存在性については一致するものの,安定性については,全く拮抗する場合が起こりうることが見いだされた。この拮抗性については,継続して数理的な考察を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究成果において,予期していなかった研究上の問題点が現れ,それは,むしろ,本課題の研究をさらに発展させる有意義な手がかりが得られたのであるが,その課題についての結論までは至っていない。しかしながら,現在,その数理的な研究を進めており,いくつかの部分的な結果が得られる段階にはきているので,今後の重要な研究課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度において見いだされた,Holling型相互作用項の構築で得られた離散時間モデルと,その離散時間モデルの時間ステップ長ゼロ極限で得られる常微分方程式系による連続時間モデルについての力学系としての特性の拮抗の問題を,平成25年度には数理的に検討することによって,いくつかの部分的な結果は得られたので,平成26年度でも,さらに研究を継続することにより,さらに数理モデリングの理論の展開を目指す。 また,さらにより一般的な2種以上の相互作用する個体群ダイナミクスに関する非線形微分方程式系による数理モデルに「対応する」離散時間モデルについての発展的検討も進めつつあり,今後,より精緻な結果を追求してゆくことが課題である。Nicholson-Bailey型宿主-寄生者モデルは,特に有名な離散時間モデルであるが,対応する連続時間モデルとの数理的構造や特性の連関性が検討された研究についての情報は未だに知られていない。複数種個体群ダイナミクスについては,離散時間モデルの研究は,相当に未開拓の課題が多いといえる。この課題は,本研究の本質的課題である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。 平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)