2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540136
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
三澤 哲也 名古屋市立大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (10190620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮原 孝夫 名古屋市立大学, 経済学研究科(研究院), 名誉教授 (20106256)
宮内 肇 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (20181977)
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Keywords | 確率力学系 / ランダムNPV / 効用無差別価格 / リスク鋭敏的価値尺度 / 選択統計モデル / 規模のリスク / 事業リスク評価 / 電力市場価格分析 |
Research Abstract |
本研究は、研究代表者が展開してきた確率力学系と不変量理論の観点から不確実性リスクを考慮した投資価値評価問題にアプローチすることを目的としている。すなわち、不確実性リスクを伴うプロジェクト事業評価のキーとなる”ランダムキャッシュフロー現在価値(RNPV)”を確率系とし、それに対する一種の不変量概念である”効用無差別価格概念(Utility indifference pricing)”を用いて上記問題を解決する、いわゆる”UNPV法”について、その理論深化と発電設備投資問題等への応用による有用性の検証を目的としている。平成25年度は平成24年度の成果に基づき、以下の成果を得た。 代表者・三澤哲也は、UNPV法の一種の変形法である”効用無差別価格に基づく内部利益率(UIRR)法”について、投資家のリスク回避度にかかわる感度分析を開始した。また自身が定式化したUNPV法の一種の近似であり、投資家の行動データより投資判断を行う統計モデルである「多値型RNPV選択モデル」について、分担者・宮内肇らとともにその有用性を火力発電設備投資シミュレーションを通じて確認した。さらに分担者・宮原孝夫によってUNPVを発展させる形で定式化された”リスク鋭敏価値尺度”について、宮原および三澤の指導院生とともに香港REITの実データを題材にその有用性を確認した。 分担者・宮内肇は、上記共同研究とともに、電力システムにかかるリスクを解析するために、我が国の電力卸市場価格の決定構造を明らかにしその要因を分析するための回帰分析を主導した。 分担者・宮原孝夫は、上記共同研究に関連して、リスク鋭感的価値尺度が投資規模のリスク評価に有効であることを解明し、特に、巨大なリスクに対応する1手段としての CAT bond の有用性を説明するのに有効である可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は昨年度の代表者、分担者それぞれが担当した昨年度までのパイロットスタディ的成果の展開に力を注いだ。中でも共同研究にかかわる事柄については重点を置いて取り組むことを心がけた。その結果、以下の成果が公表された。 1)昨年度から三澤・宮内の間で推進してきた「多値型RNPV選択モデル」の有用性に関する検証シミュレーションについては、著名な米国電気情報通信学会(IEEE)が後援する国際会議(IREP2013)で発表され、出版物としても査読付国際学会論文として公表された。2)電力市場リスク分析の一環として宮内が主導する日本の電力卸市場価格分析についても三澤との共同論文の形で国際会議にて公表が予定されており、あわせて電力系査読雑誌にも掲載が決定している。3)宮原の「リスク鋭敏的価値尺度」研究については、その有用性が「投資規模のリスク」評価で認められルことが判明したが、それについては京都大学数理解析研究所での講演で公表され、出版物としては同研究所講究録として出版予定となっている。4)3)の実務への応用を意識した宮原、三澤の共同研究の成果の一部が三澤の指導院生の修士論文(Ban Lan氏、”Valuation of Hong Kong REIT based on Risk Sensitive Value Measure Method”、2013年度名古屋市立大学経済学研究科修士論文)に盛り込まれた。5)三澤が前年度から着手しだした「効用無差別価格理論に基づく内部利益率(UIRR)」については、そのリスク感度分析に関するシミュレーション分析を本格的に開始し、その成果を分担者らとの研究打ち合わせセミナー等で討論し、その一部は上記修士論文の中でも触れられている。 以上の成果とその公表状況から計画はおおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的にはこれまで2カ年にわたって実施してきた個別ならびに共同研究成果をさらに展開させる予定であるが、課題最終年度であることを踏まえ、成果の深化だけでなく論文化を目指してのまとめ、ならびに代表者、分担者の成果のさらなる融合可能性も模索したい。 具体的な課題としては、1)分担者・宮原孝夫の「リスク鋭敏的価値尺度」と代表者・三澤哲也の「多値型RNPV選択統計モデル」との相違に関するより詳細な分析、2)分担者・宮内肇と三澤とで進めている電力市場分析の結果を踏まえ、それを反映した電力事業投資のより精度の高いシミュレーション、3)一般のファイナンスデータをも対象とした、リスク鋭敏的価値尺度の有用性 ー特に宮原が重点的に進めている「規模のリスク指標」の定式化とその有用性ー の検証、4)効用無差別価格理論に基づく内部利益率(UIRR)の特性分析の深化、5)1)~4)の電力事業投資分野への応用とそれによる一連の課題成果の検証、などを想定している。 以上の課題ならびにこれまでの課題から得られた成果のうち、まだ正式の論文として発表されていないものについては、その公表・出版に向けて精力を注ぐ予定である。同時に、これまで同様、数理系、電力系、ファイナンス系の学会や国際会議における発表にも積極的に取り組む。なおこれまで個別ないしは代表者・分担者計3名のうちの2名が共同で行う研究打ち合わせセミナーが多かったが、1つの区切りである最終年度であることも考慮して、26年度は3名全員が主体となった研究会を開催し、成果を公表すると共に、関連する研究者を数名程度招聘し、彼らとの研究交流の中で、得られた課題研究成果のさらなる展開の方向を模索したい。
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Research Products
(9 results)