2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540141
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
井上 潔司 成蹊大学, 経済学部, 教授 (10384653)
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Keywords | 統計的分布理論 / 信頼性工学 / 離散分布論 / 統計的推測理論 / グラフ |
Research Abstract |
平成25年度の研究は、主に「二変量試行列における分布の双対関係とその統計的応用」を主テーマとして研究に取り組んだ.特に、二変量試行列における単純パターンの分布についての理論構築を行った。様々な応用問題を考える上で、単純パターンに関する重要な分布は大別すると、二種類ある。一つは単純パターンの生起回数の分布であり、もう一つは単純パターンが一定回数現れるまでの待ち時間分布である。ここでは、これら二つの分布間にはある種の双対関係があることを示した。さらには、その双対関係を多重母関数の観点から捉え直す事で、両分布間の関係を明示的に与えることができた。そこから、一方の分布をもう一方の分布の逆分布として、多重母関数の陽な形によって表現することが可能となり、その結果、考察可能な分布族の幅の拡大へとつなげることができた。工学的な応用として、連および、スキャンの待ち時間問題を考察し、それによって、各コンポーネントが格子状に配置した場合の信頼性工学モデル(2 dimensional consecutive system, moving window detection) の信頼度を厳密に求めた。そして、古典的な確率問題(誕生日問題, クーポン集めの問題, 占有の問題)を single player problem から multiple players problem へと拡張し、いくつかの数値計算結果を与え、比較を行った。 また、二変量試行列上において確率分布を導出するには、大規模な計算が伴う。そこで、多重母関数を効率良く展開し、確率関数を導出するためのアルゴリズムを開発し、実行可能性を示すためにいくつかの数値計算結果も与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究は、主に「二変量試行列における分布の双対関係とその統計的応用」を主テーマとし,特に理論構築に重点をおいて研究をすすめてきた.多重母関数を用いた分布の双対構造の解明にはじまり,工学的応用として、連・スキャン統計量の厳密分布導出方法の提案を行った.さらには,数式処理を用いての分布導出アルゴリズム開発までを行い,予定していた内容はおおむね達成できたものと考えている. 研究開始当初は、各確率変数の取りうる値を2値({0,1}-値)系列として進めてきたが、各確率変数の取りうる値が多値({0,1,...,m}-値)系列としても考察可能であるという見通しが立ち、更なる発展性も研究過程において期待が持てるようになったのは収穫であったといえる。しかしながら,二変量試行列から多変量試行列へと次元を上げたとき、そこから派生する確率分布の導出には非常に大規模な計算が伴うため,対応困難であるという課題も浮き彫りとなった.そのために今後は,計算機上での実行可能性を意識しながら研究をすすめていく必要がある.統計的分布論の研究を,数学・統計理論,数式処理,計算機実験,数値解析といった手法を総合する形で進めることを念頭に置き,計算機上で解析可能な理論結果の導出を考えていく.理論的な結果と計算機を用いた数値的・代数的研究を接近させ,方法論を計算機上で開花させるようなアルゴリズムの開発を行うことを念頭に置き,統計的分布理論の更なる発展に貢献して行く予定でいる.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究過程において,格子状に配置された確率変数列から派生する確率分布の導出が可能であることが分かった。特に複数の単純パターンに対して、その同時分布が導出可能であるという見通しが立ったといえる。そこで、今年度以降は,格子状モデルからより一般的な非線形モデルへと舞台を移す予定でいる。応用的に特に重要である有向木上での同時分布導出方法提案を計画している.有向木上での分布理論展開には,大規模な計算が伴うので,数式処理システムを用いたシンボリックな計算および数値計算も多用しながら進めていく予定でいる. それらの理論結果によって,より柔軟なモデリングが可能になり,工学的応用問題の解決につながることが期待できる.たとえば,従来の信頼性工学では,システム故障の基準として単一基準を用いて考察されることが多かったが、複数の基準を採用したシステムを考察し、その信頼性の評価方法を提案したい。さらには,システム上での様々な統計的推測問題を考察する.様々なタイプのデータに基づいての故障率の推定や,各コンポーネントに種々の寿命分布(指数分布,ワイブル分布,パレート分布)を仮定した連続時間モデルにおけるパラメータ推定を行う.また,種々の寿命分布を仮定した信頼性モデルにおいて,情報量基準を用いてのモデル選択問題を扱う.尤度比を用いた統計的仮説検定問題もあわせて考察する.この研究に見通しが立てば,非線形構造を持った (n,f,k) system の信頼度の厳密な計算への展開に期待が持てる.応用分野を拡充することで,あらたな理論展開へと発展させ,理論面と応用面とで好循環を生み出す可能性があると考えている.
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Research Products
(5 results)