2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540142
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
只木 孝太郎 中央大学, 研究開発機構, 機構准教授 (70407881)
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Keywords | アルゴリズム的情報理論 / アルゴリズム的ランダムネス / 統計力学 / partial randomness / 相転移 / ChaitinのΩ / 不動点 / ランダムネス |
Research Abstract |
これまでの研究で私は、アルゴリズム的情報理論と統計力学を密接に関係付ける「アルゴリズム的情報理論の統計力学的解釈」を創始した。現在、私は、それに基づいて、新しい科学を創設しようと試みている。当該研究課題は、この全体構想の実現のための一環である。 平成25年度は、平成24年度の研究成果として得られた、アルゴリズム的情報理論におけるルジャンドル変換の持つ数学的意味についての理解に基づいて、アルゴリズム的情報理論における解析的手法の一般的枠組みの構築に着手した。そして圧縮率に関する不動点定理に解析的手法を投入し、不動点に関する理解を深め、その成果を、平成25年9月に中国・広州で開催された国際会議The 13th Asian Logic Conference (ALC2013)で発表した(招待講演)。 更に、温度T=1における1方向性から2方向性への相転移現象を理解するために、新たに、strong predictabilityの概念を導入し、その性質を詳細に調べた。その結果、温度T=1における相転移現象の数学的及び計算論的内容について、予想外の深い理解を得ることができ、相転移現象の数学的な機構の解明が進んだ。その成果は国際会議Unconventional Computation & Natural Computation 2014 (UCNC 2014)において受理され、平成26年7月にカナダのUniversity of Western Ontarioでの発表が確定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、平成24年度の研究成果として得られた、アルゴリズム的情報理論におけるルジャンドル変換の持つ数学的意味についての理解に基づいて、アルゴリズム的情報理論における解析的手法の一般的枠組みの構築に着手した。そして圧縮率に関する不動点定理に解析的手法を投入し、不動点に関する理解を深めた。 更に、温度T=1における1方向性から2方向性への相転移現象を理解するために、新たに、strong predictabilityの概念を導入し、その性質を詳細に調べた。その結果、温度T=1における相転移現象の数学的及び計算論的内容について、予想外の深い理解を得ることができ、相転移現象の数学的な機構の解明が進んだ。 そして、前者の成果は、平成25年9月に中国・広州で開催された国際会議The 13th Asian Logic Conference (ALC2013)で発表した。これは海外の研究者との深い交流に基づく、招待講演であった。また、後者の成果は、国際会議Unconventional Computation & Natural Computation 2014 (UCNC 2014)において受理され、平成26年7月にカナダのUniversity of Western Ontarioでの発表が確定している。このように当該研究課題に関しては、海外での成果発表を確実に行い、海外の研究者との交流も順調に進んでいる。 従って、現在までの当該研究課題の実施内容は、交付申請書にほぼ記載の通りであり、研究実施計画に対する、現在までの当該研究課題の達成度は、「おおむね順調に進展している。」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成25年度までに得られた、アルゴリズム的情報理論の統計力学的解釈におけるルジャンソル変換の役割の理解と、当該研究で導入されたstrong predictabilityなどの概念に基づく、相転移現象についての数学的な理解を統合し、相転移現象の計算論的内容と物理的な意義を明らかにする。その上で、当該研究課題の成果に基づいて、アルゴリズム的情報理論の統計力学的解釈について、当該研究課題以降の具体的研究計画を策定し、将来の発展につなげる。 特に、今後は、当該研究成果について、海外及び国内で積極的に発表を行い、海外の研究者との交流を更に深める。 研究代表者は、平成26年6月にシンガポールのNational University of Singaporeで開催されるアルゴリズム的情報理論の国際会議Ninth International Conference on Computability, Complexity and Randomness (CCR 2014)、及びそれを中核として6月一杯実施される同大学の国際共同研究プログラム"Algorithmic Randomness"に招待されている。更に、平成26年9月に国立情報学研究所が湘南国際村センターで開催するアルゴリズム的情報理論の国際会議NII Shonan Meeting on "Algorithmic Randomness and Complexity"にも招待されている。共に世界のアルゴリズム的情報理論の研究者が一同に会する国際会議であるが、これらの国際会議および国際共同研究プログラムへの参加の機会を利用して、海外の研究者との交流を深めつつ、当該研究課題を推進し、また、海外の研究者に対して、当該研究成果の発表及び周知を積極的に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究実施初年度の平成24年度において、数学基礎論サマースクール 2012の開催、Elena Calude博士の中央大学への招聘、ニュージーランド・オークランド大学への滞在など、他の研究者との研究交流が著しく進んだ。その結果、平成25年度は、直接対面しての研究交流の必要性などが当初計画より減少した。一方、最終年度の平成26年度においては、当該研究の成果を海外及び国内で積極的に発表する必要があり、研究費は有限であることから、その貴重な研究費を出張旅費として平成26年度まで温存するために、次年度使用額が発生した。 当該研究成果の海外及び国内での積極的な発表のため、主に出張旅費として使用する計画である。
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