2012 Fiscal Year Research-status Report
多元分割表解析における対称性のモデリングと尺度の分解
Project/Area Number |
24540145
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
富澤 貞男 東京理科大学, 理工学部, 教授 (50188778)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分割表解析(全ての国) |
Research Abstract |
本年度は,具体的に得られた研究成果は主として次の点が上げられる: (1)2元あるいは多元分割表で種々の対称性(非対称性)に関するモデルを提案した.例えば,Bowker(1948)の対称モデルを拡張したモデルとしてMcCullgh(1978)のパリンドロミック対称モデルがあるが,本研究ではそれらのモデルを含む一般化したパリンドロミック対称モデルを提案した.(2)正方分割表においていくつかの対称性(非対称性)のモデルの2つ(あるいは2つ以上)のモデルへの分解を提案した.たとえば,対称モデルが成り立つための必要十分条件は,パリンドロミック対称モデルと周辺平均一致モデル,累積部分対称モデルが成り立つことである,という定理を与えた. (3)対称性のモデルの分解において,また,適合度検定統計量に関しても直交するような分解も与えた. (4)正方分割表において対称性(非対称性)のモデルからの隔たりを測る尺度を提案した.例えば,行周辺分布と列周辺分布の同等性からの隔たりを測る尺度を提案した.(5)分割表解析は離散型多変量解析であるが,連続型多変量解析として,多変量確率密度関数に関しての対称な確率密度関数を提案し,対称確率密度関数の分解を与えた.なお,それらは一般論と具体的な確率密度関数の両方に対して与えた.(6)2元あるいは多元分割表において,予測誤差に関する比例縮小度を測る尺度を与えた.例えば2元分割表において,目的変数Yを予測するのに,説明変数Xの値を知らなかったときよりも知ったときの方が,予測誤差がどれくらい縮小するのかを測る尺度を順序カテゴリの場合に提案した. これらの研究成果は,従来の推定法,検定法,モデル選択法などに加えて,モデルの分解と尺度の分解などに基づく新しい分割表解析法を提案しており,本研究は大きな貢献ををしていると言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の交付申請書に記載した研究目的は以下のように複数ある.順に自己点検をしてみる: (1)多元分割表解析において,種々の対称性や非対称性を述べるセル確率に関する一般的な対称性のモデルのクラス(GSと記す)を導入し,更に分割表の内部の確率構造に関する一般的な(たとえばオッズ比に基づく)準対称モデル(GQSと記す)と周辺確率に関する一般的周辺対称モデル(GMと記す)のクラスを導入すること,特に「GSモデルが成り立つ必要十分条件は,GQSモデルとGMモデルの両方が同時に成り立つことである」という分解定理を考える;ということに関しては,大きなモデルのクラスを考えるのはまだ満足出来るものは出来ていないが,しかし,従来のモデルや分解の拡張は提案でき,ある程度目的は達成できたと考えられる. (2)多元分割表で,一般的対称性,非対称性モデルからの隔たりを測る尺度とその分解を考える;に関しては具体的モデル,例えば周辺同等モデルからの隔たりを測る尺度は提案できた.よってある程度目的は達成できたと考えられる. (3)多元分割表で,GSモデルのGQSモデルとGMモデルへの分解を導入する際,グラフィカルモデリングとの関係を考える;に関しては,まだ満足できる研究成果は得られていないが,現在進行中である. (4)多元分割表で,幾何学的アプローチから対称性のモデルの直交性を考える;に関しては,本研究で検定統計量の直交性に関する研究成果を得ることが出来た.しかし,幾何学的観点からは満足できる研究成果はまだ得られていないが,現在進行中である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた研究をさらに発展させること,また,まだ十分研究成果が得られてないものについては目的達成に向けて取り組む予定である:具体的には, (1)2元あるいは多元分割表で種々の対称性(非対称性)に関するこれまでのモデルを含む一般的な対称モデルを考える. (2)一般的な対称モデルの分解を考える. (3)モデルの直交性を考える.特に幾何学的なアプローチで考える. (4)多元分割表解析で,複数の目的変数を予測する際,複数の説明変数を用いた方が用いないときよりもどれくらい予測を改善するのかを測る妥当な尺度の提案に取り組む. (5)多変量密度関数の対称性あるいは非対称性に関して,これまでとは異なるタイプの概念を導入し,その分解を考える.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度と同様に平成25年度の研究を進める.そのためには,関連する図書を必要とする.さらに,それに関連する種々の応用分野における最近の図書を購入する必要がある.また,データを収集する必要があり,収集するための依頼,打ち合わせをするための旅費,そして資料整理に対する謝金が必要である.またデータに統計モデルをあてはめ解析するために,計算機を使用する.このため,パソコン消耗品等が必要である. また,本研究を達成するためには,引き続き,統計モデルや尺度等を扱ったパソコン用統計ソフトを購入する必要がある.統計ソフトの購入目的は,良く知られた統計ソフトに入っている関連する解析法と本研究者が開発する尺度等に関連する統計解析手法との性能などの比較をする必要があるからである. 更に,他の研究機関所属の研究者との通信,及び結果の学会,シンポジウムでの発表,学術雑誌への公表のために,それぞれ通信費,交通費,研究発表旅費,消耗品(論文の別刷り,文房具,など)が必要である.
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