2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540154
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
新井 朝雄 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80134807)
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Keywords | 漸近的摂動論 / 量子場 / フォック空間 / 基底状態 / 超対称性 / 汎関数積分 / 分配関数 / ゴールデン・トンプソン不等式 |
Research Abstract |
荷電物質量子場または荷電量子的粒子は量子電磁場と相互作用を行うことにより、種々の興味深い現象を引き起こす。量子電磁場の特徴の一つは、その量子(光子)が質量をもたないことである。一般に、その量子の質量が0である量子場は質量0の量子場と呼ばれる。この型の量子場の解析は、質量が0でない量子場の解析に比べて難しい側面が存在する。いわゆる「赤外発散」の問題はそのような側面の一つである。近年、質量0の量子場の数学的に厳密な解析に関して大きな進展があったが、なおも未解決の問題も多い。その一つが量子場のエネルギー作用素(ハミルトニアン)に関わる摂動論の問題である。通常の摂動論では、考察する無摂動固有値は、多重度が有限な孤立固有値であることが仮定される。他方、質量0の量子場が関与する理論においては、この仮定は満たされない。本研究では、無摂動作用素の固有値が孤立固有値ではない場合にも適用される新しい漸近的摂動論を構築した。その応用の一つとして、一般化されたスピンボソンモデル(任意の量子系とボース場が相互作用する系のモデル)の基底状態エネルギーが結合定数に関して任意のオーダーまで漸近展開されることを証明した。 もう一つの関連する主題として、超対称的量子場の理論の新しい数学的研究のための予備的な考察を行った。有限個のボソンと有限個のフェルミオンが相互作用を行う系を考え、その有限温度の熱平衡状態における物理量の期待値に対して汎関数積分表示を導出した。特に、分配関数に対する、改良された(ある意味で最良の)ゴールデンートンプソン型不等式を確立した。超対称的量子力学への応用として、ウィッテン指数に対する汎関数積分表示を導いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい独創的な成果がいくつか得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)上記の新しい漸近的摂動論では、無摂動作用素の固有値が縮退していない場合だけが論じられている。次の課題の一つとして、無摂動作用素が縮退している場合へと理論を拡張することがある。 (2)上記のボソンーフェルミオン系を無限自由度のボソンーフェルミオン系に拡張する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた海外出張を取りやめたため、余剰金が出た。 図書の購入に使用予定。
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Research Products
(8 results)