Project/Area Number |
24540162
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田島 慎一 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70155076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小原 功任 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (00313635)
鍋島 克輔 徳島大学, ソシオアーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (00572629)
中村 弥生 近畿大学, 理工学部, 准教授 (60388494)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
複素解析と計算代数解析の観点から, 対数的ベクトル場および複素解析的特異点に関する研究を行った. 田島・鍋島が共同で, 擬斉次孤立特異点の変形として得られる半擬斉次孤立特異点族に対するTjurina数を研究し, パラメータ付代数的局所コホモロジーを用いることで変形パラメータ空間のTjurina stratificationおよび対応するイデアル商のstandard基底を求めるアルゴリズムを導出・実装した. 田島・中村の計算法を改良することで得たこの方法は, 既存の計算法に比べ, 計算効率が良い. 孤立特異点を持つ超曲面に沿う対数的ベクトル場を研究し, 対数的ベクトル場の構造を決定し, 具体的に構成する方法を確立した. さらに, 田島・鍋島が共同で, 特異点の定義方程式がパラメータを含む場合に上記の方法を拡張することが可能であることを示した. これらの結果は本研究を遂行する上で重要である. ニュートン非退化な孤立特異点に付随する代数的局所コホモロジーの研究を行い, ニュートンフィルトレーションと両立する基底コホモロジー類を構成する新たな計算方法の基礎となる結果を得た. また, この結果の応用として, ミルナー数に関する Kouchnirenko の公式に対し簡明な解釈を与えることに成功した. 田島・小原・照井が共同で, 有理数あるいは整数を成分に持つ正方行列に対する固有値問題を数式処理システム上exactに扱う計算法について研究を行った. 行列の各基本ベクトルに対する最少消去多項式をすべて同時に求める並列算法を確立した. さらにこれら基本最少消去多項式を用いることで, 与えられた固有値に対する一般固有ベクトル空間の構造, 即ち, ジョルダン細胞のサイズと個数を求める新たな計算法を導出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Tjurina数は, 特異点の最も重要な複素解析的不変量であり, $\mu$-constant 変形に対するTjurina数の変形パラメータ依存性を効率的に求める計算アルゴリズムを計算機上に実装したことは, 本研究を遂行する上で重要である. ニュートン非退化な特異点を計算機代数解析の観点から研究するための基本的枠組みを作ることができたのは, 評価できる. ニュートン非退化な特異点に関する研究をさらに進めることにより, 本研究で実際に扱う研究対象を大きく広げることが可能となる. 昨年の11月に東京農工大で開催された国際研究集会に参加した際に, ロシアのアレクサンドロフ教授と対数的ベクトル場に関し研究討議を行い, 本研究に関連した新たな知見を得ることができたことは研究上有意義であり, 効果が期待できる. 九州大学の渋田敬史氏と, 平面曲線に付随して定義されるある種のホロノミーD-加群の構造に関する研究を共同で行うための準備を整えることができた. 渋田氏との共同研究を本格化させることで, 特異点に付随するホロノミーD-加群に関し新たな研究を進めることが可能となる. 本研究では, 数式処理システムを用いた並列計算を行うことが必要となる. 所属する数学教室の予算で, 16コア, 128GBの計算機が購入され, 計算機利用に向け準備がなされはじめている. この計算機の並列計算機能を用いて, 並列計算による実験, 並列計算アルゴリズムの開発・性能評価等を行う準備を整えることができる.
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Strategy for Future Research Activity |
擬斉次孤立特異点の変形として得られる半擬斉次孤立特異点族に対し, 対応するホロノミーD-加群の構造を研究する. これにより特異点変形に付随するホロノミーD-加群の変形理論の研究を進める. ニュートンフィルトレーションの専門家である福井氏(埼玉大)と研究連絡を取り, ニュートン非退化な孤立特異点に対する代数的局所コホモロジー類を構成するアルゴリズムを完成させる. セビリア大学(スペイン)のCastro教授と対数的ベクトル場に関し研究討議を行う. さらに鍋島氏との共同研究をすすめ, 対数的ベクトル場を構成するプログラムを作成し数式処理システムRisa/Asirへの実装を行う. これにより, 対数的ベクトル場に関する研究を行う際の計算機実験の準備を整える. 対数的ベクトル場とBruce-Robertミルナー数に関する研究を進める. Bruce-Robertミルナー数に関しては, ブラジルの特異点研究者が興味深い研究を行っている. 11月に京都大学数理解析研究所において開催される特異点の研究集会に参加し, 研究討議を行う. 小原氏との共同研究をすすめ, 行列の一般固有ベクトル空間の構造を求める計算アルゴリズムを構成し, 数式処理システムに試作したプログラムを実装し計算効率のよいアルゴリズムの導出, 開発を行う. この研究と並行してアルゴリズムの並列化を行い, 一般固有ベクトル空間の構造を求める並列計算法の研究・開発を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度末に予定していた徳島大学への出張を25年度に延期, 実施することとなった. 本研究に必要な特異点論, 複素解析, 計算代数関係の書籍を購入する. 特異点論, 多変数複素解析, 代数解析, 計算機代数等, 本研究と関連する研究集会に参加するため, 研究費を使用し出張する. 研究分担者, 研究協力者との研究連絡, 研究討議を行うため, 九州大学, 徳島大学, 大阪大学, 金沢大学, 埼玉大学, 北海道大学等へ出張する. これらの出張に研究費を用いる. 国外で開催される特異点に関する国際会議等に参加し, 専門家と研究討議を行うため, 研究費を使用し海外出張する.
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