2012 Fiscal Year Research-status Report
ハミルトン-ヤコビ方程式と対数型ソボレフの不等式の研究
Project/Area Number |
24540165
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
藤田 安啓 富山大学, その他の研究科, 教授 (10209067)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 対数型ソボレフの不等式「国際研究者交流」フランス |
Research Abstract |
今年度の研究で、p放物方程式の解の超縮小性が対数型ソボレフの不等式に同値であることを示した。当初の予定では、本科学研究費の課題にもなっているハミルトン-ヤコビ方程式の解の超縮小性と対数型ソボレフの不等式の同値性の拡張を考えていたのだが、今年度は新たな方程式としてp放物方程式を加えることができた。p放物型方程式は熱方程式の微分の階数を2と捉えたとき、これを一般の微分の階数pへと拡張したものである。このことについては、現在論文にまとめている最中である。また、現在知られているハミルトン-ヤコビ方程式を用いた対数型ソボレフの不等式の証明に不備があることを指摘して、その完全な証明を与えた。現在知られている証明は、非常に特別な場合のみの証明になっており、完全な証明のために数々の近似を用いてその証明を行った。この証明については既に論文にまとめ投稿済みである。 これらの研究成果を今年度は、九州関数方程式セミナー、熊本大学応用解析セミナーおよび 神戸大学海事科学部で開かれた国際研究会 Partial Differential Equations Fukae Work Shop で講演を行い、関連する研究者らの意見を頂いた。これらの意見は貴重なもので、研究のさらなる発展へと繋がっている。 一方、今年度は国内各地で開かれた研究集会に出席して、多くの関連する講演を聞き、研究者たちと討論を重ねた。また関連する国内の研究者を訪問し意見交換を行った。さらに、対数型ソボレフの不等式に関する世界的な権威であるフランスの Ivan Gentil 教授を訪問して意見交換を行った。この意見交換は大変有意義なものであり、彼とは現在も意見の交換を行っている。今年度 Gentil 教授は私のもとを秋に研究訪問する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度「研究の目的」に書いたことについては、ほぼ満足のいく形で達成されたと考えている。その理由は、「研究の目的」であげたひとつである”ハミルトン-ヤコビ方程式の解が超縮小性を持つことを示す”ことが順調に達成できたばかりでなく、当初は全く予定していなかったp放物方程式の解の超縮小性が対数型ソボレフの不等式に同値であることを示すことができたからである。これは、ハミルトン-ヤコビ方程式とp放物方程式の解が持つある共通の構造を見抜き、その構造に基づき対数型ソボレフの不等式との同値性を考えた結果である。 これらのことについては、現在論文にまとめている最中である。また、現在知られているハミルトン-ヤコビ方程式を用いた対数型ソボレフの不等式の証明に不備があることを指摘して、その完全な証明を与えた。現在知られている証明は非常に特別な場合のみの証明になっており、完全な証明のために数々の近似を用いて証明を行った。この証明については既に論文にまとめ投稿済みである。 一方、昨年度の末に確率制御理論の研究者たちと交流する機会があり、そこに対数型ソボレフの不等式を適用するという新たな可能性への道も開けた。このことについては、確率制御理論の勉強を行いつつ、新たな結果を求めて現在研究進行中である。このような状況を鑑みて、新たな論文は出ていないが、現在論文投稿中であるとともに、現在まとめている論文があり、さらに新たな方向性が見えてきたこともあり、現在までの研究が十分実りあるものであったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、対数型ソボレフの不等式を用いて、エルゴード制御問題の解を扱って行きたい。エルゴード制御問題は、確率制御問題の一つとして現れ、偏微分方程式論の観点からは非線形2階の楕円型方程式および非線形2階の放物型方程式の解の性質を調べることに帰着する。 ここでは、粘性解理論と対数型ソボレフの不等式を使って、ある確率制御問題の値関数が時刻無限大で上のエルゴード制御問題の解に漸近していく様子を、量的に表す評価式を与えたい。具体的には、この漸近を表わす解の集約を表わす不等式を示したい。ここで重要な役割を果たすのが対数型ソボレフの不等式である。また、この集約の適切な例を与えることにより、この集約のより良い理解を得られるようにしたい。また、この集約の応用として、ファイナンスへの応用が可能かどうかを考えていきたい。 このために重要になってくるのは、偏微分方程式論の研究者たちばかりでなく、確率制御理論の研究者たちとも広く交わって、確率制御理論のより良い理解を深めていくことである。具体的には、このエルゴード制御に現れる不変測度の種々の適切な評価を得ることだと考える。これが、上記の集約を表わす不等式を厳密に証明する際に重要になってくる。一方、研究科題名にもあげたハミルトン-ヤコビ方程式に関しては、昨年度得られた結果をきちんとまとめ上げて論文として投稿するとともに、関連する学会や研究会で発表して行きたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内外の偏微分方程式論の研究者たちばかりでなく、確率制御理論の研究者たちとも広く交わって、確率制御理論のより良い理解を深めたい。一方、昨年度得られた結果をきちんとまとめ上げて論文として投稿するとともに、関連する学会や研究会で発表して行きたい。 そのために関連する研究会への出席はもとより、多くの研究者を訪問して意見を交わしたい。また、研究会や学会で多く発表することにより、他の研究者の方たちの意見を拝聴したい。さらに、今年度はローマ大学に Antonio Siconolfi 教授を訪問してハミルトン-ヤコビ方程式の解の超縮小性に関する意見を聞いてきたい。彼はハミルトン-ヤコビ方程式の研究に関する第1人者であるばかりか解析学の広い範囲に深い洞察力を持っている。さらに、対数型ソボレフの不等式に関する世界的な権威であるフランスの Ivan Gentil 教授を訪問して意見交換を行いたい。彼は、今年度 私のもとを秋に研究訪問する予定であるが、冬にでももう一度彼を訪問して対数型ソボレフの不等式への深い意見を聞いてきたい。 このように、今年度も研究費は旅費と関連する図書の購入、それと文房具などの消耗品の購入で使って行きたいと考えている。
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Research Products
(5 results)