2013 Fiscal Year Research-status Report
ハミルトン-ヤコビ方程式と対数型ソボレフの不等式の研究
Project/Area Number |
24540165
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
藤田 安啓 富山大学, 理工学研究部, 教授 (10209067)
|
Keywords | 対数型 Sobolev の不等式 / Hamilton-Jacobi 方程式 / 解の正則化 / Harnack の不等式 |
Research Abstract |
今年度は、前年までの研究成果を論文として纏めた。また、これからの研究成果の纏めへ向かい、必要な準備及び研究の現時点までの総括を行った。 まず、前年までの研究成果をまとめた論文を Journal of Mathematical Analysis and Applications に投稿の上、受理され 2013 年度に論文として発表した。この論文では、研究課題目にもなっている対数型 Sobolev の不等式について、いつ等号が成立するかを Laplace 変換の手法と漸近公式を使って明らかにした。この不等式における等号成立条件については、私の前の論文 An optimal logarithmic Sobolev inequality with Lipschitz constants(Journal of Functional Analysis 261 (2011), 1133-1144)を投稿した際にも、レフェリーから質問されていたことであり、この 2011 年発表の論文の中にも「いつ等号が成立するかは分かっていない」と書いていたものであった。この疑問に対して、ほぼ満足のいく形で等号成立条件を明らかにすることができたので、これは論文の継続性という観点からも大いなる進歩と言ってよいと思う。 次に、これからの研究成果の纏めへ向かい、必要な準備及び研究の現時点までの総括についてである。2013 年に発表された上記の論文で、研究の半分は満足のいく形で仕上がりつつあるが、Hamilton-Jacobi 方程式との関連で言えば、この方程式の解が Lipschitz 正則効果を極めて緩やかな条件の下で持つことは示せた。これは、次の論文への端緒となる結果と言ってよいと思う。しかし、対数型 Sobolev の不等式の関連はもちろん、解の正則化のさらなる精密化およびや解がいつ Harnack の不等式をみたすかどうかについてはまだ不明な点もいくつかある。対数型 Sobolev の不等式に関して、ほぼ満足の行く結果を得たので、今後は力点を Hamilton-jacobi 方程式へシフトとして研究の纏めへと繋げて行くようにしたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、研究課題名にもなっている対数型 Sobolev の不等式については、当初の計画以上に進歩している。この根拠として、「研究の目的」でもある『対数型Sobolev の不等式を用いて、Hamilton-Jacobi 方程式の解が超縮小性を持つことを明らかにする』際に重要である問題「いつ対数型 Sobolev の不等式について等号が成立するか?」に満足の行く答えを与えることができたからである。より具体的にいうと、前年までの研究成果をまとめた論文 Lipschitz constants and logarithmic Sobolev inequality の中で、 Laplace 変換の手法と漸近公式を使って、等号が成立するための条件を明らかにして、具体的な例に対しては等号の成立の有無を示すことができた。これは、Journal of Mathematical Analysis and Applications に投稿の上、受理され 2013 年度に論文として発表された。 次に、「研究の目的」で挙げたもう一つの目的である『Hamilton-Jacobi 方程式の解が Lipschitz 正則効果を持つこと示す』については、この解が Lipschitz 正則効果を持つ十分条件を極めて緩い形で与えることはできたが、これのみで論文にするのは難しそうである。そこで、解の正則性の新たな評価として、Hamilton-Jacobi 方程式に対しての Harnack の不等式を考えている。Harnack の不等式は、楕円型方程式や放物型方程式に対しては成立が良く知られているが、Hamilton-Jacobi 方程式に対してのそれは全く知られていないといってよい。しかし、この解の Lipschitz 正則効果を見ると、似た形の Harnack 不等式が成り立ち、解の正則性の良い評価を与えることがほぼわかってきた。 これらのことを明らかにして研究の纏めへと繋げて行きたい。Hamilton-Jacobi 方程式に関する事柄は、まだ発展途上と考えているので、上の対数型 Sobolev の不等式に関する事柄と合わせて「おおむね順調に進展している」を選んでみた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、まず、Hamilton-Jacobi 方程式の解の正則性をより詳しく調べることがある。具体的なアイデアとしては、解に対する Harnack の不等式を示すことが考えられる。通常、Harnack の不等式は楕円型および放物型方程式に対して考えられるものであるが、その有効性は解析学ではよく知られている。今後はこの不等式をHamilton-Jacobi 方程式の解に対して示そうと考えている。また、この結果として、解の Holder 連続性を示すことや解に対する新たな強最大値原理を導きたい。 しかしながら、この Holder 連続性から Lipschiz 連続性まで示すことができるかはまだ疑問である。ただ、Lipschitz 連続性が導かれれば、Journal of Mathematical Analysis and Applications と Journal of Functional Analysis で発表した私の論文の結果が使えて、解の超縮小性を示すことができる。Holder 連続性の時はどうなるかは現段階では不明であるが、解の Holder 連続性が示せた場合は上記論文の結果を Holder 連続性に対する超縮小性の結果に拡張してでも新たな対数型Sobolevの不等式に関する結果を導きたい。 一方、Harnack の不等式に対しては、放物型方程式の場合の「非負解がある点でゼロになればある領域で恒等的にゼロである」に対応する結果を導きたい。これらの結果は、大変強力であり、解のある種の評価に関しては本質的なものになると考えられる。このような背景を持って、Harnack の不等式の導出に全力を尽くしたい。 上記2つの部分において、これらを推進するための方策としては、私個人の勉強はもとより、研究会などへの出席・発表や他の研究者の訪問などが挙げられる。さらに、業務の合間を上手く活用して外国の研究者を訪問して、研究を深めることも考えている。また、必要な図書や備品の購入を試みて、研究を推進するのにふさわしい環境を整えたい。
|
Research Products
(4 results)