2015 Fiscal Year Annual Research Report
ボーズ・アインシュタイン凝縮の作用素値確率変数を用いたアプローチ
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24540168
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田村 博志 金沢大学, 機械工学系, 教授 (80188440)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 量子力学系 / 反復摂動 / 開放系の統計力学 / 国際研究者交流 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
連続系の量子統計力学の数学的モデルに関する研究を発展させるための、ボーズ-アインシュタイン凝縮(BEC)の量子統計力学が本研究の中心課題であったが、手詰まりな状況となった。 これとは別に、交付申請書の「研究の目的」に副次的に挙げた研究テーマである非平衡統計力学の研究として行った、空洞内を通る原子列をモデル化した理論の研究が進展し、3編の論文として出版された。この理論は、物理系の非平衡定常状態への緩和を調べることなどを目的に、近年盛んに研究されている。本研究では、現実性を多少犠牲にしても、様々な物理量を具体的に計算できるモデルを提示し、その性質を列挙することがこの分野の研究の進展に寄与すると考え、調和振動子の列が、特定の一つの振動子と一つづつ次々と相互作用するモデルを提示した。先ず、外部の熱浴と相互作用しない場合を扱い局所エントロピーや状態の漸近挙動を与える一種の中心極限定理などを導いた。次に、熱浴との相互作用を想定した開放系としての時間発展を記述する、Kossakowski-Lindblad-Davies 型の作用素に対応する密度行列の発展方程式を考えた。この種の議論においては、その解を強連続半群を用いて表すことが可能かどうかがまず問題となるが、我々のモデルにおいては、上に設定したKLD型作用素の閉包が実際に強連続半群の生成作用素となることを示すことに成功した。 特に最終年度においてはさらに、開放系の場合の時間発展において空洞を含む大きな部分系にたいする縮約密度行列が、相互作用しないという意味での自由な時間発展に漸近的に近づくことを示した。同様の多くの研究においては、空洞のみを部分系とみてその漸近的挙動を扱っているが、それをより大きな部分系における結果に拡張できた点に、我々のモデルの設定が生かされた、と考える。
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Research Products
(6 results)