2013 Fiscal Year Research-status Report
Dirichlet形式が定める対称拡散過程の局所構造と付随するノイズの研究
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24540170
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
日野 正訓 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40303888)
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Keywords | ディリクレ形式 / 確率解析 / ノイズ / 無限次元空間 / フラクタル / 拡散過程 |
Research Abstract |
本年度は主にウィナー空間上の有界変動関数の理論展開に関する研究を行った.具体的には,ディリクレ形式の理論を参考にして局所有界変動の概念を定式化し,ウィナー空間上の局所有界変動関数がヒルベルト空間値測度を超関数微分として持つこと,およびその関数に対応するディリクレ形式が考えられるとき,付随する拡散過程がSkorokhod表現を持つことを示した.これは従前研究されていた有界変動関数の場合と同様な性質である.更に古典ウィナー空間において典型的な指示関数が局所有界変動であるかという問題を考察し,以前研究した有界変動となるための十分条件より真に弱い十分条件を与えた.これは無限次元空間における確率解析の研究において局所有界変動という概念が有効であることを表わすとともに,無限次元空間におけるSkorokhod表現を通じた拡散過程のノイズの研究に向けた有用な結果であると考えられる.従前,無限次元空間における反射壁拡散過程の構成は確率偏微分方程式やランダムウォークのスケール極限等によるものが主であったが,制約条件が強いという難点があった.有界変動関数とディリクレ形式を用いた手法はこれらに代わる有力なアプローチであることが期待される.以上の研究成果については論文を執筆し,掲載が決定済である. また,前年度執筆したフラクタル上の2種類の距離の関係についての論文は本年度改稿を行い,論文誌に掲載が決定された.更に,前年度投稿したディリクレ形式の指数に関する論説については,本年度原稿を修正の上,学会誌に掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ディリクレ形式が定める拡散過程の局所構造とノイズの研究というテーマに関して,ウィナー空間上の拡散過程のSkorokhod表現を与えることにより性質を調べるという切り口で,局所有界変動関数の概念が有用であることを明らかにした.これは本研究の目的に沿った研究成果であり,今後この方向で更に研究の進展が望めると考えられるため,研究はおおむね順調に進展しているという判断に至った.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究は局所有界変動関数の一般論と具体例の研究であった.この方向性の研究では,ウィナー空間をより一般の無限次元空間に拡張すること,指示関数が局所有界変動であるためのより弱い十分条件を見つけること,付随する拡散過程を2パラメータの確率過程と見なしたとき満足する確率偏微分方程式を求めること,などのテーマが今後考察すべき問題として自然に考えられる.これらについて研究を進めたい. また,昨年度主に研究していたフラクタル上の拡散過程のノイズに関する研究についても,マルチンゲール次元より詳しい指標の研究,マルチンゲール次元が関与すると考えられる問題への応用など,幾つか課題があるため,平行して研究を進める予定である.
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Research Products
(8 results)