2012 Fiscal Year Research-status Report
等質開凸錐と等質実ジーゲル領域の代数構造と幾何学的調和解析
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24540177
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野村 隆昭 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (30135511)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 等質錐 / 対称錐 / 等質ジーゲル領域 / 基本相対不変式 / クラン / ジョルダン代数 |
Research Abstract |
等質開凸錐と等質実ジーゲル領域の代数構造と幾何学について詳細な研究を行った.具体的には,対称錐に付随する代数構造であるEuclid型Jordan代数 V の表現から出発して(その表現空間を E とする),ベクトル空間の直和 E + V にクランと呼ばれる代数構造を定義した.E が零空間でない限り,このクランは単位元を持たない.対応する凸領域は,出発点のJordan 代数に付随する対称錐をベースとする等質実ジーゲル領域である.得られているクランに単位元を添加して,単位元を持つクラン C を得る.このクランにおける基本相対不変式を,V の基本相対不変式であるJordan 代数版の首座小行列式と,表現に付随する対称双線型形式を用いて記述した.また C の双対クランも研究し,同様に基本相対不変式を記述した.これらの手法は対称錐ではない等質開凸錐で豊かな幾何構造を持つものを体系的に生み出すものであり,大変意義深い研究成果である.伊師英之氏との共著で2008年に出版した論文中の例の一般化が得られたことにもなっている. 以上の成果は,2012年5月の Chinese University of Hong Kong,同9月のチェコの Brno University of Technology ,10月のフランス Luminy,CIRM での国際研究集会で報告した.本科学研究費から外国旅費として支出したのは,この3件の国際研究集会への出席と研究発表のためのものである.9月と10月の研究発表では,本研究費で購入したノートパソコンを用いてプレゼンテーションを行った.研究発表の内容には幾何学的な内容が含まれており,それを聴衆にわかりやすく説明するために研究発表のスライドには動画も含めたので,最新のPCが必要であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度では3回も外国で開催された国際研究集会で研究発表を行うことができ,全体としての研究の進展状況は概ね満足すべき状況であると考えている.Chinese University of Hong Kong では London のChu教授,ドイツ Tubingen 大学の Kaup 退職教授,フランス Nancy 大学の Bertram 教授,同 Marseille 大学の Iochum 教授,慶北大学校の Lim 教授らと本研究課題に関連する討論ができ,彼らからは研究発表内容に対する良い評価も得られた.そのときの議論が,9月の Brno 工科大学での研究発表,10月の CIRM での研究発表に生かされている.研究発表講演のタイトルこそ3件とも同じであるが,その内容は本研究課題の進行に合わせて徐々にではあるが発展したものになっている. 本研究費からの旅費支出で参加し研究発表を行った12月の鳥取での表現論ワークショップでは,大きな研究集会ではその詳細を発表できない技術的なことで,数学的には大変重要な事実について研究発表を行い,参加者からは大きな興味を示してもらった. 以上のことからも,本研究の進捗状況は順調であるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで研究は順調に進捗しているので,本研究課題採択時に掲げた研究の推進方策に変更はない.すなわち,興味深い,豊かな幾何学的構造を持つであろうと期待される非対称な等質開凸錐の系列を生み出す様々な手法を確立してゆく.それに加えて,平成25年度では平成24年度の代数的な研究の成果を踏まえて,解析学の方向への研究にも踏み出したいと考えている.24年度で扱った対象はいわばJordan代数の表現を通じて得られる半直積であり,そこでの解析学は,Jordan代数上の解析学,Jordan代数の表現空間上の解析学を統合するようなものになるはずである. 一方で代数的な研究としては,Jordan代数の表現をクランの表現に置き換えて,クランの表現から出発して新たにクランを得るという方法が考えられる.こちらは現在研究指導中の大学院生によって,彼の博士学位論文とすべく研究が進行中であり,結果が出つつある.その成果を踏まえた上でのさらなる研究を,本件研究課題でのプロジェクトの一つとして,共同の研究で実施して行きたいと考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度はすでにルーマニアでの国際研究集会(9月),チュニジアでの国際研究集会(12月)から招待を受けている.本研究費から外国出張旅費として支出する予定である.両国とも日本からの直行便がないので,直行便のあるヨーロッパの都市での前後泊のための滞在費も必要になるが,定宿としているエコノミー・ホテルを利用することで,経費を節減する予定である.また9月のヨーロッパ行きの航空券は高いが,低廉な運賃のものをすでに確保してあり,経費の節約に努めている. また私が日本側研究代表者となっているオランダとの二国間交流共同セミナーが採択され,8月最終週に名古屋大学で開催することになった.本研究課題とも関連する所も大きいので,その共同セミナーの補助金からの支出が難しいシニアの日本人研究者,あるいは日本滞在中のオランダ以外の外国人研究者の招聘(合計多くて2名であるが)を招待し,その旅費を本研究費から支出したいと考えている, 連携研究者である名古屋大学の伊師准教授とも連絡を密にするために,国内旅費も十分に確保したい.
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Research Products
(9 results)