2013 Fiscal Year Research-status Report
等質開凸錐と等質実ジーゲル領域の代数構造と幾何学的調和解析
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24540177
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野村 隆昭 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (30135511)
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Keywords | 等質錐 / 基本相対不変式 / 非結合的代数 / 左対称代数 / 有向グラフ |
Research Abstract |
等質開凸錐とそれに付随するクランと呼ばれる左対称代数(非結合代数の一種)の代数構造について詳細な研究を行った.また大学院生の山崎貴史と共同で,一般の等質錐を Vinberg cone 型の等質錐で実現する手法について研究を行った.前者については,2013年9月に本科研費からの旅費支給により参加した,ルーマニア・プロイェシュティでの国際研究集会「The 11th International Workshop on Differential Geometry and its Applications」において,「Basic relative invariants associated to homogeneous convex cones」という標題で講演をおこなった.また同年11月に,オランダ・ライデンのローレンツ・センターでのワークショップ「Generalizations of Symmetric Spaces」においても「Homogeneous convex cones and basic relative invariants」という標題で最新の結果を含めて講演した. 山崎貴史との共同研究では,oriented graph(有向グラフで長さ2のサイクルを持たない)を用いてより明快に一般の開凸錐が記述できることを示している.この研究については,平成25年度中に学術雑誌に投稿したが,査読者から修正を求められ,現在全面的に書き直しを行っている.内容は最初のバージョンよりも大幅な改善を施したものになりつつあり,今後の研究の発展に重要な寄与するであろう興味深い例で,従前の文献にはないものもいくつか与えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度では,外国で開かれた2件の研究集会で研究発表を行う事ができ,また広島大学に集中講義で赴いたおりに開かれた談話会においても,大学院生との共同研究や彼ら自身の研究成果をも含めた最新の研究の流れについて講演を行った.聴衆からは,研究内容の進展についてよい評価を得た.したがって,全体としての研究の進展状況は満足すべき状況であると考えている.本科研費からの旅費支給で3月に研究討議で赴いたドイツ Tuebingen 大学の Kaup 退職教授との研究討議も,今後の研究にとって実り多い議論ができた.同退職教授からも,最新の研究成果についてよい評価を得ている. 本研究費からの旅費支出で参加し研究発表を行った9月の京都での表現論ワークショップでは,平成25年10月に出版された自著の中からトピックスを選んで講演をおこなった.著書自体は微分積分学を題材にしたものであるが,そのワークショップで話した内容は,本研究課題や以前からの研究課題で研究遂行の折に得られたり考察した例で,いずれも微積分の範囲内に収まるものである. 以上のことからも,本研究の進捗状況は順調であるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで研究は順調に進捗しているので,本研究課題採択時に掲げた研究の推進方策に変更はない.すなわち,興味深い,豊かな幾何学的構造を持つであろうと期待される非対称な等質開凸錐の系列を生み出す様々な手法を確立してゆく.それに加えて,平成26年度では oriented graph を用いた等質開凸錐の構造の研究を,現在改訂中の論文を仕上げるとともに,より積極的に推進して行きたい.開凸錐が持つ様々な複雑な構造や様相が,グラフ理論における概念や用語を借りる事で,簡潔で記憶に残り易い記述方法で解明できていくと考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年8月に,日本側研究代表者として名古屋大学で開催した学術振興会「二国間交流事業日蘭共同セミナー」において,その補助金からの支給が難しいオランダ CWI 研究所の退職教授を本科研費で招聘する予定であったが,日程調整が折り合わず断念した.またチュニジアで共同主催者として組織した12月開催の研究集会も,他経費からの旅費支給が可能となり,結果として本科研費に余裕が出る事となったが,無理に年度内に消費する事は避けた.新たにグラフ理論関係の最新の書物も研究遂行上購入したいので,次年度の方が有効に予算が使えると判断した.新年度の5月にクレルモン・フェラン大学に Dominique Manchon 教授を訪ねて研究討議を行う.新年度は学内委員も少し楽になり,国内外の研究集会での研究発表・参加も比較的融通がきくと思われるので,予算がより有効に活用でき,研究のさらなる進展が期待できる. フランス・ロレーヌ大学の Jean Ludwig 教授や,同国ランス大学の Micael Pevzner 教授を訪ねて,研究討議やセミナー講演の予定をしており,上述した Manchon 教授との討議にも使用予定があるので,新年度だけの予算では,国内の出張費や図書の購入迄余裕がないと想定されるので,大いに活用したい.
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Research Products
(8 results)