2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540183
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Future University-Hakodate |
Principal Investigator |
高村 博之 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (40241781)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流、イタリア / 国際研究者交流、中国 |
Research Abstract |
高次元非線形波動方程式の初期値問題で、小さな初期値に対して爆発古典解が存在するのは空間4次元で2次の非線形項をもつ場合だけである。それは未知関数の2乗というシンプルな形の方程式であり、2011年に報告者と研究協力者の若狭恭平によって、最適時間以降の解の非存在定理が確立された。今年度はその結果に関連した外部初期境界値問題を中心に行う予定であったが、予想外に初期値問題に付随する研究成果が大きく得られ、それらに時間を使った。 まず、交付申請書の平成25年度計画の1つであるweakly coupledの系に対する臨界爆発定理を得ることが早い段階ででき、成果出版に至った。また、低次元では概大域存在が一般論で保証されている非線形冪において、ある特殊な非線形構造が入れば、時間大域存在に変わる条件が存在する。空間2~3次元では零条件と呼ばれ、波の伝播方向に沿って未知関数の偏導関数が消えているような構造をもつものである。空間2次元では冪が3次元より一つ高いこともあり、更に正値条件と呼ばれる消散構造を生むようなものも存在する。しかし、空間4次元で2次では、未知関数自身の2乗を含む2次の項を想定するため、低次元とは異なる非線形構造を解明することが望まれている。高次元波動方程式の基本解に含まれる微分損失により、通常は解の最大値評価を得ることができず、空間低次元の解析手法を応用することが不可能である。しかし、解の積分表示の段階でその微分損失を取り除いたものを考えることにより、一様空間で解を構成できる方程式の例を導することに成功した。結果は、未知関数自身の2乗と同じ概大域存在になるものと、それとは異なり時間大域存在になる2種類の方程式を提示することができた。これは高次元での時間大域存在のための判定条件の導出を補助するものであり、先駆的な仕事として価値が高く、今後も研究の拡大が望まれるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」に記述した通り、当初の研究計画と順序は異なるが、今後の本研究を遂行するに当たり非常に重要な定理を得ることができた。特に現在執筆中の研究成果2点は、本研究計画中に予想できなかった解析であり、当該分野の研究者達から予想すら出されていなかった現象を捉えたものである。これらの結果が研究分野に与えた影響は非常に大きい。現に、今年度は10件の招待講演を受けて各地のセミナーやシンポジウムで、本研究の成果を講演し、それに関する討論を多数行った。研究の順序変更があるものの、研究目的の項目を消化している上、最終的には計画全体の進行を速めるものと言える。以上を考慮すると、今年度の研究成果は単年度のものとしては、当初の計画以上に進展していると判定できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた研究成果を、当初の研究計画に沿って更に拡張する。それは単独方程式に関しては初期境界値問題の解析を行うことであり、系に関してはsemi-weakly coupledの解析を進めることである。 双方とも既に着手済であるが、研究を進めるにあたり、外国人研究者との共同研究の必要性が生じている。それは今年度に報告者の所属機関へ招聘した2人の研究者達である。1人は系への拡張におけるルベーグ評価に詳しいイタリアのピサ大学教授であるVladimir Georgiev氏であり、もう1人は非ユークリッド空間上での波動方程式に詳しい中国の麗水大学講師であるLai Ning-An氏である。Georgiev氏とは本研究目的の系に関する研究で、Lai氏には初期境界値問題へ拡張でそれぞれ協力を仰ぐことを予定している。特にGeorgiev氏は以前に報告者と共著論文を出版したように、系の弱解に詳しい。また、Lai氏の研究は解の具体的な表現に頼らない手法を多用しており、本研究における非常に強力な解析手法の開発が期待される。 次年度ではISAAC 2013という国際研究集会がポーランドで開催されるが、上記2人と報告者も参加予定である。従って、その前後、Georgiev氏の所属機関であるイタリアのピサ大学に短期滞在し、共同研究を進める予定である。そこで、上記の目標が終わるとは思えないので、継続して次年度も招聘研究を行う予定である。Lai氏の研究対象である幾何学的方程式と本研究対象との関連を把握することも重要な研究項目の1つになっている。これは、今年度得られた新しい結果を非ユークリッド空間で翻訳した場合、何か新しい理由付けが得られるのではないかという予想に立っているからである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の次年度に関する国際研究集会参加を含めて、共同研究遂行のためのヨーロッパ渡航を2回予定しており、Lai氏の再招聘も計画している。また、今回得られた結果は年2回の日本数学会ではすでに発表しているが、国内各地でのセミナーや研究集会ではまだ3回しか行っていない。解析手法の応用や進展へのアドバイスは、非線形波動方程式の専門家はもちろん、それら以外の偏微分方程式の専門家にも受けることが望ましい。以上を考慮すると、8回の国内旅費を計上する予定である。また初期境界値問題に対応するため、その方面の専門書も少々購入する予定である。また可能であれば数値実験を行うため、性能の良い小型パソコンも購入を希望している。全体として、当初の計画より旅費に使用する額が多くなる予定である。
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Research Products
(14 results)