2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540183
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Research Institution | Future University-Hakodate |
Principal Investigator |
高村 博之 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (40241781)
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Keywords | 非線形波動方程式 / 初期値問題 / 古典解 / ライフスパン / 高次元空間 / 微分損失 / 時間減衰 |
Research Abstract |
前年度に得られた結果を学術論文にまとめた際に、本来の目的である空間4次元で2次の非線形波動方程式に対する初期値問題の時間大域存在と概時間大域存在への分類例に対する証明は完全に書き終えたが、本質的でない部分で新たな問題が発生した。それは何がその分類の基準になるかを明らかにするために、一般次元で分数ベキに拡張した方程式を考察したところで出現した。対応する積分方程式の解を逐次近似法で構成する際に1次に近いベキでは、方程式の線形部分を1回代入した段階で時間に関する可積分性がなく、時間局所解しか作れない。この存在時間が非線形の解の存在時間を上回れば問題ない。その証明は技術的に複雑で、解のアプリオリ評価が複数必要になる。この状況は、ベキの高低によって関数空間の重みが異なることに起因している。類似の先攻研究では、その複雑さと本質的でない部分の解析であることから、その部分を省略しているものがほとんどで参考にならず、この部分の解決に今年度は時間を大幅に要した。 しかしながら、得られた結果は、時間大域解が得られる仕組みを明確に示しており、高次元空間における非線形波動方程式の解析としては初めての現象を掴むことに成功した。それは、上記2例の解析によって、解の最大存在時間には、高次元空間のみで発生する基本解に含まれる微分損失が本質的に働いていることである。微分方程式に対応する積分方程式の非線形項が持つ微分損失は解の最大存在時間に影響を与えないが、線形項が持つ微分損失は決定的な影響を与える。それは、概大域存在の例は非線形項の微分損失を取り去ったものであり、大域存在の例は線形項のそれを取り去ったものであることからわかる。線形項の微分損失がなくなると時間減衰が強くなり、その結果、解の関数空間の減衰も強くなり臨界ベキが下がる。これが時間大域存在が4次元の2次の爆発項がありながら得られる理由である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高次元空間における非線形波動方程式の古典解の最大存在時間に関して、精密な解析が得られ、その要因まで解明できたが、本質的ではない部分の完成に時間を取られた。そのため、論文2編の作成が遅れ、年度を越して投稿完了となった。これが今年度に出版論文データが存在しなくなった原因である。また本研究の目的の1つである初期境界値問題の解析に全く進めなかったことをも考慮して、このような達成度に対する自己評価を与えた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、本研究のもう1つの目的である系の解析を行っており、共同研究により各成分の伝播スピードが異なる場合の臨界爆発定理の証明の方針が立てられた。それは2つ成分の伝播スピードの大小関係のうち片方は、昨年度出版した論文にある同じスピードの場合と同じ逐次代入枠を使うことができるが、もう1つがそれができず停滞していたものである。未解明の場合に対して、maximal functionのルベーグ評価という基礎段階から見直して、新しい逐次代入枠を作成することによって解決できる可能性が浮上した。今後はまずここに集中したい。 本研究計画にある初期境界値問題の解析は、どうもかなりの労力が必要になることがわかり、そもそも計画を詰め込み過ぎたようである。これに関してはこの方面の専門家である中国の共同研究者達(復旦大学のZhou Yi氏、中北大学のWei Han氏、麗水学院のLai Ning-An氏)と議論して、解決の糸口を掴むように予定している。その上で計画の変更の必要性を考察する。
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