2013 Fiscal Year Research-status Report
退化型及び特異型ケーラー・シーゲル系の適切性に関する新展開
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24540186
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉山 由恵 九州大学, 大学院・数理学研究院, 教授 (60308210)
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Keywords | Keller-Segel方程式系 / 時間局所解の適切性 / 時間大域解 / 非線形拡散 / 特異放物型 / 退化放物型 / 定常解 |
Research Abstract |
研究成果: Keller-Segel方程式系は個体密度と化学物質の濃度という2つの未知関数をもつ連立方程式系であり,強い非線形性のために統一解放の適応が困難な方程式系である.Keller-Segel方程式系は多くのパラメーターを有し,その取り方によって半線形型,退化型,特異型が現れるといった豊富な構造を内在している.特に退化型の場合,主要項の係数に未知関数が含まれるため一様楕円性が保証されない困難さを生ずる.同方程式系自身は,放物-放物型および放物-楕円型に分類されるが,ともに重要な研究対象であり,適切性を論じる際,それぞれの特性に応じた解析が求められる.今年度は,両型の解法で生じる固有の困難さの差異を明らかにしつつ,退化型及び特異型の双方の方程式系に対して,Hoelder連続な関数空間における弱解の一意性を証明し,2論文を投稿した. 重要性:偏微分方程式の研究において解の存在,一意性,安定性といった”適切性”の解明は,非線形偏微分方程式に共通する極めて重要な問題意識である.我々の研究はKeller-Segel方程式系に対して,この基本的な問題に真正面から取り組んだものである.可微分性を課さないHoelder連続な関数空間に属する弱解の一意性定理の確立は,重要な未解決問題として残されてきた.解のHoelder性は既知であるため,我々の研究は全ての空間次元に対して,また(適当な初期条件をもつ)全ての弱解に対して,同問題に完全解答を与えたものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では, (1)空間高次元における解の有限伝播性; (2)KS方程式系固有の解の界面の特徴づけ; (3)Aronson-Benilan評価式; (4)解の一意性:弱解が一意的である関数空間の確立. 以上を主たる研究目的としている. 2013年度には, 半線形型KS方程式系に対して成果を挙げることに成功し, 2012年10月九州関数方程式セミナーや2013年1月九州における偏微分方程式研究集会(国際研究集会),更に2013年10月南大阪応用数学セミナ-成果発表を行っている. まだ同研究に関する成果は, Journal of Differential Equationsに掲載されている. また2013年度には, 半線形型のみならず,退化型,特異型KS方程式系を放物-放物型および放物-楕円型ともに扱い,Hoelder連続な関数空間における弱解の一意性を証明し,2論文を投稿した.同研究成果は2014年春季日本数学会で発表済みである. 更に,Bonn大学のVelazquez氏・東京大学の筒井容平氏と,PDE-ODE型のKS方程式系の解の適切性について共同研究を行った.得られた研究成果は,Journal of Mathematical Analysis and Applications に掲載されている. また2014年春季日本数学会で発表済みである.
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Strategy for Future Research Activity |
現在, 科研費申請課題について,ソウル国立大学のKi-ahm Lee教授と共同研究を行っている. Skypeを利用した定期的な研究打ち合わせに加え,2014年8月には同大学を訪問し,同氏との研究推進をはかる予定である. また,九州大学の学生・教員が参加するセミナーで科研費申請課題の研究テーマについて議論の機会を定期定期に設けている.今後,同セミナー参加メンバーらと共同研究推進をはかっていく予定である.
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