2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540189
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
岩崎 千里 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (30028261)
|
Keywords | 国際研究者交流 / 放物型方程式 / 基本解 / 固有値展開 / Fokker-Planck方程式 / nilmanifold / 冪零リー群 / 変形ベッセル函数 |
Research Abstract |
放物型方程式の基本解の構成を研究の主目的とする。擬微分作用素の表象計算を応用し、種々の作用素の基本解の構成について考察してその表示を得るとともに、その表示を応用することによって、固有値の展開やスペクトルゼータ函数の特異点の解析を行った。これらの結果を総合して2013年日本数学会秋季総合分科会において特別講演において概要を発表した。 考察はまず、退化した放物型方程式であるFokker-Planck 方程式を研究対象として、この基本解を擬微分作用素として構成をして、これを使って解の漸近的挙動や、固有函数展開を得た。これらは国際研究集会で発表するとともに、単著論文として2014年に出版された。 さらに、古谷教授(東京理科大学)とBauer教授(ゲッチンゲン)と共同研究の成果としては、球面上のベクトル場の球面の次元による特徴付けがある。3次元のときは既に知られていたが、それ以上の次元の場合には不明であった。この成果は2013年の3名の共著論文として出版された。 最近の成果としては、Grushin型と呼ばれる退化した楕円型方程式の基本解を変形ベッセル函数を有効に使う事により、具体的に書き表すことに成功した。さらにこの手法をKohn-Laplacian と呼ばれる複素函数論と密接な関係がある退化した楕円型作用素に応用して、その基本解の具体的表示を得た。これらの研究に関しては長い歴史があり、級数展開の方法は知られていたが、ここで得られた基本解の表示はその和を求めたことに対応する。これらの研究に対しての大きな進展である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
nilmanifold に自然に導入される退化した楕円型作用素に関する考察を、step が「2」の一般のリー群の場合に広げて、熱方程式の基本解を擬微分作用素として表示することに成功した。この結果を使ってスペクトルゼータ函数の極が唯一であること、及びその位置、留数の値を求めることができた。これらは、同じ空間上の楕円型作用素に対してはスペクトルゼータ函数の極が無限に出現することと大きな違いがあり、退化した楕円型方程式をnilmanifold上で考察することは有意義なことだと示す事ができた。これは予想以上の成果であり、これらの結果を2編の論文として纏め、2012年,2013年度に発表した。「2」以上のより高いstepを持つリー群上に自然に定義される退化した楕円型方程式に考察を広げることは、興味深い問題ではあるが、目下の所は有効なアプローチ手段は見つかっていない。 Grushin型作用素の基本解に関しては、変形ベッセル函数を有効に使う事により具体的に書き表すことに成功した。さらにこの手法をKohn-Laplacian と呼ばれる広く研究されている偏微分作用素に応用して、その基本解を表示を得た。これはKohn-Laplacian の今後の研究の進展に重要となる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.Fokker-Planck 方程式に関しては、ポテンシャルをより一般の形にして、熱方程式の基本解を擬微分作用素として構成する。 2.nilmanifold に自然に導入される退化した楕円型作用素に関する考察を行ったが、ultra-hyperbolic 作用素の基本解まで研究対象を広げてその関連を古谷教授,Bauer教授と共に研究する。 3.Kohn-Laplacian に対し、得られた基本解の表示を使って助変数に関する解析接続を考察する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年3月にポツダム(ドイツ)で開催される国際研究集会に参加する計画であったが、申請者の都合が悪くなり、取り止めた. 2014年7月に精華大学(台湾)で開催予定の研究集会に出席し、8月にベルゲン大学(ノルウェー)を共同研究の為に訪問する予定がある。さらにドイツの共同研究者を日本に招いて、共同研究を進める予定である。
|
Research Products
(8 results)