2012 Fiscal Year Research-status Report
経路積分-時間分割近似法による経路空間上の解析の展開
Project/Area Number |
24540193
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
熊ノ郷 直人 工学院大学, 基礎・教養教育部門, 教授 (40296778)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 経路積分 / 関数方程式 / 関数解析学 / 数理物理 / 擬微分作用素 / フーリエ積分作用素 / 振動積分 / 確率論 |
Research Abstract |
これまで私は擬微分作用素で開発された方法を、シュレディンガー方程式に対する経路積分の時間分割近似法に適用して経路積分の理論を構成してきたが、擬微分作用素はシュレディンガー方程式に限らず様々な偏微分方程式に適用できる理論である。本研究では、これまでとは逆に時間分割近似法を他の擬微分作用素に適用して新しい形の経路積分へと展開すること、また同時に、これまでの理論整備と成果発表を進め、時間分割近似法を多方面から見直し、理論の展開に生かすことが目的であった。 1.本年度は、まず今後の相空間経路積分としての理論展開や偏微分方程式への応用まで想定して、時間分割近似法を適用する擬微分作用素を慎重に選定した。次に、その擬微分作用素に対して時間分割近似法を定数の次元乗で評価する方法を開発し、さらに時間分割近似法を次元に依存しない定数で評価する方法を開発した。次年度はこれらの方法を用いて時間分割近似法の収束を証明する。 2.区分的定数経路による相空間経路積分の理論や区分的陪特性経路による相空間経路積分の計算例や証明の概説を数理解析研究所講究録1797(下記)やRIMS Kokyuroku B39(下記)で発表した。 3.経路空間上の解析としての相空間経路積分の理論について、9月19日に日本数学会秋季総合分科会(下記)、10月24日に京都大学数理解析研究所の研究集会「超局所解析と漸近解析の最近の進展」、1月9日にAMS Joint Mathematics Meetings(下記)、2月2日に大阪府立大学の南大阪応用数学セミナーで口頭発表した。 4.8月2,3日東京大学で研究集会「Microlocal Analysis, Differential Equations and Related Topics」を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、時間分割近似法を適用する擬微分作用素の選定の際、今後の相空間経路積分としての理論展開や偏微分方程式への応用について、8月に海外での調査や研究連絡を行う予定であった。しかし、私の所属部門の引越問題が起こり、8月の海外出張の計画が立てられなくなった。これを補うため、8月に何人かの研究者を招いて東大で研究集会を開催したが、調査や研究連絡が当初の計画ほど十分には進まなかった。それでも9月から、時間分割近似法に適用する擬微分作用素をともかく設定し、その擬微分作用素に対する時間分割近似法を評価する方法を開発し始めた。しかし、その過程で今後の理論展開や応用の点で納得のいかない点が見つかった。そのため、3月の海外での成果発表をあきらめ、もう一度最初の擬微分作用素の選定からやり直した。 その結果、時間分割近似法を別の擬微分作用素に適用した方が、今後の相空間経路積分としての理論展開や偏微分方程式への応用に対して良いことがわかり、さらに、その擬微分作用素に対して時間分割近似法を定数の次元乗で評価する方法、さらに次元に依存しない定数で評価する方法も発見した。成果発表の観点から言えば残念であったが、研究の進行は何とか予定に辿りつき、今後の理論展開や応用の観点から言えば、やり直して良かったと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、私の所属部門の引越問題が起こり、8月に海外での調査や研究連絡ができなくなり、その遅れを取り戻すため、3月の海外での成果発表をあきらめた。特に調査や研究連絡ができないとアイデアも浮かばなくなることを思い知った。 次年度以降は、研究集会の一部の日程あるいは一日だけでも積極的に参加し、今年度十分には行えなかった調査や研究連絡、成果発表の機会を取り戻す予定である。また、私の所属部門の事情で海外に行けなくなった場合は、海外から研究者を招聘したり、研究集会を開催したりして、調査や研究連絡の機会を補うつもりである。様々な研究者の意見を聞くことで時間分割近似法を多方面から見直し、理論の展開や応用に生かす予定である。数学的内容としては、今年度開発した方法を用いて、次年度は、相空間経路積分の時間分割近似法が広義一様収束するような一般的な汎関数のクラスを定義し、次々年度は、積分や極限との順序交換定理、平行移動や直交変換、汎関数微分など、その相空間経路積分で可能となる演算とその条件を数学的に明確化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費はPC、プリンタトナー、ソフト、HDなど計算機消耗品、数学や物理、金融工学関係の図書の購入、論文別刷等に用いる。 旅費と謝金は、国際会議や研究会での調査、研究連絡や成果発表に用いる。特に謝金は、私の所属部門の事情で海外出張に行けなくなった場合、研究者を招聘したり研究集会を開催したりして調査や研究連絡の機会を補うために用いる。擬微分作用素や偏微分方程式の観点から杉本充先生、英国のM. Ruzhansky先生、ドイツのB.W. Schulze先生、インドのA.S. Vasudeva Murthy先生、M. Vanninathan先生などと、経路積分の観点から藤原大輔先生、一瀬孝先生、飛田武幸先生、ドイツのS. Albeverio先生、米国のG.W. Johnson先生、T. Gill先生、英国のA. Truman先生、ポルトガルのJ.-C. Zambrini先生、A.B. Cruzeiro先生、J. Rezende先生、韓国のB.S. Kim先生、D.H. Cho先生などと研究連絡を取る予定である。 その他は、会議参加費、別刷などの郵送費に用いる。
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