2013 Fiscal Year Research-status Report
経路積分-時間分割近似法による経路空間上の解析の展開
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24540193
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
熊ノ郷 直人 工学院大学, 基礎・教養教育部門, 教授 (40296778)
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Keywords | 経路積分 / 関数方程式 / 関数解析学 / 数理物理 / 擬微分作用素 / フーリエ積分作用素 / 振動積分 / 確率解析 |
Research Abstract |
これまでの研究では、擬微分作用素で開発された方法をシュレディンガー方程式に対する経路積分の時間分割近似法に適用して、経路積分の理論を構成してきたが、擬微分作用素は元々、様々な偏微分方程式に適用できる理論である。本研究では、これまでとは逆に時間分割近似法を、他の偏微分方程式に対する擬微分作用素に適用して、新しい形の経路積分へと展開すること、また同時に、これまでの理論整備と成果発表を進め、時間分割近似法を多方面から見直し、理論の展開に生かすことが目的であった。特に今年度は、昨年度開発した方法を高階放物型方程式に対する擬微分作用素に適用し、時間分割近似法が広義一様収束する汎関数のクラスを定義することが目的であった。 1.時間分割近似法を高階放物型方程式に対する擬微分作用素に適用し、高階放物型方程式に対し一般的な汎関数を被積分汎関数としてもつ経路積分の存在を証明した。厳密に言えば、高階放物型方程式に対応する経路積分の時間分割近似法が、位置経路の終点と運動量経路の始点に関して広義一様収束する汎関数のクラスを定義した。 2.区分的定数経路による相空間経路積分の理論や区分的陪特性経路による相空間経路積分の計算例の概説を数理解析研究所講究録1861(下記)で解説した。 3.シュレディンガー方程式に対する経路積分の理論について10月12日に東京大学の調和解析駒場セミナーで、シュレディンガー方程式に対する相空間経路積分の理論について12月11日に京都大学数理解析研究所の研究集会「スペクトル・散乱理論とその周辺」(下記)で口頭発表した。また高階放物型方程式に対する相空間経路積分の存在について3月25日にドイツのポツダム大学の研究集会「Geometric and Singular Analysis」(下記)で口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度(平成24年度)所属部門の引越があり、また擬微分作用素を選定し時間分割近似法を擬微分作用素に適用して計算していく過程で、今後の理論展開や応用の点から納得行かない点が見つかった。そのため思い切って、予定していた海外での成果発表をあきらめ、時間分割近似法を適用する擬微分作用素の選定からやり直した。その甲斐あって、数学的観点から言えば、今年度(平成25年度)は計算が順調に進み、予定通り、相空間経路積分の時間分割近似法の収束まで証明できている。しかし成果発表の観点から言えば、昨年度(平成24年度)の海外発表分が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
数学的観点から言えば、高階放物型方程式に対応する相空間経路積分が存在する、つまり時間分割近似法が収束する一般的な汎関数のクラスを定義できた。今後は、この汎関数のクラスに含まれる基本的な汎関数の例と、この汎関数のクラスの性質を調べ、相空間経路積分と時間に関する積分との順序交換定理、相空間経路積分と極限との順序交換定理など、この相空間経路積分における積分に類似した性質を証明する予定である。 成果発表の観点から言えば、次年度(平成26年度)も大学の仕事で海外に行ける機会が少なくなるため、10月7日~10月10日に京都大学数理解析研究所で共同研究「Introductory Workshop on Path Integrals and Pseudo-Differential Operators」を研究代表者として開催し、海外と国内の経路積分の研究者を集め、経路積分の研究成果を発信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度(平成24年度)所属部門の引越や、今後の理論展開や応用などの観点から時間分割近似法を適用する擬微分作用素の選定をもう一度やり直したことで、海外で成果発表できなかった。この成果発表部分が今年度(平成25年度)も取り戻せていないことによる。 物品費はPC、プリンタトナーなど計算機消耗品、図書の購入、論文別刷等に用いる。旅費と謝金は研究会での調査、研究連絡や成果発表に用いる。特に謝金は、10月7日~10日に京都大学数理解析研究所で共同研究(上記)を研究代表者として開催し、海外と国内の研究者を集め、経路積分の研究成果を発信する際に用いる。経路積分については藤原大輔、一瀬孝、飛田武幸、一ノ瀬弥、廣島文生、S. Albeverio、G.W. Johnson、T.Gill、L.Nielsen、A. Truman、S. Mazzucchi、J.-C.Zambrini、A.B. Cruzeiro、J. Rezende、B.S.Kim、D.H.Choなどと、擬微分作用素についてはM. Ruzhansky、A.S. Vasudeva Murthyなどと連絡を取る予定である。その他は会議参加費、別刷などの郵送費に用いる。
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