2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540196
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
藤家 雪朗 立命館大学, 理工学部, 教授 (00238536)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 フランス / 国際研究者交流 イタリア |
Research Abstract |
当該年度において、以下の3つの研究を並行して行った。 1. ホモクリニック軌道が生成するレゾナンスの虚部の下からの評価を、双曲型不動点が等方的な場合と非等方的な場合に分けて研究した。双曲型不動点が非等方的であるか、またはその不動点に付随する安定多様体と不安定多様体が横断的に交わる場合はレゾナンスの虚部は準古典パラメータ h のオーダーで、それ以外の場合は、 h/log h のオーダーであることを示した。(J.-F.Bony, T.Ramond, M.Zerzeriとの共同研究)2. シュタルク効果をもつシュレディンガー作用素のスペクトルシフト関数が、非捕捉条件のもとに準古典パラメータに関して完全な漸近展開をもつことを示した。この研究において重要なのは、時間に依存しない方法を初めて用いたことである。この方法は、従来難しいとされてきた連立のシュレディンガー方程式のスペクトルシフト関数の解析にも用いることができる。(M.Dimassiとの共同研究)3. 一次元連立のシュレディンガー方程式のエネルギー交差レベルでのレゾナンスの量子化条件を求め、特に虚部の漸近挙動を調べた。連立2階であるために、通常の複素WKB法が使えないとことに難しさがある。レゾナンスの虚部はhの5/3のオーダーであると予想している。この研究は現在進行中である。(A.Martinez, T.Watanabe との共同研究) 一方で、以下の2つの研究集会を開催した。1. Himeji Conference on Partial Differential Equations 2013/2/22,23 2. Lectures on Semi-Classical Analysis 2012/10/26,27,28
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」に記した3つの研究それぞれについて述べる。 (1)のホモクリニック軌道が生成するレゾナンスについてであるが、当初目的としていたレゾナンスの虚部の下からの評価については十分な結果を得ることができた。のみならず、最近では、自然な付加条件の下では、レゾナンスの量子化条件を求めることができ、それによってレゾナンスの詳しい漸近分布がわかることに気がついた。これは長年にわたって当科学研究費の研究課題で目標としてきた問題であり、もう少し時間がかかると考えていた。想定した以上の成果である。(2)のシュタルク効果をもつシュレディンガー作用素のスペクトルシフト関数であるが、これも完全な形で解決を見た。成果は現在学術雑誌に投稿中である。 (3)の一次元連立のシュレディンガー方程式のエネルギー交差レベルでのレゾナンスについては、一部形式的な議論を用いたものの、量子化条件の予想がたっている。後はこれを数学的に厳密に正当化する仕事が残っているが、これも当初の予定からすれば、十分な進展を見たと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記「研究実績の概要」に記した3つの研究それぞれについて述べる。 (1)については、有限個のホモクリニック軌道上で安定多様体と不安定多様体が横断的に交わる場合、不動点が等方的で安定多様体と不安定多様体の交わりが横断的でない場合に、それぞれレゾナンスの漸近分布を明らかにし、格子構造をもつことを示すことを当面の目標とする。7月にフランスのサマースクールで連続講義をし、この成果を丁寧に解説する予定である。また同時に学術雑誌に投稿する。100ページを超える論文になる。 (2)については、学術雑誌への投稿は終わっており、学会、研究集会などでの口頭発表に力を注ぐ。また一方で、連立のシュレディンガー方程式の場合、特に固有値の交差が起こる場合に同様の結果が得られるかどうかの研究を開始する。 (3)の研究は、共同研究者のA.Martinez教授(ボローニャ大学)と渡部拓也准教授(立命館大学)との研究連絡により続行する。おもな研究連絡の方法は、Martinez教授の立命館大学への招聘および渡部准教授と私のボローニャ大学への出張による直接の討論である。今年度中に上記の予想を厳密に証明して、成果の発表、特に学術雑誌への投稿をしたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度研究費は全額執行予定であったが、旅費の計算方法の規定変更のため、端数が生じた。この端数も含めて今年度は、研究成果の発表、共同研究の遂行、研究集会の開催に研究費を使用する予定である。具体的には、7月(費用は先方負担)、9月にそれぞれフランスのBerderとMarsielleで開催される研究集会に赴き、講義による成果の発表や他の講演者、参加者との討論を行う。3月にはフランスBordeauxおよびイタリアBolognaで共同研究者との研究連絡を行い、上記研究を推進する。2月には国際研究集会"Himeji Conference on Partial Differential Equations"を姫路にて開催し、偏微分方程式およびその周辺の分野の研究者たちと交流を深める。
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