2012 Fiscal Year Research-status Report
4階放物型偏微分方程式として表される曲面の発展方程式の研究
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24540200
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
高坂 良史 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00360967)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 曲面の発展方程式 / 表面拡散方程式 / Willmore流方程式 / 4階放物型偏微分方程式 / 平均曲率一定曲面 |
Research Abstract |
表面拡散方程式によって動きが記述される曲面について、軸対称な場合に関して定常曲面の線形安定性に関する研究を行った。具体的には、境界付きの曲面が軸対象という設定のもとで表面拡散方程式に対する定常曲面の線形安定性の判定基準の導出を行った。曲面が平行な平面の間にある場合に関してはVogel等の研究結果があるため、外部領域はより一般的な形状を想定し、さらに外部領域の濡れエネルギーを考慮した問題に関して解析を行った。対象が境界付きの曲面であるため、解析に際して境界条件が必要となるが、境界条件としては外部領域の濡れエネルギーを考慮したエネルギーを最小にするという観点から自然に導かれる角度条件と平均曲率の1次偏導関数に関する条件を課した。この問題の定常曲面は、適切な角度条件をもつ軸対称な平均曲率一定曲面となり、その候補として具体的にはカテノイド、円柱、アンデュロイドが考えられるが、平成24年度は円柱の場合に関して線形安定性の解析を行った。その結果、対応する線形化方程式の固有値問題の固有値の符号変化を解析することで、円柱の線形安定性の判定条件を得ることができた。他の場合に関しては、剱持の表現公式を用いて定常曲面を記述し、それをもとに線形化方程式を得ることができたが、係数が複雑な変数係数となり、現段階では有用な結果を得ることができなかった。この解析に関しては、今後の検討課題である。 また、Willmore流方程式または表面拡散方程式による動曲面の挙動の解析を行うため、2008年にGrzhibovskis-HeintzやEsedoglu-Ruuth-Tsaiによって提唱されたこれらの曲面の発展方程式の近似スキームについて、論文を検証し、その数学的正当性について検討を行った。このトピックに関しては、次年度以降、さらに研究を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は軸対称な場合に関して表面拡散方程式の定常曲面の線形安定性について研究を行った。定常曲面としてはカテノイド、円柱、アンデュロイドが考えられ、当初はそれぞれに関して安定性の判定条件を導出する予定であったが、対応する線形化方程式が円柱以外の場合は係数が複雑な変数係数の方程式となり、有用な解析結果が得られなかった。さらに変数係数4階常微分方程式の固有値問題の解析方法の検討不足で、思うように解析が進まなかった。以上の理由から、自己評価として研究の進行状況は「やや遅れている」との評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
Willmore流方程式または表面拡散方程式による動曲面の挙動の解析を行うため、これらの方程式に関する近似スキームの研究を行う。平均曲率流に関しては、Bence-Merriman-OsherによってBMOアルゴリズムと呼ばれる近似スキームが提唱され、その数学的正当性に関する結果が数多く得られている。このBMOアルゴリズムの考え方を発展させ、2008年にGrzhibovskis-HeintzがWillmore流方程式の近似スキームを提唱し、また、2008年にEsedoglu-Ruuth-TsaiがGrzhibovskis-Heintzの近似スキームを利用して表面拡散方程式の近似スキームが得られることを提唱した。しかしながら、Grzhibovskis-HeintzやEsedoglu-Ruuth-Tsaiの提唱した近似スキームの数学的正当性は、現段階では得られていない。よって、これらの近似スキームの数学的正当性の証明を試みる。そのために、平均曲率流の近似スキームであるBMOアルゴリズムについてその応用や拡張を研究している石井克幸氏(神戸大学)を招聘し、近似スキームの数学的正当性を証明するための方法に関して情報収集を行い、その情報をもとに研究を進めていく。 一方で、軸対象の場合に関して、表面拡散方程式の定常曲面の安定性と分岐解析の研究を平成24年度に引き続き行う。軸対称な定常曲面が円柱以外の平均曲率一定曲面の場合、平成24年度は有用な結果が得られなかったが、本年度は小磯-Palmerによる軸対称な非等方的平均曲率一定曲面の解析で用いられているガウス写像を用いた表記法をもとに解析を試みる予定である。また、小磯深幸氏(九州大学)を訪問し、平均曲率一定曲面の解析方法に関してさらなる情報収集を行い、その情報をもとに研究を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費に関しては、まず、平均曲率流の近似スキームであるBMOアルゴリズムについて情報提供を受けるためにセミナーを開催し、そのセミナーの講師として石井克幸氏(神戸大学)を招聘する予定であるが、その招聘費用として研究費を使用する。また、6月にフィラデルフィアで開催されるSIAMの国際研究集会「Mathematical Aspects of Materials Science」において曲面の発展方程式をトピックとしたセッションを開く予定であるが、それに参加するための旅費として研究費を使用する。さらに、10月に室蘭工大において非線形偏微分方程式に関する小研究集会を開催する予定であるが、その研究会の講演者の招聘費用として研究費を使用する。 設備備品費に関しては、偏微分方程式、微分幾何学、数値解析に関して知識を広く吸収するため、これらのトピックに関する書籍の購入費用として研究費を使用する。
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Research Products
(1 results)