2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540204
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
WILLOX Ralph 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (20361610)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 可積分系 / 超離散可積分系 / セルオートマトン / ソリトン現象 |
Research Abstract |
本研究の目標は、超離散可積分系の研究に使われている表現論や組み合わせ論、またはトロピカル幾何学を逆散乱法の観点から統一的に扱うこと、及び (max,+) 代数に関する最新の研究成果を取り入れることにより、超離散可積分系を、連続系や離散系の数理に頼らずに考察することである。特に、超離散的逆散乱法における散乱データとrigged configurationという手法で得られるデータとの関係を解明すること、超離散可積分系に付随する線形方程式系のスペクトル問題における波動関数やスペクトルの特徴づけを行い、ダルブー変換のスペクトル曲線等への作用を解明すること、または高種数トロピカル曲線の自己同型群の位数に上限を与える定理が存在するかを調べ、超離散QRT写像等とそれらの拡張写像の保存量に定められるトロピカル曲線の分類を行うことを目的とする。本年度は、このプログラムに関して以下の具体的な研究成果を得た。 1. 超離散sine-Gordon方程式というセルオートマトンには、ソリトンの分裂と融合のような現象が存在することは約15年前から知られているが、その方程式の連続版や離散版にはこのような現象がない為、既存の数学的道具ではセルオートマトンの解が得られないことが数年前に明らかになった。そこで、今年、特殊な変数変換を導入することにより、超離散sine-Gordon方程式のソリトン解を、別の補助的な力学系の解で表現し、単純な組み合わせ論的な過程で記述することに成功した。 2. 超離散KdV方程式のソリトンとその方程式に付随する線形問題に対して定義できるスペクトルとの関係を、ある重ね合わせのような原理を用いて完全に解明することができた。 3.1+1次元の離散ソリトン系を構成するための系統的な手法を発見し、その手法を用いていくつかの新しい離散可積分系を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の科学研究費事業交付申請書を作成したときに予知できなかった大きな展開が2つあった為、今年度に得た研究成果と当時の研究実施計画との間に多少ずれが生じたが、研究は現在おおむね順調に進行している。 一つの展開は、パリのエコール・ポリテクニークを訪問したとき、超離散sine-Gordon方程式に関する新しい解法を発見したことである。超離散sine-Gordon方程式の解が離散系や連続系とかなり異なっている現象を示していることはよく知られ、その現象は長年、多くの研究者によって研究されてきたことにも関わらず、その方程式におけるソリトン現象を記述する解の性質や構成法は全く不明であった。そこで、平成24年度に、新しく発見した手法により、超離散sine-Gordon方程式のソリトン解を完全に記述することに成功した。この新しい手法は離散の方程式と関係せず、超離散系の性質だけに基づくものであり、本研究計画で目指す基本目標の主要な実例である。さらに、一般には超離散可積分系の研究において新しい道を開く結果でもあると思われる。 もう一つの展開は、超離散KdV方程式に付随する線形問題のスペクトルの定義に多少問題があることが明らかになったことである。超離散KdV方程式を実数上で考察した結果、連続系とのアナロジーの上、散乱問題の連続スペクトルに当てはまる解と同じ速度で発展するソリトンとの区別が困難であることを認識し、研究計画の最初のテーマに関する研究を実行する前にこの問題を解決する必要があった。散乱データに含まれる連続スペクトルに当てはまる部分をある種の重ね合わせの原理を用いて定義することができ、研究は現在順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、まず、超離散KdV方程式の逆散乱問題に関する研究を続ける予定である。特に、rigged configurationに現れる作用-角変数と発展の保存量との関係を考察する予定である。そして、今年度から、超離散系におけるダルブー変換やスペクトル曲線等に関しては、既に始めた( max, +)代数におけるスペクトル問題についての研究の周期的境界条件の場合への拡張も考察する予定である。さらに、最近発見した新しい1+1次元離散可積分系の構成法についても研究を行い、特に、その手法によって構成できる離散系のQRT写像への簡約、またはそれらの離散パンルヴェ方程式と関係する非自励系への拡張及び超離散化を考察する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度、情報収集や成果発表に不可欠である国内外の定例の研究集会に参加し、特に6月にノルウェーで開催される研究集会「Nonlinear Mathematical Physics: Twenty Years of JNMP」にて、超離散sine-Gordon方程式に関する研究成果を発表する予定である。さらに、本研究では、数値計算と数式処理も必要となり、現存の設備の老朽化に伴い、適宜なコンピュータと研究データ保護のために必要な関連消耗品を購入する予定であり、そのための設備費・消耗品経費を計上している。
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Research Products
(2 results)