2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540204
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
WILLOX Ralph 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (20361610)
|
Keywords | 可積分系 / 超離散可積分系 / セルオートマトン / ソリトン現象 |
Research Abstract |
本研究の目標は、超離散可積分系の研究に使われている表現論や組み合わせ論、またはトロピカル幾何学を逆散乱法の観点から統一的に扱うこと、及び (max,+) 代数に関する最新の研究成果を取り入れることにより、超離散可積分系を、連続系や離散系の数理に頼らずに考察することである。特に、超離散的逆散乱法における散乱データとrigged configurationという手法で得られるデータとの関係を解明すること、超離散可積分系に付随する線形方程式系のスペクトル問題における波動関数やスペクトルの特徴づけを行い、ダルブ ー変換のスペクトル曲線等への作用を解明すること、又は超離散QRT写像等とそれらの保存量が定めるトロピカル曲線の分類を行うことを目的とする。本年度は、このプログラムに関して以下の具体的な研究成果を得た。 1. 超離散sine-Gordon方程式には、ソリトンの分裂と融合のような現象が存在することは約15年前から知られているが、その現象の初めての数学的記述は昨年度の最も重要な研究成果であった。本年度、 超離散sine-Gordon方程式を有理数上で考察し、その系におけるソリトンの非弾性的な相互作用が、実際、離散sine-Gordon方程式の正定値分散波の干渉から生じることを示した。さらに、ある種の組合せ論的な方法により、超離散sine-Gordon方程式の整数上のCauchy問題を解くことにも成功した。 2. 超離散KdV方程式の線形問題に対する散乱データを、箱玉系の場合、rigged configurationという組合せ論的な手法から得られるソリトンに関するデータと結びつけることができた。 3. 広田・三輪方程式のダルブー変換を用い、広田・三輪方程式からいくつかの新しい2次元の離散ソリトン系とそれらに付随するLax pairを系統的に構成することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に行った研究はおおむね計画通りに進行している。まず、昨年度の実施状況報告書に、平成25年度の推進方策として記載されている最も重要なテーマであった、箱玉系に関するrigged configurationに現れる作用-角変数と超離散KdV方程式に付随する線形問題に対する散乱データとの関連づけという問題を完全に解くことができた。この研究成果を発表する論文は現在作成中である。なお、昨年度に始めた超離散sine-Gordon方程式におけるソリトン相互作用の研究も急速に進んでいる。特に、超離散sine-Gordon方程式のソリトンが、実際、離散のsine-Gordon方程式における正定値の分散波の超離散極限から生じるものであるという発見は、超離散可積分系に対する常識をリセットするような驚くべき研究成果であると思われる。さらに、今年、超離散sine-Gordon方程式の整数上のCauchy問題を解くことに成功したお陰で、整数上の問題だけではなく、これから有理数や実数上のCauchy問題の解法を考察することも可能となる。最後に、QRT写像の非自励的な拡張の代数幾何学的な性質も今年度から考察し始め、既に、それらの性質と特異点閉じ込め法との関係、またはその拡張のやり方と写像の代数的エントロピーとの関係については、いくつかの予想をたてることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には、まず、昨年度に得た結果を拡張し、超離散sine-Gordon方程式の有理数上のCauchy問題を考察する予定である。さらに、QRT写像の拡張などの、平面上の非自励的なbirational mapの分類に関する研究を本格的に始める予定である。そこで、まず、初期値空間が構成可能な写像に注目し、そういった写像の代数幾何学的な性質と代数的エントロピーを系統的に関連づける手法を打ち立てる予定である。さらに、初期値空間の構成を許さない、特に、線形化可能な写像の特徴化も研究し、両方のクラスの写像の超離散極限における問題を考察する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に購入する予定であったコンピュータはモデル変更の理由で購入できなかったため、次年度使用額が生じたが、今年度に数値計算と数式処理用の適宜なコンピュータを購入する予定である。 今年度、情報収集や成果発表に不可欠である国内外の定例の研究集会に参加し、特に6月にインドで開催される研究集会「SIDE XI-2014」にて、広田・三輪方程式の新しい簡約法に関する研究成果を発表する予定である。 さらに、本研究では、数値計算と数式処理も必要となり、現存の設備の老朽化に伴い、適宜なコンピュータと研究データ保護のために必要 な関連消耗品を購入する予定であり、そのための設備費・消耗品経費を計上している。
|
Research Products
(7 results)