2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白石 潤一 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (20272536)
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Keywords | Laumon space / Ding-Iohara代数 / Macdonald多項式 / Ruijsenaars作用素 |
Research Abstract |
Ding-Iohara代数のFock表現に付随した3点頂点作用素を適宜合成して得られる演算子の行列要素を調べ、それがある条件の下でMacdonald差分作用素数の(無限級数の空間の上での)固有関数となることを示した。同様の設定と条件の下で、共形場の理論のprimary場の差分アナログが定められた。共形場の理論の縮退したprimary場は、それらを零とおくことで行列要素の満たす偏微分方程式系を導くのであったが、その現象の差分類似についてある程度の理解が(現状では表現に依存するような不完全な形ではあるが)得られた。 Laumon空間のde RhamコホモロジーのEuler characteristicを(同変K理論において)調べることにより、上述のMacdonald差分作用素数の無限級数による固有関数についての幾何学的な理解が得られた(A. Braverman, M. Finkelbergとの共同研究)。量子コホモロジーと量子戸田理論の研究においてはLaumon空間はA型の対称性を持つ擬写像空間のsmallな特異点解消を与えるような空間として研究されてきたのであるが、この結果はそのMacdonald系への拡張を与えている。 野海氏と私との共同研究で得られた、A型のMacdonald対称多項式のもつ座標・スペクトル間の双対性は、Ding-Iohara代数のFock表現論から見ると、代数のSL(2,Z)対称性からの帰結とみなすことができる。Laumon空間の幾何学の観点からこの双対性を理解することは今後の課題である。 Ding-Iohara代数のFock表現に関するトレースから、Ruijsenaars作用素とある補助的な作用素の線形結合の固有関数を構成することができた(現段階では2変数の場合のみ)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、共形場の理論の差分類似について、Ding-Iohara代数の表現論からのアプローチを取り、重要な特殊ケースを与えるような表現空間をある程度系統的に探し出すことを試みた。主に、A型のMacdonald対称多項式に関する組合わせ論を用いてその構造が記述されることを指導原理として、そのような探索を進めた。より具体的には、3つのFock空間の間の準同型写像(3点頂点作用素)を用いれば(必要に応じてそれらの合成を行うものとする)作用素の真空状態に関する行列要素に関して、Alday-Gaiotto-Tachikawa予想(AGT予想)が示すようにNekrasov分配関数を用いた表示式が得られる(一般のn階テンソル表現の場合は予想として残されている)。このことから、共形場の理論のないしW代数の表現論的の差分類似を取り扱うための道筋がこれまでに比べてかなりはっきりしたものと考えられる。 さらに、このような構成で得られる演算子のトレースを取ることにより、自然にMacdonald多項式のある種の楕円アナログを定めることができるが、そのような関数がRuijsenaars作用素とそれに伴うある補助的作用素数の和に関する固有関数となる。このような楕円的差分方程式は今まで全く求めることができなかったものであり、その解(規格化を除いて一意的に定まると予想される)が楕円超幾何級数の形に具体的に書けているような状況を作り出すことができたことは、今後の研究の糸口になるのではないかと思われる。 Laumon空間の幾何学を用いた研究が一定のレベルへと進んだことは、A型の対称性を持つMacdonald多項式に関してはっきりとした幾何学的意味付けを与えるものと考えられる。一般の型のMacdonald多項式に関しては偏屈層を用いた構成と予想が形作られた状況で、今後更に研究を積み重ねる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
共形場の理論の差分類似といっても、背景の対称性にはA型以外にも様々なものがありうる。そのようなより一般の状況も視野に入れて研究する必要があるだろう。現在、BC型の対称性を持つAskey-Wilson多項式及びKornwinder多項式について、幾つかのことがわかってきている。例えば、(1)Askey-Wilson多項式に関するある種の4重和の多重級数表示、(2)一行の分割に対するKornwinder多項式のtableaux和表示と変形W代数の相関関数の関係、(3)Ding-IoharaのFock空間とKornwinder多項式の間の準同型写像(核関数)の研究等。Laumon空間を基礎とした幾何学的構成の一般の型への拡張は、偏屈層の交差コホモロジー理論を用いて記述できると予想される。しかし、残念ながら現在は固有関数の(組合わせ的な表示のような)具体的なに関してまだなにもわかっていない。今後は可能な限りより広いクラスの表現論(Ding-Iohara代数ないし変形W代数)と幾何学の双方の側面からアプローチして研究を進めていきたい。 さらに楕円的アナログの可能性をも考慮する必要がある。実際、ごく最近、Fock空間上に定められるMacdonald対称多項式の楕円変形について、(4)その固有値問題がBethe方程式によって解かれること、及び、(5)そのことのshuffle代数による理解が進み始めた。この方面は、共形場の理論の定める量子KdV方程式と関連して、運動の積分の族の構成法などこれまでに幾つかの結果がすでに得られている。Bethe方程式の理論の進展は、それらの問題に立ち戻ってさらに詳細なことを調べるための大きな切っ掛である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際会議2件(Elliptic Integrable Systems and Hypergeometric Functions, 15-19 Jul. 2013、及び、Representation Theory and applications to Combinatorics, Geometry and Quantum Physics, International Conference dedicated to the 60-th birthday of Boris Feigin, 13-19 Dec. 2013)への渡航費用が共に先方から支給されたため。 次年度、Higher School of Economics (Moscow) への海外渡航の回数と滞在期間を増やすことにより、B. Feigin, A. Braverman, M. Finkelbergとの共同研究をさらに進める予定である。
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[Presentation] On Askey-Wilson polynomials2013
Author(s)
Jun’ichi Shiraishi
Organizer
Representation Theory and applications to Combinatorics, Geometry and Quantum Physics, International Conference dedicated to the 60-th birthday of Boris Feigin
Place of Presentation
Higher School of Economics, Independent University of Moscow, Russia
Year and Date
20131213-20131219
Invited
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