2012 Fiscal Year Research-status Report
空間非一様な反応拡散方程式系がうみだす遷移層の解析
Project/Area Number |
24540207
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
中島 主恵 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (10318800)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 非線型反応拡散方程式系 / 特異摂動問題 / 遷移層 / スパイク / 安定性 / 特異現象 / 国際情報交換(アメリカ・中国・フランス) |
Research Abstract |
本年度は遺伝子頻度モデル u_t = ε^2 △u + g(x)u^2(1-u) に現れる定常遷移層の研究をおこなった.ここでεは正の微小係数,g(x)は符号を変える環境変数である.この方程式の非線形項のポテンシャルは,ある場所では単安定になるがそれ以外の場所では安定平衡点を持たないといった型のもので,場所によって方程式の構造がまったく異なり,解の挙動も空間非一様性に大きく影響されることが Brown-Hess(1990), Lou-Nagylaki(2002)などの結果から予想されている.この方程式にたいし申請者-Ni-Su(2010)がすでに遷移層をもつ安定定常解を構成している.この安定定常解を(NNS)と呼ぶとする.本年度はこの方程式を空間1次元の区間I上で解析をおこない,定常解が形成しうるパターンを決定し,定常解の安定性,一意性を示すことに成功した. 結果の概略は以下のようである.「(NNS)の定常解は線型安定である.また方程式のもつ環境変数g(x)のI上積分の値がが負ならば (NNS)は唯一のの非定数定常解である.一方,方程式のもつ環境変数g(x)のI上積分の値が正ならば(NNS)のほかに非定数定常解が少なくとももう1つ存在する.その非定数定常解は0のごく近傍に存在する.」
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の概要の欄において本方程式の安定定常解は申請者-Ni-Su(2010)により得られたことを述べたが,その安定定常解を(NNS)と呼ぶとする.(NNS)以外の定常解はいかなるものかという疑問に対し本研究では以下のような結果が得られた. 「結果1.遷移層をもつ定常解はすべて安定である.」結果1の証明の方針は以下のようである.各非定数定常解における線形化固有値問題を考える.ミニ・マックス原理とストゥルム・リュウビルの定理を組み合わせて用いる.これらの結果に錐上の写像度の理論を適用すると次の結果が得られる.「結果2.非定数定常解は(NNS)であるか常に0の近傍に値をとるかのどちらかに限られる.なお(NNS)と類似な形の定常解は1つしか存在し得ない.すなわちこのような形状の定常解は(NNS)のみである.」「結果3. 方程式のもつ環境変数g(x)のI上の積分値が負ならば (NNS)は唯一の非定数定常解である.」これらをまとめると以下のような結果が得られた「方程式のもつ環境変数g(x)のI上積分の値が負ならば (NNS)の非定数定常解が一意である.一方,方程式のもつ環境変数g(x)のI上の積分値が正ならば(NNS)のほかに非定数定常解が少なくとももう1つ存在する.その非定数定常解は0のごく近傍に存在する.」これらの結果により本方程式の定常解集合の構造が空間1次元の場合には完全に近い形で解明されたといってよく,研究は順調に進展しているといえる.これらの結果について現在論文執筆中である.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の空間1次元区間上の問題をを空間2次元以上の有界領域上で考える.一般に非線型反応拡散方程式の定常解について,1次元の場合には解の形状や安定性など詳しい結果がえられることもある.その1次元の結果を空間2次元以上の場合に拡張することは多くの研究者によって試みられているが,空間2次元以上の場合には1次元の場合にくらべ遷移層の形状が多様で複雑になるため遷移層のくわしい様子を解析することは非常に難しい.本研究では研究実績の概要の欄で述べた1次元の結果のうち,どのような結果が2次元以上でも成り立つのか調べ,また空間1次元上では得られない現象を発見することをめざして研究を進める.現在考えている方法を以下に述べる,環境変数g(x)にたいしg(x)=0をみたす曲線をGとし,Gに沿って局所座標系を導入し接合漸近展開の方法を用いる.すなわち曲線Gの近傍に近似解(内部解)を構成し,またGから離れた場所でも近似解(外部解)を構成する.さらにこの近似解をもとに数学的に厳密な意味での優解劣解を構成して,解がとりうる形状について解析を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度予定していた華東師範大学(上海・中国)での情報交換・研究発表が健康上の都合により実現できなかったため、かわりに次年度に招聘してもらう予定である.華東師範大学に出張するための旅費を次年度使用額より使用させていただく予定である.
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