2012 Fiscal Year Research-status Report
非線型シュレーディンガー作用素のスペクトル解析に基づく超格子構造の解析
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24540208
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小栗栖 修 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (80301191)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シュレーディンガー作用素 / スペクトル解析 / δポテンシャル / 負の固有値 / 離散グラフ / 離散ラプラシアン |
Research Abstract |
超格子構造とは、江崎玲於奈の提唱による異種半導体の薄膜を積層させて製造される人造の構造物で、量子効果を用いた半導体デバイスの一種である。特定のエネルギーを透過または遮断する特性を持つ電子デバイスであり、透過域には真の透過域と準透過域が生じることが知られているが、その生成の原因は不明で、その制御は難しい問題となっている。 本研究はこの超格子構造を数学的対象ととらえて、その特性を数学的に解析することにある。この問題は、数学的には一次元のシュレーディンガー方程式の逆散乱問題のひとつである。本年度の研究では次のような成果が得られた。 この透過域はもっとも単純なモデルでは一次元トンネル現象に対応し、完全透過するエネルギー順位は入射波と透過波の位相と強く関係することが知られている。これを超格子構造に応用するために、入射波と反射波の確率振幅の比と完全透過なエネルギー順位との関連を調べ、ある種の特異性(不連続性)を見出せた。 また近年の計算から、超格子構造のスペクトル構造はそれを離散化したグラフ理論的モデルがより解析しやすいモデルになると分っている。本年度はこのグラフ理論的モデルのさらなる一般化を行ない、そのモデルのスペクトル構造を解析した。 さらには、このグラフ理論的モデルにおいて、共鳴順位が数学的に厳密に計算できることが愛媛大学の野村祐司氏、昭和大学の樋口雄介氏との協力の下で示すことができた。共鳴順位の正確な導出は通常のモデルでは困難なことがほとんどではあるが、このモデルは非常に扱いやすいことがわかってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に述べた通り複数の結果を得ており、またこれらの結果の一部は2ヶ所の研究会で公表もして出席者からも好評を得ている。 特に愛媛大学の野村祐司氏、昭和大学の樋口雄介氏との研究であるグラフ理論的モデルにおける共鳴順位の研究は、通常はとても解析的に計算できるとは考えられない問題がこのモデルにおいては可能であることが見てとれ、単に一つのモデル計算にとどまらず、新しい解析手法を提供する土台となる可能性があると考えている。 完全透過なエネルギー順位と入射波と透過波との関連の問題については、このモデルは自己共役拡張の理論を用いてモデルを定式化し、その上で入射波と透過波を定義して議論を行う。自己共役拡張は2次元ユニタリ作用素の集合から線型作用素への写像として定義され、この写像の連続性を問題としたが、その詳細な解析は知られていなかったものである。研究の結果、作用素としての連続性が成り立つ一方で、確率振幅の比は不連続となることがわかった。これは予想外の結果であり、今後の広い研究テーマとなる。 超格子構造を離散化したグラフ理論的モデルでは、従来の研究では接続条件がδポテンシャルに対応するポテンシャル関数のみを考えてきたが、それ以外のタイプを構成することに成功した。これも報告されたことのない結果である。この場合の離散固有値の問題も部分的にではあるが解決している。 しかし一方ではこれらの研究成果を論文としてまとめて投稿する準備が非常に遅れている。上記の結果以外にも過年度の成果で論文執筆中のままのものあり、これらの執筆作業を効率的にすすめる必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
愛媛大学の野村祐司氏、昭和大学の樋口雄介氏との研究であるグラフ理論的モデルにおける共鳴順位の研究を集中的にすすめる。他のモデルでは考えられないほどシンプルに共鳴順位を決定できる構造を持つことがわかり、その性質を調べることが当初の目標であったが、今では次のような大きな問題に拡張して取り組んでいる。すなわち、よく知られた共鳴順位の3つの定義があり、しかしそれらが数学的に同値であることは非常に限られた状況でしか証明されておらず、またその証明は容易なものではない。しかし、我々のモデルにおいては、グラフ理論的モデルの構造によってこの同値性を明瞭に提示できる可能性がたかく、今後のさまざまなモデルでの研究の土台となりうるものである。今後は、共鳴現象を議論するための土台となる積分核のリーマン面への拡張を確定し、共鳴順位の複数の定義の関連を議論する。 研究実績の概要に述べたRT効果の問題は技術的には本年度に解決しているが、特定の場合のみしか計算されていない部分があるなど詳細な部分での詰めが残っているので、それを整理して、論文を執筆し投稿・公表する。 また一般化を行ったグラフ理論的モデルについても、同様に計算し残している部分があるので、その計算を順次すすめていき、ただちに論文の執筆にかかる予定である。 その他、スペクトルモーメントの問題がこれらのモデルにおいても設定できるので、そちらとの関連もしらべていきたい。 また過年度の研究成果を論文としてまとめる作業を集中的にすすめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
例年通り、主な出費は研究会への出席(発表ならびに情報蒐集)のための旅費ならびに研究打合せのための旅費になる。毎年参加している研究会は、作用素論研究会(9月)、スペクトル・散乱シンポジウム(RIMS、12月)、応用数学合同研究会(龍谷大学、12月)、スペクトル・散乱セミナー(1月)、また可能な限り春秋年2回の日本数学会の学会にも参加する。この他、不定期の金曜日に京都大学で開かれている「作用素論セミナー」にも出席する予定である。 また関連する話題の研究者を訪問し研究打ち合せを行なう。特に、共鳴順位の研究について日常的に議論している愛媛大学の野村祐司准教授を何度か訪問する予定である。また、本年度に岡山大学の廣川真男教授を訪問して研究上のアドバイスをいただくつもりだったのが御都合がつかず叶わなかったので、次年度は廣川教授を訪問する予定である。研究実績等に述べたRT効果関係の問題は、廣川教授の研究が先行研究である。 また、本年度、情報系からは天使大学の川口雄一准教授と小山高等専門学校の佐藤巌教授に出張を依頼し有益な情報を得たので、次年度も出張を依頼する予定である。 物品関連では、研究に必要な書籍(主に洋書)を購入する他、モデル計算を行うために必要なコンピュータ(WindowsパソコンまたはApple MacBook程度のハードウェア)とソフトウェアの購入(Mathematicaを予定)を予定している。その他、研究データの管理のための機器としてスキャナー(ScanSnapを予定)などの小型機器を購入する予定である。
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Research Products
(2 results)