2013 Fiscal Year Research-status Report
非線型シュレーディンガー作用素のスペクトル解析に基づく超格子構造の解析
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24540208
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小栗栖 修 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (80301191)
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Keywords | シュレーディンガー作用素 / スペクトル解析 / 負の固有値 / 共鳴 / 離散グラフ / 離散ラプラシアン |
Research Abstract |
超格子構造とは江崎玲於奈の提唱による異種半導体の薄膜を積層させて製造される人造の構造物で、量子効果を用いた半導体デバイスの一種である。特定のエネルギーを透過または遮断する特性を持つ電子デバイスであり、透過域には真の透過域と準透過域が生じることが知られているが、その生成の原因は不明で、その制御は難しい問題となっている。 本研究はこの超格子構造を数学的対象ととらえて、その特性を数学的に解析することにある。この問題は、数学的には一次元のシュレーディンガー方程式の逆散乱問題のひとつである。近年の代表者と共同研究者による計算から、超格子構造のスペクトル構造はそれを離散化したグラフ理論的モデルがより解析しやすいモデルになると分っている。本年度はこのグラフ理論的モデルのさらなる一般化を行ない、そのモデルのスペクトル構造を解析した。 まず、このグラフ理論的モデルにおいて共鳴順位が数学的に厳密に計算できることが愛媛大学の野村祐司氏、昭和大学の樋口雄介氏との協力の下でみいだせた。共鳴順位の正確な導出は通常のモデルでは困難であり、解析的に求めることは不可能に近いが、このモデルは非常に扱いやすいことがわかってきた。 また、電子デバイスとしての透過域はもっとも単純なモデルでは一次元トンネル現象に対応していて、完全透過するエネルギー順位は入射波と透過波の位相と強く関係する(RT効果、完全透過する場合との位相差は円周率の整数倍になる)ことが知られている。このモデルの離散化した場合を調べることは自然な問題である。素朴には、離散化しても位相差は円周率の整数倍になると期待されるが、実はそうではないということを見い出した。さらには連続版では単純な一様ポテンシャル障壁の場合であってさえも共鳴順位を解析的に求めることはできないが、一様な2点ポテンシャルによる離散版では共鳴順位を解析的に求めることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に述べた通り、複数の結果を得ており、これらの結果について平成26年度秋の数理解析研究所でのある研究会の講演の依頼を受けており、公表の予定である。 昨年度、RT効果、すなわち完全透過なエネルギー順位と入射波と透過波との関連について、入射波と反射波の確率振幅の比と完全透過なエネルギー順位の間にある種の特異性を見出したが、そのさらに詳しい解析として、離散版の解析を行い、従来のモデルは不可能だった共鳴順位の解析的な導出に成功した。さらに連続版で成立しているRT効果がそのままでは成立しないことも見付けた。 愛媛大学の野村祐司氏、昭和大学の樋口雄介氏との研究であるグラフ理論的モデルにおける共鳴順位の研究は、通常はとても解析的に計算できるとは考えられない問題がこのモデルにおいては可能であることが見てとれ、単に一つのモデル計算にとどまらず、新しい解析手法を提供する土台となる可能性があると考えている。 さらには、デザイン理論から導入される正則グラフの最適性という概念を、ある意味で弱めることでスペクトル解析の手法を用いて扱うアイデアを得た。ラプラシアンのスペクトルの各種平均から定まる量を最小化するグラフを最適なグラフとするのだが、次数の小さいPaleyグラフが弱い意味で最適であることが示せた。これは今後発展が見込める課題である。 しかし一方ではこれらの研究成果を論文としてまとめて投稿する準備が非常に遅れている。特に、特に愛媛大学の野村祐司氏、昭和大学の樋口雄介氏との研究は進展が大きくて、論文の構成自体を変更する必要がある。上記の結果以外にも過年度の成果で論文執筆中のままのものあり、これらの執筆作業を効率的にすすめる必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の方策を継承し、愛媛大学の野村祐司氏、昭和大学の樋口雄介氏との研究である、グラフ理論的モデルにおける共鳴順位の研究を集中的にすすめる。他のモデルでは考えられないほどシンプルに共鳴順位を決定できる構造を持つことがわかり、その性質を調べることが当初の目標であったが、今では次のような大きな問題に拡張して取り組んでいる。すなわち、よく知られた共鳴順位の3つの定義があり、しかしそれらが数学的に同値であることは非常に限られた状況でしか証明されておらず、またその証明は容易なものではない。しかし、我々のモデルにおいては、グラフ理論的モデルの構造によってこの同値性を明瞭に提示できる可能性がたかく、今後のさまざまなモデルでの研究の土台となりうるものである。今後は、共鳴現象を議論するための土台となる積分核のリーマン面への拡張を確定し、複数の共鳴順位の定義の関連を議論する。ただし、離散固有値の構造の決定と共鳴状態の解析の2つの方向性が見えてきたので、結果の公開方法(論文の構成など)を早急に吟味し、公表を急ぐ。研究実績の概要に述べたRT効果の問題は技術的には本年度に解決しているが、詳細な詰めが残っているので、それを整理して論文を執筆し、公表する。また一般化を行ったグラフ理論的モデルについても、これはほぼ完成しているので、ただちに論文の執筆にかかりたい。その他、スペクトルモーメントの問題がこれらのモデルにでも設定できるので、そちらとの関連もしらべていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3月開催の国立情報研究所での研究集会 Interdisciplinary Workshop on Quantum Device 2014 に参加する予定だったのが、スケジュールの都合がつかなかったために取り止めたので、その旅費が残額となった。 本年度6月月中に野村祐司准教授を訪問し研究打合せを行い、その旅費にあてる予定である。
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Research Products
(1 results)