Research Abstract |
p調和写像流の正則性条件について研究した. 1. 像の小さい弱解がヘルダー連続であるためのある条件, 正則性条件, を証明した(preprint). この正則性条件は, p調和写像流方程式を不変に保つスケール変換に関するスケールエネルギーがある閾値より小さい, という条件である. したがって, このスケールエネルギーは幾何学的に自然なものである. 実際, p=2の古典的な結果を含んでいる. また, 同じ条件のもとさらに空間一階導関数もヘルダー連続である. 2. 1の正則性条件を用いて, p=mの場合に, m調和写像流の像の小さい弱解が空間一階導関数とともにヘルダー連続であることを証明した. 3. 高次元空間内の定平均曲率曲面の熱流の像の小さい弱解が空間一階導関数とともにヘルダー連続であることを証明した. 結果, p=mの場合には目的とする, p調和写像流に対する正則性評価を証明できた. 4. 月一回土曜日, 熊本大学応用解析セミナーに関連研究者を招き, 研究打ち合わせおよび情報交換を行った. 当セミナーでの講演は報告集にまとめられている. 平成23年度分を印刷し関係研究機関に配布した. また, 京都数理解析研究所, 九州大学, 東京理科大学, 早稲田大学, 大阪大学において関連研究者と研究打ち合わせを行った. 5. イタリア・ナポリ大学数学科のNicola Fusco教授主催のPisa国際研究集会に招聘され, 研究打ち合わせを行った. 6. p調和作用素の正則性評価に関連して, Juha Kinnunen教授との研究打ち合わせを行った(Aalto UniversityへのJuha教授による招聘). 彼のお弟子さんである同大学数学科Tuomo Kussi准教授を日本へ招聘, p調和作用素を含む二重非線形作用素の正則性評価について共同研究を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
p調和写像流の正則性条件の改良とその応用の研究について, p=mの場合m調和写像流に対してはおおむね目的とする結果を得ている. 一般のp調和写像流に対しては, 解が小さいという条件のもと, 幾何学的に自然なスケールエネルギーによって正則性条件を証明した一方で, このスケールエネルギーが小さいという条件を解の小ささによって満たせるか, についてはほとんど未解決のままである. 来年度への課題となる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はまた, p調和写像流のスケールエネルギーのスケール変数に関する単調性を計算した. 以前得られたものと比べてかなりよい形の評価となっている. この評価にもとづいて, 一般のp調和写像流の弱解に対して, 像の大きさに制限なしで, 解の正則性条件を与えられると期待している. また, 大きな初期値に対して, 弱解の時間大域存在とその正則性について研究する. さらに, このスケールエネルギーの単調性とHarnack型不等式を使って, 一般のp調和写像の像の小さい解の正則性を研究する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究経過, 結果を踏まえて, 以下の手順で研究を進める. 1.(正則性が成り立つための, 解の最良の像の小ささ) スケールエネルギーの正則性条件が成り立つための, 弱解の像の小ささについて幾何学的に自然な十分条件はなにかを研究する. 2. 時間発展p調和作用素に対するHarnack不等式を応用することを考える. また, スケールエネルギーの単調性評価の応用を考える. 時間発展p調和作用素は, 非同次作用素であり, 解の大きさに依存するスケール変数と時空局所領域のサイズのスケール変数を上手くアレンジして, 評価する必要がある. 現在使用中のパソコン動作不安定のため, 急遽ノートパソコンを新たに購入したい(150千円, 機器選定中). 関連する文献, 書籍を購入する(100千円). 入力作業の補助として学生を雇用し(謝金), 論文作成のスピードアップを図る. また. 平成24年度と同様, 関連する研究集会に参加, 必要な情報を収集して, 定期的に代表者所属大学でセミナーを開いて, 連携研究者, 関連研究者と研究打ち合わせを行う. 京都大学数理解析研究所において年2回開かれる変分問題および非線形偏微分方程式関連の研究集会にて講演者, 参加者との研究打ち合わせを予定している. また, 東北大学, 早稲田大学, 大阪大学, 山口大学での関連研究者との研究打ち合わせ, 研究成果発表の予定である(550千円). 変分問題および非線形偏微分方程式の海外研究者, イタリア, ピサ高等研究所のM. Giaquinta氏, ナポリ大学のN. Fusco氏, フィンランドアールト大学のJ.Kinnunen氏, との研究打ち合わせのため外国出張を予定している(300千円)
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